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2010 ドバイ スーパーサーズデイ&ワールドカップデイ 現地取材レポート

2010 ドバイ スーパーサーズデイ&ワールドカップデイ 現地取材レポート

2010ドバイシーマクラシック有力馬紹介(コラム)

~ブエナビスタ待望の海外デビューは、ワールドランカー揃い踏みの豪華マイル・アンダ・ハーフ~


 昨年の桜花賞、オークスの牝馬春2冠を制し、凱旋門賞挑戦を高らかに宣言したブエナビスタ。しかし行きがけの駄賃の筈の札幌記念でよもやの2着に敗れて遠征は中止、その後も降着や超スローなど不運続きで結果を出せなかったが、有馬記念では世代最先着の2着で自信を回復し、京都記念で海外遠征の先達ジャガーメイルに気合を注入され心身ともに準備は整った。当初予定のクリストフ・スミヨン騎手はマイク・デ・コック調教師との騎乗契約によりゴールデンソードGolden Sword(GB)の鞍上を務めるため、オリビエ・ペリエ騎手に手綱が委ねられることになる。ワールドカップに回ったレッドディザイアが前走のペリエ騎手から本番でスミヨン騎手へ手替わりをするのと反対の動きだ。日本人騎手で世界へなどというロマンを語る時代ではないのだろう、日本産馬の実力を世界に示すのが遠征の第一義である。

 出走馬をみると、シーザスターズSea The Stars(IRE)のいない凱旋門賞、コンデュイット Conduit(IRE)の抜けたブリーダーズカップターフという趣きだが、現状で望みうるベストメンバーが揃ったとはいえそうだ。昨年のシーマクラシック上位馬の再戦ともなる。

 2009年IFHAワールドサラブレッドランキング・芝ロング部門(2101m~2700m)レイティング上位馬をおさらいすると、牡馬123以上、牝馬120以上は次の8頭。(牝馬のセックスアローワンスは3ポンド、すなわち牝馬120は牡馬123と同評価)

レイト 対象馬 評価レース 動向
131
Sea The Stars(IRE) 凱旋門賞(G1) 1着 愛で種牡馬
128
Fame And Glory(GB) 愛ダービー(G1) 1着 現役
125
コンデュイット(IRE) Kジョージ六世&QエリザベスS(G1) 1着 日本で種牡馬
125
Youmzain(IRE) 凱旋門賞(G1) 2着 ドバイシーマクラシック(G1)出走
125
Cavalryman(GB) 凱旋門賞(G1) 3着 ドバイシーマクラシック(G1)出走
123
Presious Passion(USA) BCターフ(G1) 2着 ドバイシーマクラシック(G1)出走
120(牝)
Dar Re Mi(GB) 凱旋門賞(G1) 5着 ドバイシーマクラシック(G1)出走
120(牝)
Sariska(GB) 愛オークス(G1) 1着 現役

 種牡馬入りした2頭を除く現役6頭中4頭がシーマクラシックに出走する。 他の出走馬のレイトはSpanish Moon(USA) 120、Golden Sword(GB) 119、Quijano(GER) 119、Jukebox Jury(IRE) 118、ブエナビスタ 117、Eastern Anthem(IRE) 117の順である。ちなみに、日本馬ではドリームジャーニー 122、オウケンブルースリ 121が上位。(ウオッカはマイル部門で120)

 現役最高レイトを持つフェイムアンドグローリー Fame And Glory(GB)は3月21日アイルランド芝平地競馬開幕日に、エイダン・オブライエン厩舎恒例春の遠足でカラ競馬場を訪れ、最終レース後に軽めのキャンターを披露した。昨年のワールドランキング I部門(1900m~2100m)でSea The Stars(IRE)の2位 リップヴァンウィンクル Rip Van Winkle(IRE)や今年の英ダービー前売り断然1番人気のセントニコラスアビー St Nicholas Abbey(IRE)など厩舎の看板馬打ち揃ってアウェイデイを楽しんだ。クールモアとドバイの確執という面もあろうが、何よりも種牡馬メイキングレースと認識していないクールモアがシーマクラシックに興味を示すことは今のところなさそうだ。

 今回スミヨンの乗るGolden Sword(GB)は昨年までFame And Glory(GB)の厩友で愛ダービー1, 2着した仲(5馬身差)、今季よりマイク・デ・コック厩舎に移り、メイダンで2戦して調子を整えた。オーナーはモハメド・ビン・ハリファ殿下、モハメド・ドバイ首長のいとこである、ところでモハメド首長の兄達の子にもモハメド殿下がいる、またモハメド首長の子で現皇太子はハムダン殿下、モハメド首長の兄と同名だ、いったいどうやって呼び分けているのかぜひ誰か取材して教えてほしい。話が脱線したが、クールモアの一流半馬がマイク・デ・コック厩舎にプライヴェート取引で移籍する流れが近年出来上がっているようだ。

 Golden Sword(GB)は昨年の英ダービーでは逃げてSea The Stars(IRE)の5着(2着Fame And Glory(GB)からは僅差)となっているが、ここには強力な逃げ馬プレシャスパッション Presious Passion(USA)がいるので好位からの競馬になりそうだ。スミヨンが前を追わないとエリザベス女王杯のようなことにならないかと余計な心配もする。

 というよりもPresious Passion(USA)はブリンカーを装着してスタートからビュンビュン飛ばすタイプだけに、初の国外遠征やいつもより長い直線、少し重めの芝などいくつもの課題を克服できるかがカギとなる。その父ロイヤルアンセムRoyal Anthem(USA)は3年連続の最優秀牝馬ヒシアマゾン(USA)を送るシアトリカルTheatrical(USA)の代表牡駒、ヨークインターナショナルS(G1)は圧巻だった、産駒の重賞勝馬は本馬のみ。Golden Sword(GB)の父ハイシャパラルHigh Chaparral(IRE)は英・愛ダービー馬で、ガリレオ Galileo(IRE)モンジューMontjeu(IRE)に続く愛クールモアスタッド供用Sadler's Wells(USA)後継第三の男、北半球では今一歩だが、昨年来オーストラリアで次々とG1馬を送り大ブレイクしている。

 過去5年の勝馬をみると、5頭とも前走アジア地域で出走して1着となっている。さかのぼると、ドバイ、ドバイ、香港、中山(ハーツクライ)、香港である (別表参照) 。今回該当するのは、ブエナビスタ、スーパーサーズデイの前哨戦シティオヴゴールドの勝馬キャンパノロジストCampanologist(USA)、そして予定していたデューティーフリーから急遽鉾先を変えてきたサウジアラビア調教馬ディームDeem(IRE) である。5歳牝馬Deem(IRE) は前走2月25日にメイダンの牝馬限定バランシーンG3(芝1800m)をペリエ騎手で僅差勝ち、昨年のシーマクラシック7着の雪辱を密かに狙っている。バランシーンG3勝ちをステップにするのは2年前の勝馬サンクラシークSun Classique(AUS) (父フジキセキ)と同じ。オーナーはサウジアラビア皇太子で、父ダラハニDalakhani(IRE) 、母の父サドラーズウェルズSadler's Wells(USA) の組み合わせはコンデュイット(IRE) と同じである。今回の鞍上は昨年の米エクリプス賞最優秀騎手に輝くジュリアン・ルパルー、こちらもフランス人(26歳)である。

 Campanologist(USA) はジャパンC馬シングスピールSingspiel(IRE) の妹の子で、エルコンドルパサー(USA) と同じくキングマンボKingmambo(USA) サドラーズウェルズSadler's Wells(USA)の配合になる。エルコンドルパサー(USA)がフランスで活躍して以来、この組み合わせは数多く試され、成果を上げてきた。たとえば英・愛2000ギニー勝馬ヘンリーザナヴィゲイターHenrythenavigator(USA) 、仏1000ギニー・オークス連覇のディヴァインプロポーションズDivine Proportions(USA) などである。こちらはイギリスの一流馬相手には一息の成績だが、3歳6月のキングエドワード7世SG2 (12f、アスコットダービーの異名をとる、残念ダービー的色合いのレース)でコンデュイット(IRE) を負かして逃げ切ったこともある、シーズントップのシーマクラシックなら一発あるか。ヨーロッパの一流馬は春の選抜高校野球における北海道勢のようなもの、過信は禁物である。

 3月24日現在の英3大ブックメーカーの前売りオッズをみると、1番人気を争うのはCavalryman, Spanish Moon, Youmzain の3頭、次いでブエナビスタDar Re Mi(GB)の牝馬が続き、ここまでがほぼ10倍以下(日本流にいうと)、ブエナビスタは3社それぞれ7倍、10倍、11倍となっている。あくまで英ブックメーカーの設定した数字で、たとえばデットーリ騎手の選んだ馬やマイケル・スタウト厩舎の管理馬などはオッズが低めとなるなど諸事情が反映される。

 Cavalrymanは今季初戦のアルマクトゥームチャレンジR3でレッドディザイアの7着、ゴドルフィンはこれでワールドカップを諦め芝に戻す。昨年までは仏の大御所アンドレ・ファーブル厩舎所属で、7月に実質的なフランスダービーとされるパリ大賞(2400m)を制し(仏ダービーは2005年より2100m)、凱旋門賞では19頭立ての19番枠の不利を克服して3着好走し仏3歳最強を印象付けた。父ホーリングHalling(USA) はヨークインターナショナルS G1とエクリプスSG1をダブルで連覇した英中距離の名馬、これまでG2ウイナーは数多く輩出したがG1馬はCavalryman が初めてである。

 昨年のシーマクラシックでハナ差2着のスパニッシュムーンSpanish Moon(USA) は、その後ゲート入り拒否が度重なったため5月から半年間英で出走停止処分となり、仏米香港と転戦を余儀なくされた。サンクルー大賞G1で初重賞勝ちを飾り、BCターフG1ではスムーズさを欠きながら4着にまとめ、前走香港ヴァーズG1 はダリアカナDaryakana(FR) に出し抜けを喰らって短頭差2着と堅実な成績を残している。父エルプラドEl Prado(IRE)Sadler's Wells(USA)産駒では珍しい愛2歳チャンピオン、米で種牡馬として成功し、後継馬メダーリアドーロMedaglia d'Oro(USA)は昨年の米年度代表馬 レイチェルアレクサンドラRachel Alexandra(USA)を送っている。

 昨年の覇者イースタンアンセムEastern Anthem(IRE)は続く英の2戦で大敗を喫し、母の故国ドイツに活躍の場を求めた。後方一気の脚質で勝つまでには至らなかったが、2400mのG13戦で3, 2, 2着と独ダービー馬やNo.1古馬に胸を借りて修行に励んだ。ここは半年ぶりの出走だが流れ次第では侮れまい。母は2歳時2戦2勝でゴドルフィンにトレードされ、英1000ギニー・オークスを連覇した名牝である。

 Youmzain(IRE) は英・愛ダービー馬Sinndar(IRE) の産駒。父は3歳時にモンジューMontjeu(IRE) を下して凱旋門賞をも制したが、息子は4~6歳の3年連続凱旋門賞2着と父にはまだ届かない、惜しかったのは4歳時のディラントーマスDylan Thomas(IRE) とのアタマ差、一昨年のザルカヴァZarkava(IRE) , 昨年のSea The Stars(IRE)はただ相手が悪かった。シーマクラシックにも3年連続参戦しており3, 5, 4着とシーズン初戦ながら毎度善戦している。今回は初めて香港を挟んでの臨戦となり、主戦のキエレン・ファロン騎手も順調な調整ぶりに自信を深めているようだ。毎度お騒がせのファロン騎手、先日英リングフィールド競馬場のレース後脱鞍所で、不利を受けたと怒る他馬のオーナーに殴打される事件が起きた。直後は「レディーのパンチのようなもの」とのコメントだったが、その後裁判も辞さない構えをみせている。気力充実のファロン騎手には要注意だ。ところでYoumzain(IRE) の祖母はファインモーション(IRE)ピルサドスキー(IRE) の半姉である。

 ちなみにZarkava(IRE)ウオッカより一足先にSea The Stars(IRE) の種を宿していることが確認された、ぜひJBIS-Searchの架空血統表機能で夢の結晶を吟味してください。なお他に、Zarkava(IRE) の母ザルカシャZarkasha(IRE)、G13勝ラッシュラッシズLush Lashes(GB) 、昨年のジャンロマネ賞G1勝馬Alpine Rose(FR) 、グランデラ(IRE) の母ボルディゲラBordighera(USA) 、愛芝開幕日に産駒が早くも勝ち上がり幸先良いスタートを切ったホーリーローマンエンペラーHoly Roman Emperor(IRE) の全妹センターオヴアテンションCentreofattention(AUS) 、'Kジョージ' G1勝馬アザムールAzamour(IRE) の母アスマラAsmara(USA) らからも続々吉報が届いている。母娘で若い男を取り合ってなどと野暮な話にならないのも競馬のいいところ。Zarkava(IRE) 受胎確認を受け、そのSea The Stars(IRE) との産駒が3歳時に凱旋門賞優勝するという賭けのオッズは101倍から51倍に一気に引き下げられた。なんだか歳をとるスピードが加速しそうな話だが、ウオッカも負けずにがんばってほしい。

 当部門牝馬最高レイト(タイ)を持つダーレミDar Re Mi(GB) は 昨夏愛プリティポリーS、ヨークシャーオークス (もう1頭の最高レイト馬英・愛オークス馬サリスカSariska(GB) との直接対決を制す) と牝馬G1を連覇して、ヴェルメイユ賞G1でも仏オークス馬スタセリタStacelita(FR) を抑えて1位入線し、母ダララDarara(GB) との母子制覇成ったと思ったところが長い写真判定の末まさかまさかの5着降着、その後国による進路妨害の基準をできるだけ近付けようとの試みが始まった。Dar Re Mi(GB) は続く凱旋門賞で怨敵Stacelita(FR) を凌いで牝馬最先着の5着と気を吐く。今年から名門ジョン・ゴスデン厩舎の主戦騎手に指名された弱冠21歳のベビーフェイス、ウィリアム・ビュイックの手綱さばきにも注目。英大手ブックメーカーW社の2010年英最多勝ジョッキーのオッズはライアン・ムーア1.4倍、キエレン・ファロン3.5倍、リチャード・ヒューズ9倍、ウィリアム・ビュイック17倍、ジェイミー・スペンサー21倍の順だ。

 ところで母ダララDarara(GB) の半妹にダララDalara(IRE) がいる、こちらも英ダービー2着でG12勝のダリアプールDaliapour(IRE) を送る名繁殖牝馬、カナ表記ではどちらもダララになってしまうが、 LとRの発音練習に格好の姉妹である。その兄に仏ダービー馬ダルシャーンDarshaan(GB) がいるブサック血脈だ。

 現チェチェン大統領の愛馬ムーリリャンMourilyan(IRE) 、英ヨークシャー州ミドルアムの奇才マーク・ジョンストン調教師の管理馬ジュークボックスジュリーJukebox Jury(IRE) ,トルコ代表パンリヴァーPan River(TUR) , ドイツの古豪キハノQuijano(GER) などまだまだ紹介しなければならない馬もいますが、あとは皆様にお任せしたいと思います。

 JBIS-Search では有力馬の5代血統やデビューからの成績を調べることができます。どうぞご自分で検索して想像の翼を広げ、ワールドカップデイの夜間飛行をお楽しみください。

 まわりが再会の挨拶をかわし、互いの健康を祝福しあうワールドサーキット、初参加のブエナビスタは自分を見失わずに力を出せるでしょうか。応援している馬の結果がどうあれ、今年の世界の競馬はまだその緒についたばかり、最近米の女傑対決が延期になったり、セイクリッドキングダム Sacred Kingdom(AUS) が開腹手術をうけ高松宮記念参戦が流れたりとショッキングなニュースが続きますが、このあたりで大きな打ち上げ花火を見たいところです。

 グリーンチャンネルのライヴ中継は3月27日(土)22:30~27:30の予定です。