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第129回 『馬力本願プロジェクト PARTⅢ』

2019.09.18
 新ひだか町で「馬力本願プロジェクト」の推進業務にあたる、地域おこし協力隊の活動を行っている糸井郁美さん。その糸井さんが「新ひだかうまキッズ探検隊」というプロジェクトと平行する形で取り組んだ活動が、地域の子供たちが主役となる馬にちなんだ祭りを企画する「さくらうま」だった。
 「一年を通しての活動が決まっているうまキッズとは違い、さくらうまは出入り自由な組織にしました。新ひだか町ではゴールデンウィーク期間中にしずない桜まつりが行われるのですが、まずはその会場で自分たちが企画してデザインや販売も自ら行う馬のキーホルダーと、馬の缶バッチ作成に取り組みました」(糸井さん)

 子供たちの主体性を尊重すべく、ほとんど意見は出さなかったという糸井さんであるが、なんと、制作したキーホルダーと缶バッチは完売。そこで得た収益をどうするかと、話し合いを持ったとき、子供たちから出た意見が、「人参スープ作り」だった。

 「どうやら『馬は人参が好きだから』という考えだったようです(笑)。それでも企画が決まってからは、町内の栄養士とホテルのシェフの協力の元、料理法を変えて数種類のスープを作り、子供たちと共に試食もしました。みんなで味を決めたスープは、10月に町内で行われる『新ひだか町総合ケアセンター健康まつり』での発売を予定しています」(糸井さん)

 また、7月に行われた「しずない夏まつり」の会場では、さくらうまの子供たちが企画を出した、『馬く遊ぼう!馬の遊び広場』というイベントを開催。「蹄鉄わなげ」の板に書かれていた馬のイラストは、さくらうまに参加する子供たちによるものであり、また、かんぽっくりに蹄鉄を付けた「うまぽっくり」では馬になりきるべく、馬の顔をデザインしたかぶり物も用意されていた。

 こうした「新ひだかうまキッズ探検隊」や「さくらうま」の活動内容に関しては、Facebook内の「北海道 新ひだか町 地域おこし協力隊」で確認することができる。先日も門別競馬場のバックヤードツアーに参加したという内容がアップされており、また8月19日からHBA北海道市場で開催されるサマーセールの見学も予定されている。

 「これまでにも学校の研修などで、せりが行われていない時に市場見学をさせてもらったことはあるようです。でも、うまキッズの子供たちは、実際に牧場や競馬場で馬を見てきたわけですし、改めてせりを見てもらうことで、また違った臨場感を感じてもらえるのではないかとも思っています」(糸井さん)

 まさに「うまキッズ」や「さくらうま」の活動を通して、更に馬産地である新ひだか町の魅力や特長を掴んでもらえそうな子供たちであるが、1つだけ残念なことがある。新ひだか町地域おこし協力隊として着任した糸井さんの任期は来年まで。それ以降の活動に関しては、現時点で何も決まっていないのが実情なのだ。

 「新ひだか町を通してもらえたからこそ、様々な形で協力していただけた方も多かったですし、町からは今後は協力隊ではなく、また違った形での雇用のお話もいただいております。しかし、それだとこれまで協力隊として行ってきたような活動ができなくなるだけに、悩んでいるというのが正直な気持ちです」(糸井さん)

 それでも糸井さんの心は決まっている。先日、新ひだか町と姉妹都市である、ケンタッキー州のレキシントン市へ訪問団の一員として出向いた糸井さんは、実際に自分の目で見てきた牧場や街の雰囲気が日高と似通っていたとも話す。

 「子供たちもここに連れてきてあげて、その感想を聞いてみたいとも思いました。まだ、「うまキッズ」や「さくらうま」の活動も残っていますし、より競馬や馬に親しんでもらえるようにしていきたいですね」(糸井さん)

 糸井さんは今後の活動について、これまでお世話になってきた様々な関係者にも相談をしているという。数名の関係者からは、「どんな形であろうとも協力はしていく」との話ももらったらしく、その言葉が本当に嬉しかったとも話してくれる。

 「どんな形であれ、今後も日高の子供たちが、馬に更に興味を持ってもらえるような活動は続けていくようにしたいですし、そしていつか、「うまキッズ」や「さくらうま」に参加した子供たちが、その後も競馬や馬に興味を持ち続けてくれたり、もしくは馬に関係する仕事をしてくれたら本当に嬉しいですね」(糸井さん)

 先日、糸井さんは仕事の合間に、知り合いの農家さんから借りた畑に人参の種を植えた。来年の夏、ここで取れた人参で子供たちとスープをぜひとも味わってみたいと思う。そしてその子供たちの中心には、糸井さんの姿があって欲しい。

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