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架空名馬生産牧場 ギャラクティカ・ファーム

綱本将也 架空名馬生産牧場 ギャラクティカ・ファーム

第30回 架空:第44回 函館2歳S

馬名:ユータロー
毛色:栗毛
父:プリサイスエンド
母:カサノエンジェル
母の父:リンドシェーバー
クロス:Raise a Native M4×S5、Nearctic M4×M5
生涯成績:3戦3勝(現役)
主な成績:函館2歳S (GⅢ)

 日本競馬史上、競馬ブームを巻き起こしたのは、ハイセイコーとオグリキャップの2頭だけと言っていい。両馬はともに地方競馬出身であり、その出自が新たな競馬ファンを開拓し、熱狂させた。

 中央のエリートを、地方の叩き上げが倒す――。

 この構図こそ、いやこの『GIANT KILLING』なくして、再び日本に競馬ブームは訪れることはないのかもしれない。ディープインパクトが出現して、ブームの兆しをみせたものの、売り上げ減に歯止めがかからなかったのは、ディープインパクトがいかなる強さ、勝ち方を見せても、そこに『GIANT KILLING』感がなかったからだろう。
 またベールに隠された地方馬の『未知なる』部分が、競馬をブームたらしめたひとつの要因でもあった。中央と地方の間にあった厳然たる境界が、両者の能力判定を難しくさせ、幻想が生まれやすくなっていた。だが、中央と地方の交流が盛んになった現在、中央馬と地方馬の能力判定はかつてより容易になり、『未知』なる地方の強豪が出現しづらい状況になっている。これはプロ野球でセ・パ交流戦が始まり、オールスターや日本シリーズにかつての高揚感が失われたのと似ている。『未知』なる対戦だからこそ、さまざまな幻想、想像が可能であり、その対戦を見ることでしか決着をみない。だからこそ、その『未知』なる対戦に高揚し、注視する。その熱が広がりブームとなる。
 この『GIANT KILLING』と『未知』が、現在の日本競馬には失われているのだ。

 函館2歳Sでは、日本競馬界が待ち望んだ、『未知』なる馬の『GIANT KILLING』が起こった。地方・ホッカイドウ競馬所属のユータローが、初芝をものともせず無敗の3連勝で函館2歳Sを制覇したのだ。
 過去、地方競馬所属馬として函館2歳Sを勝ったのは、ハートオブクィーン(07年)、モエレジーニアス(05年)、エンゼルカロ(99年)の3頭がいるが、いずれもその前走で中央のオープン・ラベンダー賞に出走し勝っていた。しかし今年は開催が早まり、地方所属馬が函館2歳Sの前に、中央でその能力を見せる機会がなかったために、『未知』感がより大きかった。期せずして、かつての構図が出現したことになる。
 今年の日本競馬において、最も早く(4月25日)勝ち上がった2歳馬であるユータローの完成度は他を上回っていた。また一見すると、ダート血統にも見えるが、函館2歳Sを勝つに相応しい血統でもあった。
 函館競馬場で行われたこのレースの過去6回の優勝馬を並べてみよう。


11年ファインチョイス
母父タイキシャトル → Devil's Bag → Halo → Hail to Reason → Turn-to

10年マジカルポケット
母母父Habitat → Sir Gaylord → Turn-to

08年フィフスペトル
母母父Roberto → Hail to Reason → Turn-to

07年ハートオブクィーン
父ジョリーズヘイロー → Halo → Hail to Reason → Turn-to

06年ニシノチャーミー
母父ニシノエトランゼ → Stop the Music → Hail to Reason → Turn-to

05年モエレジーニアス
母母父Habitat → Sir Gaylord → Turn-to


 現在の日本競馬において隆盛を極めるサンデーサイレンス系の直父系を遡ると、サンデーサイレンス → Halo → Hail to Reason → Turn-to。同じTurn-to系であるが、6頭の函館2歳S優勝馬はすべて、サンデーサイレンスを経由しないTurn-toの血を持っていた。
 ユータローの母母父はHaloであり、エリートであるサンデーサイレンス系に『GIANT KILLING』できるだけの血統を持っていたのだ。

 競馬ブームを再び巻き起こすのは、ユータローなのかもしれない――。