人と馬とが織り成す素敵なストーリー
ボクの一口出資馬の中に、エンドレスシーンという馬がいます。
キャロットクラブ所属だった、マル外のエンドスウィープ産駒の牡馬。
2002年6月に中央でデビューして、休みらしい休みもなく、3歳の秋まで21戦走って勝ち星なし。
2着や3着は何度もあったのですが、残念ながら勝利に届かないまま未勝利戦が終了してしまったのです。
すごくタフな馬だし、能力だって足りるはず。
そう思ったボクは、幸いその時すでに地方の馬主資格を持っていたので、クラブにお願いしてこのエンドレスシーンを引き取らせてもらったんですね。
最初は南関東の川崎で走らせたのですが、距離的に適鞍が無いから成績が上がらない。
そこで地方競馬に詳しい知人に相談したところ、「東海公営がいいんじゃないか」と。
知恵を拝借するならと、その人にも権利を分けて、“共有”の形でこの馬を所有することにしたのです。
するとその人が笑顔でこう言ったのです。
「毎週走らせるからね」。
「??」。
初めはまったく意味がわからなかったのですが、説明を聞くと、脚元が丈夫なら、名古屋、笠松、名古屋、笠松と毎週交互にある競馬を両方使うのがいいと。
「えっ?」。
一瞬耳を疑いました。
だって中央の常識で考えたら、コンスタントに2ヶ月に3走もしたら、かなりタフに走ってるって感じでしょ?
毎週って何?って思うのは当然ですよね。
しかし、これが“郷に入らば郷に従え”なんです。
決して高いとは言えない賞金や出走手当で預託料を賄うために、連闘、連闘は当たり前。
開催側としても馬資源の確保という意味ではおそらく歓迎だったはず。
厩舎もしかりで、その分調教を軽くして、日頃の負担を軽くするなどの工夫をしつつ、みんなのベクトルが同じ方向を向くならと、戸惑いながらもそのやり方に賛同したのでした。
すると、3連闘での5戦目でうれしい初勝利!
その後もとにかく走る、走る。
ある時なんか7連闘目で1F長いはずの1600m戦を逃げ切ってしまいましたから!それもAクラスのレースだからビックリ!
大井の東京盃にも登録したのですが、補欠の1番手止まり。残念ながら華やかな舞台にまでは手が届きませんでした。
クラスが上がって成績的に頭打ちの状態となり、2006年春に岩手県競馬へ移籍。賞金の関係で下級条件から走れたこともあって、ここでも3勝をマーク!雪で競馬が休みとなるオフシーズンを契機に高知競馬に行き、2007年3月の引退まで、なんと130戦14勝!どうです?質量共に見事な成績でしょ(笑)。
中2週で競馬を使えば「長期休養明けだね」と笑い、地元競馬新聞の調教欄の“タフ”の評価に「おいおいそれは調教評じゃないでしょ」と突っ込み(笑)。
人間が勝手に可能性の幅を狭めちゃいけないんだなって、馬って人知を超えた生き物なんだなって、エンドレスシーンに教えてもらった気がします。
毎週毎週ワクワクさせてくれた、ホントにボクの自慢の1頭だったのです。
競走生活を終えてからは乗馬としてJRAの馬事公苑でもらってもらい、実はグッドルッキングホースということで、東京競馬場の春の5週連続GIポスターのモデル馬にもなったんですョ。
今は白井のJRA競馬学校で、ホースマン育成のための乗馬として頑張っています。
こんな馬との出会いはそうそうあるものではありませんが、1頭1頭にあなたとその馬との物語が生まれるのも馬主の特権です。
人と馬とが織り成すあなただけの素敵なストーリー。あなたも紡いでみませんか?