文字サイズ

文字サイズとは?



HOME > お楽しみ > 2010 ドバイ スーパーサーズデイ&ワールドカップデイ 現地取材レポート > 2010ドバイワールドカップ有力馬紹介(コラム)

2010 ドバイ スーパーサーズデイ&ワールドカップデイ 現地取材レポート

2010 ドバイ スーパーサーズデイ&ワールドカップデイ 現地取材レポート

2010ドバイワールドカップ有力馬紹介(コラム)

~日出づる国のプリンセス、初代メイダン王へ名乗り~


 前哨戦のアルマクトゥームチャレンジラウンド3(G2)(スーパーサーズデイに施行、ワールドカップと同距離のオールウェザー2000m)を大外一気の末脚で快勝し、予定していたシーマクラシック(G1)(芝2410m)からワールドカップ(G1)に目標を切り替えたレッドディザイア。イギリスの大手ブックメーカー(私的な賭け屋)が発表している前売り人気では単勝10倍前後の5番人気(3月15日現在)で、有力馬の一角として評価は高い(1番人気は6~7倍前後)。殊勲のオリビエ・ペリエ騎手は他の有力馬に先約があるため本番では騎乗できないが、仏のチャンピオンジョッキー、クリストフ・スミヨン騎手が空いていたのは幸運だ。昨年久しぶりの来日で成長した姿をアピールした彼は、今季ドバイで南アフリカのマイク・デ・コック調教師と契約しているが、滞在組随一の実績を誇るカリスマ調教師も今回ばかりは手駒不足のようだ。

 レッドディザイアは昨年のチャンピオンサイアーであるマンハッタンカフェの3年目の産駒、父は凱旋門賞に出走したがレース中の故障により敗れており、世界に挑む愛娘の応援にも力が入るところ。母グレイトサンライズ(GB) はシンガーソングライターでタレントのやしきたかじん氏の所有馬として1勝、父カーリアンCaerleon 、母の父サドラーズウェルズ Sadler's Wellsという配合は日本ダービー馬フサイチコンコルドやドバイシーマクラシック(G1)2着のラズカラRazkallaと同じである。祖母のグレースアンドグローリー(GB)は Kジョージ(G1)勝馬ベルメッツ Belmezの半妹で、父Sadler's Wells、母の父トップヴィル Top Ville(IRE)という配合は凱旋門賞馬モンジュー Montjeu(IRE)やアスコットゴールドC(G1)4連覇のイェイツ Yeats(IRE)と同じ。Belmez1990年のジャパンカップで7着と1番人気に背いている、豪のベタールースンアップ Better Loosen Up(AUS)(優勝)、仏のオード Ode(USA)、英のカコイーシーズ(USA)が叩き合った熱いレースだった。(オグリキャップはこのとき11着、次走が伝説の有馬記念)。7代母パールキャップ PearlCap(FR)は仏1000ギニー・仏オークス・ヴェルメイユ賞・凱旋門賞を制した名牝で、産駒パールダイヴァー(FR)(1944年生れ)は日本に初めて輸入された英ダービー馬として名を残す。

 ウオッカの離脱は残念だが、ともかく無事に引退できるのは何よりだ。ドバイで星になった馬を皆忘れない。結局ドバイでは4戦して2年前のデューティーフリー(G1)(芝1777m)の4着が最高と世界にその実力を示せなかったが、親子2代の上戸とあってはイスラムの国では勝手が違ったのだろうか。返す返すもインフルエンザ禍で凱旋門賞挑戦がかなわなかったことが悔やまれる。照る日曇る日いろいろあったが、勝って奢らず、負けて怯まず、常に高みを目指して挑戦を続けた女丈夫に最大限の敬意を表したい。今後はアイルランドで「20年に1頭」の名馬との交配が待っている、母から子へ、ミトコンドリアDNAが伝わる唯一の経路でウオッカの志が引き継がれることを期待しよう。Sea The Stars(IRE) への航海に幸多かれと願うばかりだ。

 同期ブエナビスタから巣立ち、先輩ウオッカに後を託されたレッドディザイアブエナビスタを抑えて3歳牝馬チャンピオンに選出されるためには他に道はないとしてジャパンカップに挑んだ陣営の心意気が伝わったのだろう、初めてのオールウェザーで結果を出して可能性を広げ、世界の頂上アタックに腕を撫す。

 それにしても、強くて美しい牝馬たちよ、なぜに厳しい男馬たちとの戦いにいのちを燃やすのか。きっと牝馬限定プログラムの充実や賞金の増額など、男馬との平等を求め身を削って訴えているのに違いない。牝馬限定戦がつまらないなどといったい誰が決め付けるのか、日本の競馬を支えているのは牝馬ではないか、生まれてくるサラブレッドの半分をないがしろにしては競馬自ら首を締めることになりかねないと、それとも頼りない日本の男馬達に愛想を尽かして、海外により良き伴侶を求めているのだろうか。

 前売り6~9倍程度の人気を集めているのは牡馬4頭。5歳ヴィジオンデタ Vision d'Etat(FR)は12月の香港カップ(G1)以来の一戦、前走では素晴らしい斬れ味を発揮して差し切り勝ちしており、2000mはもっとも得意とする距離(昨年のG1、2勝)、引き続きペリエ騎手が手綱を握るが、オールウェザーの実戦経験はない。父チチカステナンゴ Chichicastenango(FR)の日本初産駒は今年誕生しており、そのなかにはダイワスカーレットの牝馬もいる。なおチチカステナンゴ(FR)は中央アメリカ グアテマラの地名で、ドイツの名馬アカテナンゴAcatenango(GER)(ジャパンC馬ランドLando(GER)の父)も同様だ。

 次いで昨年のブリーダーズカップクラシック(G1)ゼニヤッタZenyatta(USA)(デビュー以来無敗の2年連続米古牝馬チャンピオン)の2、3着となった米馬ジオポンティGioPonti(USA)と英馬トワイスオーヴァー TwiceOver(GB)。5歳GioPonti(USA)は昨年アーリントンミリオン(G1)など芝G1を4勝して米古牡馬チャンピオン、米芝牡馬チャンピオンのダブルタイトルを獲得した。父テイルオヴザキャット Tale of the Cat(USA)は日本国内での新種牡馬ヨハネスブルグ(USA)の母の半弟にあたり、ヨハネスブルグ(USA)ストームキャットStorm Cat(USA)の直孫であるのに対し、Tale of the Cat(USA)ストームキャットStorm Cat(USA)の直子と、非常に近い関係にある。Tale of the Cat(USA)の代表産駒の1頭テイルオヴエカティTale of Ekati(G1勝馬、今年から米で種牡馬)は母の父サンデーサイレンス(USA) で、種牡馬ヨハネスブルグ(USA)の日本での活躍に期待を抱かせる。GioPonti(USA)は本国で今年1戦(芝L 2着)して本番に備えている。5歳TwiceOver(GB)は昨秋英チャンピオンS(芝10f)で初G1制覇を飾り、その余勢を駆ってBCクラシックに挑戦、外を回りながらも見せ場十分の3着と大健闘。陣営はオールウェザー適性を確信し、ここ目標にニューマーケットで調整を積んできた。病気や私生活上のトラブルを乗り越えて復活した英の名伯楽ヘンリー・セシル調教師(チャンピオントレーナー10回)の管理馬である。

 イギリスからはもう1頭、4歳ヒタノエルナンド Gitano Hernando(GB)が満を持して挑戦する。2歳11月に英でオールウェザーのメイドンを勝ってTeam Valor(シンジケート馬主)にトレードされ米遠征の機会を窺っていたが、春はケンタッキーダービー、ベルモントSが候補にあがるも諸事情で断念、9月にオールウェザーのコンディションズステークス(クラス3)をコースレコードで制するとカリフォルニアヘ飛び、サンタアニタのグッドウッドSで同期のKYダービー馬マインザットバードMine That Bird, パシフィッククラシック(G1)勝馬リチャーズキッド Richard's Kid(USA) (ドバイワールドカップ参戦予定、レッドディザイアに次ぐ6番人気あたり) など並み居る米G1馬をG1初挑戦の身で負かして(単勝19倍)一躍脚光を浴びた。$250,000もの追加登録料が必要となるBCクラシックは断念してドバイに目標を絞り、2月末にリングフィールドのオールウェザーでウィンターダービートライアル(L)を4.5馬身差で楽勝し態勢は万全だ。

 ワールドカップでレッドディザイアGioPonti(USA)TwiceOver(GB)を負かしたら次の目標は唯一つ、BCクラシックで彼らを破ったオールウェザーの女王ゼニヤッタ Zenyatta(USA)との決戦である。巨牝Zenyatta(USA)は3月13日のサンタマルガリータ招待H(G1) (オールウェザー9f)でデビュー以来の無敗記録を15に伸ばし、昨年の米年度代表馬レイチェルアレクサンドラ Rachel Alexandra (昨年8戦8勝)との頂上対決に臨むはずだったが、そのライヴァルが同日に他のレースで2着に敗れ(相手はZenyatta(USA)と同厩の牝馬)、4月9日に予定されていた初対戦を回避することになってしまった。Zenyatta(USA)はきっとエネルギーを持て余して、レッドディザイアの挑戦を待っているに違いない。ドバイワールドカップミーティングは3月27日(土)深夜にライヴ中継される、みんなと一緒に応援したい方はパブリックビューイングに参加されたい。