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プロフィール
稲川 一さん

1949年5月28日生まれ
東京都出身
立教大学社会学部卒業
株式会社 文宣 代表取締役社長
2007年JRA馬主資格取得

JRAの個人馬主として初めて所有したワンボーイが、2017年1月22日に3勝目を挙げた稲川 一さん。

「信じられないというか、最初ですからまさか1つ勝てるとも思わなかった。それが1年に1回ずつ勝ってる。何も文句の言いようがないといったところですね。周りからもラッキーだ、ラッキーだって言われますけど、本当にその通りだと思います」。

1つ勝つ難しさは、長年続けてきた一口馬主の経験からよくわかっている。

「もう30年近くになりますか。社台レースホースから始めたんですけど、最初の馬はキューティーデビル。4戦して引退してしまいました。 あれから妻や娘の出資馬を合わせると160頭ほど。代表馬はダンスインザムード(桜花賞、ヴィクトリアマイル)。母ダンシングキイの子はずっと関西の厩舎に入ってたけど、これは関東の藤澤厩舎に入るからと応募したら通っちゃって」。

奥様は早苗さん、娘さんはルイさん。とにかく家族全員で競馬を楽しんでいる。それが稲川さん一家の印象だ。
そもそも競馬を好きになったきっかけは?

「父親の影響ですね。戦時中、父は兵隊で馬にかかわっていたらしいんですが、戦争が終わって馬が見られるっていったら競馬場しかないじゃないですか。で、私が小さい頃、よく連れていかれたんですよ。親父にしてみたら、私を連れ出したほうが家を出やすかったんじゃないかなと(笑)。
そのうち私もパドックなんかで馬がキレイで好きになって。
ところが、それよりも好きになったのが、ウイナーズサークルで口取りをする馬主の姿。大人になったら、絶対あそこに立ってやるんだと思ってました」。

しかし、現実はそう簡単にはいかず。

「年を重ねると、あそこにはものすごく高いハードルがあるとわかる。それで諦めかけてた時に、共有クラブがあるのを知って。その頃、まだ会員は口取りが出来なかったんですよね。それでも自分の“一口”の馬が出来たから満足はしていたんです」。

その当時、奥様の早苗さんはまだ競馬に興味がなかったそう。

「家内は『こんなのにお金遣って』と文句タラタラだったんですけど(笑)、ダンスインザムードがGI馬になって、スポーツ紙の一面に載るじゃないですか。そうすると興味が出てきたみたいで。競馬場行きたい、牧場の見学ツアーに行きたいと始まって。
勝った賞金で『新しい冷蔵庫でも買ったら』と言ったら、本当に買われちゃいました(笑)」

そうして2007年、遂にJRAの馬主申請をすることに。

「ダンスインザムードの会員仲間に個人馬主の方がいて、『そろそろやってみたら』みたいな話になり、幸運にも資格が取れた。じゃ、セレクトセールに行ってみようかと。家族の反対はなかったけど、セリではあんまり手を挙げないように、腕を押さえられたというのはありましたね(笑)。
ワンボーイは2013年の1歳馬セリで、2頭目の上場馬だったんですよ。2頭目で取れちゃったから、まだ100頭以上も上場馬はいるわけで。そうなると、どうしても手が動きそうになる。そこをぐっとカミさんに押さえられて(笑)」

名付けも馬主ならではの楽しみのひとつ。

「昔、娘のルイと一緒にダビスタで遊んでて、最初に付けた馬名がワンボーイ。自分の名前『一(はじめ)』に絡めたのと、懐かしのアメリカンポップスで、ジョニー・ソマーズが歌った曲のタイトルにもあって。“ワンボーイ、スペシャルボーイ”という歌詞。これはピッタリだなと」

勝負服の服色を選べるのも、一口馬主にはない喜び。『黒 黄襷 袖黄一本輪』が稲川さんの勝負服だ。

「家内が会員になっているGIレーシングの赤を黄にしただけ。GIレーシングの勝負服を見た時、赤を黄色にしたら綺麗じゃないかと。で、自分の勝負服を決める時にことわりに行ったら、『全然構いませんよ』と。家内は喜びましたね。 レース出走の日は基本的にはみんなで競馬場に行く。娘は仕事があるので、できればといった感じですが。
ゲン担ぎではないけれど、クラブ馬の出走も含めて、枠の色をファッションのどこかに入れていくっていうのはありますね。ネクタイとか、シャツとか。カミさんはブレザーを8色揃えたりしててね(笑)」。

実は家族だけでなく、会社の社員とも、フランクに競馬を楽しんでいる。

「うちは今年で70年を迎える株式会社 文宣という広告代理店なんですけど、社員で作る“文宣ホースマンクラブ”というのがありまして。メンバーが横断幕を作って応援してくれる。勝てばもちろん祝勝会、負けても反省会の費用を渡して私は帰ってきちゃう(笑)。
10人ぐらい集まりますからね。お昼を食べさせて、反省会の費用を出して。午前中の馬券でその分稼いでおかないといけないから、大変なんですよ(笑)。
うちは父の代から、競馬に関しては社内でオープンでしたから、そういう意味ではやりやすい環境だと言えますかね」。

家庭でも職場でも、競馬が素敵なコミュニケーションツールになっている、理想の馬主像かもしれない。
そんな稲川さんに、馬主としての夢を聞いてみた。

「ダンスインザムードで女の子のGIを獲ったので、男の子でGIを獲りたいのですが、これがなかなか…。出走は叶っているので、勝ち負けまではいって欲しいなと。
でも、そういうのはクラブじゃないと、個人ではとてもとても…。
ただ、だんだん欲が出てくるもので、ワンボーイもあとひとつで準オープン。そこまで行ってくれたら、気分はGI獲ったようなものですよ(笑)」

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