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第130回 『予想ではなく、「応援する馬」』

2019.10.17
 今年のJRA北海道シリーズでも、取材の合間を縫って、ビギナーズセミナーの講師、そして札幌開催では「マスターズ・アイ」のお手伝いもさせていただいた。
 「ビギナー」と「マスター」で言葉の意味は正反対でも、競馬ファンに向けてのファンサービスであるのは間違いない。

 その「ビギナーズセミナー」だが、函館開催、札幌開催ともに例年以上の競馬初心者の方にお越しいただいた。これは競馬場内でイベントスタッフ、そして放送でも呼びかけていただけたことや、入り口に近い場所にセミナールームとなる場所を設けていただいたことで、より、初心者の方が入りやすい環境が出来上がっていたからではないかと思われる。

 特に8月18日に行われた札幌記念の入場者は、今年の北海道シリーズでは最多となる3万5,419人となった。この日は札幌記念が行われただけでなく、JRA年間プロモーションキャラクターを務める、俳優の松坂桃李さんが来場。松坂さんは札幌記念の表彰式でプレゼンターを務めた後には、スペシャルトークショーも行った。

 「松坂桃李効果」とでもいうのか、この日の札幌競馬場には競馬ファンに負けず劣らずといった感じで多くの女性の姿が見られていた。

 そのせいかビギナーズセミナー参加者の男女比率も女性の方が遙かに多く、しかも、各セミナーごとにほぼ満員という賑わいを見せた。

 普通、ビギナーズセミナーは10時ぐらいから混み始め、それが13時ぐらいまで続いていくのだが、この日は午後に入ってからも参加希望者が後を絶たなかった。

 これは、スペシャルトークショーの時間が、最終レース終了後となっていたことも関係しているのだろう。朝の開門ダッシュとともにステージ前の場所へと向かう、熱心な松坂桃李さんのファンもいたようだが、この日、競馬場に初めて来たはずの大多数のファンは、イベントの時間を考えても、午後を過ぎてから競馬場へと向かっていたに違いない。

 初めて競馬場に来て、とりあえず馬券でも買ってみようかと思った時に、競馬のイロハを教えてもらえる場所があるとなれば、とりあえず入ってみようと思うはず。それが午後に入ってからも増え続けた、セミナー参加希望者の数となって表れたのだろう。

 自分も、トークの掴みとして、「松坂桃李さんを見に来た人は挙手!」と言って反応を見てみたのだが(勿論、全員が手を上げる回もありました)、その後、馬券の買い方を教えていくと、ある女性の参加者から、「札幌記念では桃色の馬券(つまり枠連)を買いたいのですが...」と言われて、一瞬なんで?と思ったが、話を聞いてみると合点承知だった。その女性は、松坂桃李さんにちなんだ馬券を買おうと思った際に、たまたま話が枠連の説明となり、「1枠から8枠まで白、黒、赤と色が8色あるんですよ」と言ったあとに、「桃色=桃李」が思い浮かんだのであろう。

 「そのひらめき、いいじゃないですか!」と話すと、他の参加者も影響されたようで、あとで塗りつぶしたマークシートを見せてもらうと、誰もが8枠からの馬券を買っていた(ちなみに札幌記念の枠連は1-6でした)。

 レースの翌日、「松坂桃李馬券は成立しなかったかあ...」と思いながらスポーツ新聞を広げていると、松坂桃李さんのコメントが掲載されていた。

 そこには、「札幌記念の馬券は、昨年の日本ダービーで馬券を買って当てた思い入れのある、12番ワグネリアンの単勝で勝負しました」と書かれていたのだが、もし、事前にこの話を松坂桃李さんの参加者が聞いていたら、8枠からの枠連ではなく、ワグネリアンがらみの馬券を買っていたのだろうなあと思った。

 もし、トークショーを昼にやっていたのなら、札幌記念の予想の話は出ていたはずだ。

 結果として応援した馬の話は後出しになってしまったのだが、事前にそれが周知できていたとするのなら、あの日、セミナーに来てもらった参加者の皆さんも、「札幌記念は松坂さんと同じ馬を応援する」というまた違った喜びが提供でいたのではないだろうか。

 こうしたイベントに呼ばれるゲストの中には、予想をしない、あるいはしたくないと言う場合もあるのだろう。でもせめて「応援する馬」として1頭でも名前を挙げてもらう、もしくは、事前にその馬を競馬場の中で周知してもらえたらと思う。競馬ファンの中には、それをいぶかしがる人もいるだろう。だが、少なくともそのゲストが目当てで競馬場に来たファンには、その1頭から競馬を知っていく「入り口」を作ることにもなると思うのだが。

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