JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第9回 岐路を迎える若手騎手・騎手候補生の育成

2010.12.13
 年末に向け,毎週のように行われるGⅠレース。それに伴い,毎週末の競馬に多くの外国人騎手が参戦しています。週によっては,東西のメインレースを外国人騎手が制覇するケースも度々。
 週中のトレセンでは,「心が折れてしまいそうです」「慰めて下さい...」と,愛馬の乗り替わりを受け,落ち込んだ様子の若手騎手たちの姿がチラホラ...。

 確かに私も騎手時代,最も辛いことといえば,乗り替わりでした。今にして思えば,成績上位の騎手に替わるのはごく自然の成り行きだと理解できるのですが,毎日トレーニングを積み,馬自身,右も左も分からないデビュー時から共に歩んできた過程があっての乗り替わりの現実は,全てを否定された気持ちになり,無気力に...。

 ましてや今は昔とは違い,勝っても乗り替わりが当然のように起こりうる時代。夢を持って騎手を目指し,日々歩んでいる若者にとっては,それはそれは辛いことでしょう。しかし,一方では冷静に,「馬が遊んでいなかった」「掛からなかった」「反応がいつもよりよかった」と,乗り替わった外国人騎手の騎乗技術の高さを素直に受け入れ,「もっと頑張らなくてはならないということですよね」と前向きな姿も。

 しかしながら,そんな光景が年々増しているだけに,私も胸がキュンと締め付けられ切なくなる一方で,やはり世界のトップで活躍する外国人騎手の手綱捌きには,度々驚かされ,魅了されてしまうのも事実。

 そんな中,つい先日,将来の騎手を目指し,競馬学校でトレーニングを積んできた,騎手過程27期生による模擬レースが,東京競馬場で行われました。

 その際,候補生の保護者の方々とは別に,その模様を見学する数十名の親子連れの姿が...。今までにない光景だったので,競馬学校の教官に,「どなた方ですか?」と伺うと,「将来騎手になりたい,もしくは現時点で興味がある中学2年生以下の子と,親御さん方です。

 というのも年々,騎手になりたいと志願する子供たちの数が減り,今では100人を切ることもあって...」と。私が受験をした十数年前は,400人を超える志願者だった騎手過程も,今では100人を切るまでになってしまっていたのです。確かに,3年間の授業料や生活費が一切無料だった私たちの時代とは違い,今では個人負担の面もあり,また退学や3年以上かかるケースも多くなってきました。

 そしてデビューしたからといって,騎乗できるという確固たる保証もなければ,競馬サークル自体が,若手を育てるといった傾向も薄れているこんにち。

 何が良くて何が悪いといった話ではないのですが,今の状況を見ていくと,近い将来,日本の若い騎手が減っていってしまうのではないかという恐れがあるのは,私だけでしょうか...。

 もちろん日本中が不景気であり,競馬の世界も賞金面の削減,サークル内においては,メリット制度のなごりや固定資産税など,調教師の負担部分も増し,技術・経験のない若者を育てるというのは,全体として考えても,かなり厳しい状況下であるのは当然ですが,将来的なことを考えると,今,動かなければならない点もあるのではないかと,若手騎手の言葉,騎手候補生の現状から,感じました。

 それでは皆さん,また来月お会いしましょう。
 ホソジュンでした。
トップへ