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第50回『タイトルは重要です』

2013.02.13
 年度代表馬等、各賞受賞馬、受賞者の選定と発表の季節がやってきた。
 今年も全国公営競馬専門紙協会推薦でNARグランプリ2012選考委員の末席に名を連ねさせていただいた。
 毎年のことではあるが、発表直後は嫌なものだ。ファンの方からはともかく、業界内からも様々なご意見を頂戴することが多いからだ。競馬場に現れるや否や、皆さんニコニコしながら近づいて、そしてご意見を仰るのである。尤もなご意見もあれば、規定上どうにもならないご意見もあるから、色々と説明することも多いが、やはり1番多いのは選定結果についてだ。

 今年でいうと2歳牝馬だろう。そもそも地方競馬の2歳牝馬にJpnⅠはおろか、JpnⅡすらないから、これまではいきおいJpnⅢのエーデルワイス賞一発勝負の色が強かった。しかし近年は、大晦日に行われる東京2歳優駿牝馬の比重が増している。昨年のエンジェルツイートのように、対抗候補がエーデルワイス賞2着、北海道2歳優駿3着のシーキングブレーヴなら'勝ち'を理由選定にすることも可能だが、今年のようにエーデルワイス賞1着のハニーパイと、東京2歳優駿牝馬1着のカイカヨソウの比較となると、なかなか難しい。

 選考は原則として'タイトル重視'だ。しかし、最初に挙がったのはカイカヨソウだった。東京2歳優駿の勝ちっぷりは確かに鮮やかだったし、ハニーパイとの直接対決もカイカヨソウが2戦2勝である。同調する委員も多かった。しかし、これでそのまま採決となっては会議としてマズいだろうと思い、「ハイ!」と元気良く手を上げてハニーパイを推した。まずタイトル、そして兵庫ジュニアグランプリ3着は長距離輸送と直前の軽い疝痛、東京2歳優駿牝馬惨敗は園田→北海道→大井への度重なる輸送もあった。すべて「王道を歩んだ結果」だと述べた。

 結果的に採決でハニーパイが選ばれたが、地方競馬全国交流もダートグレード競走に次ぐ選考対象ではあるが、全国交流とはいえ未格の重賞とJpnⅢが天秤に掛けられるのは、ダートグレード競走を含む路線整備にも問題があるのではないかと思う。また、格付け委員会でもない我々が、タイトルをひっくり返してしまうのも、あまり褒められるような話ではない。そういった意味でも無難な結果に落ち着いたといえる。困った困ったと言いつつも「これ以上2歳のダートグレードを増やしてもなぁ」と思うのが本音なので、暫くはこの状態が続きそうだ。

 かつてのNARグランプリは各地区の記者や有識者による投票結果をベースに選考していた。その方式の復活を望む声もあるし、数少ないタイトルホルダーが自動的に選ばれるなら、委員は要らないと言う声もある。毎年ある。
 しかし、JRA賞のような記者や有識者の投票ベースとなると、地方競馬の場合はどこも「地元のチャンピオン」がイチオシとなるだけで、まとめると、結局のところ結果は同じになる。

 会議は生き物で、その年その年の流れというか、空気がある。「選びたい!」と思う馬がいても、論理的に推せなければ、他の委員の賛同を得ることは不可能だ。なんだかんだ言いながら、やはりタイトルやタイトルに準じた成績は重要であるし、その方が簡潔で分かりやすい。

 そういった意味では、今年のフリオーソはラッキーだった。脚部不安もあり、JpnⅠの川崎記念3着、かしわ記念2着があるものの、2012年は4戦0勝だった。「対象年未勝利の馬を選んでも良いのだろうか?」という疑問は、少なからずどの委員にもあったとは思うが、ニホンピロアワーズのジャパンカップダート勝ちで、白山大賞典2着となったナムラダイキチの評価は上がったが、やはり自身の成績という観点ではJpnⅢ2着とJpnⅠ2着を比較すれば、結果は明白だった。

 記者、有識者の投票結果が実名で公開されているJRA賞では毎年、いわゆる「おもしろ投票」が現れるが、聞くところによるとその理由は「GⅠ一発勝負の風潮に対する抵抗」であったりする。
 投票したり、選考したり、その立場にある人それぞれ「いろんな葛藤を抱えてるんだなあ」などと、つい他人事のように呟いてしまう。

 受賞馬、受賞者の皆様、おめでとうございます。
 本年の更なる活躍に期待しております。
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