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第11回 変化しつつある環境の中で

2011.02.16
 年が明けても,まだまだ勢いが続く外国人騎手の活躍。そのたびに周囲から,「ホソエさん,日本人騎手と何が違うのでしょうか?」との質問を受けます。
 私個人としては,日本人・外国人という枠組ではなく,個々に違いや素晴らしい点があるように感じ,応答に困るのですが,一つ大きな違いを感じるのが,馬文化。

 つい先日も,栗東トレセンの厩舎をウロウロしていると,今年から来日したイタリアのリスポリ騎手が浜中騎手,藤岡康太騎手と共に談笑。仲間に加えさせてもらうと,リスポリ騎手が携帯の動画サイトを開き,母国のお祭りを紹介してくれました。するとそこには,様々なコスチュームに身を包んだ10人くらいの大人が裸馬に跨り,観衆と観衆の間に作られた小さなコースを周回。しかし,コーナーがあまりにも急すぎるため,騎手が続々と落馬するシーンや,壁に激突する場面も...。映像から観衆のどよめきと共に,リスポリ騎手もエキサイト。

 そして,「僕の父も出場したことが過去にあるんだ。僕もいつか出たいんだよね」と。また違う年の動画を流し,「この白い馬に乗っているのは,イタリアのダービーも勝ったことのある騎手だよ。このレースで勝つんだけど,これが凄いんだぁ~」と,少年のような眼差しで,お祭りの興奮と楽しさを語る彼の姿に,馬との距離の近さを感じずにはいられませんでした。

 そしてまた,近くで見る彼の太ももは,ジーンズがはちきれそうなほどムチムチ。思わず,隣にいた藤岡康太騎手に,「凄いね,彼の太もも。騎座が安定しているわけだね」と,話しかけると,「ほんと。でもね,太ももだけじゃないんですよ。腕も凄い筋肉で,Tシャツから筋肉の形がわかるほど。凄いわ~」と。

 何でもイタリアでは,ほぼ毎日レースに騎乗することも多く,1週間で50鞍近いレースに参戦することもあるのだそう。それを聞いただけでも,リスポリ騎手の体力・勝負感・騎乗技術が磨かれる要因が伺え,日本での活躍にも納得。

 そして今後,この初来日での経験が,また一つ彼の財産・ひきだしとなり,超一流騎手への道へと繋がっているのでしょう。
 
 また,馬上でのリスポリ騎手のインパクトはもちろんですが,地上での彼の存在感の大きさにも圧倒され,素直に,「22歳のリスポリ騎手は,これからどうなっていくのだろう?どんな騎手へと成長し,今後,世界各国で,どのような活躍を見せていくのだろうか?」と,ワクワクさせられました。と同時に,同じ年である浜中俊騎手や藤岡康太騎手が,リスポリ騎手との交流の中で,リスポリ騎手や海外の競馬に興味を抱き,コンタクトをとろうとしているその姿に,またまたワクワクとした思いを抱きました。

 しかしその一方で,こんにちの騎手を取り巻く環境といえば,厩舎制度の改革により,今年はこれまでにないほど多くのジョッキーが引退。

 また年明けには,競馬学校騎手候補生である1年生の生徒が,短期間ではありますが,以前よりも1年早い厩舎実習をスタートさせており,その背景には受け入れ先の問題が大きく影響している感じも...。

 全体的に考えても,日本の騎手にとっては,これから益々厳しい時代へと突入していく雰囲気が否めず,重い気持ちにもなりますが,その環境下の中で,今回のように,同じ年齢で同じ職業の若者たちが,国籍を超えて,互いに刺激を受け,新しい何かを掴もうとしている姿も。

 幕があけた2011年の競馬は,所々で何かが変わり,何かが動き始めているのかもしれませんね...。
 それでは皆さん,また来月お会いしましょう。
 ホソジュンでした。
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