ホソジュンのウマなりトーク
第167回 ターフ・言葉の魔術師たち~思い出される志摩直人さんと競馬中継~
昨年でコロナ禍もおさまりを見せ、日常が戻ってきた中で、新しい年の幕開けとなった2024。
新たな年のスタートに、これまで以上に心機一転の気持ちも強まり、災いの少ない1年となることを願った方も少なくないと思います。そのような中、石川県能登地方を中心とした大地震が元旦に起こり、多くの命が失われ、今もなお行方不明の方や日常が戻らない状況…。
あまりにも無情すぎる1年の始まりに、未だに心が重くなります。祈ることしかできませんが、1日も早い復興を願います。
さて先月号でご紹介をした作家・島田明宏さんの小説「ブリーダーズ・ロマン」、お読みになられましたか?今回の小説は、あの寺山修司さんが亡くなられて40年ということで、その記念認定事業の1つとして、寺山さんの本籍地でもある三沢市を舞台に繰り広げられていましたが、島田さんはこれまでにも競馬を題材とした小説を出版されており、この年末・年始は島田さんの競馬小説や、以前から興味のある量子力学本、孤児から世界的ブランドの創設者となったシャネルの自叙伝、高校時代に恩師から勧められた沢木耕太郎さんなどの本を読みながら過ごしていましたが、昨年、解説文を書いたことで、小説もさることながら解説文にも興味を抱いている自分が存在していました。
その中でも特に印象的だったのが、何気ない日常の中に小説が組み込まれた形で解説をなさっていた高橋源一郎さんの文。今更ながらですが、さすが作家さんだなぁと魅了されるとともに、以前、何かの雑誌で武豊騎手のことを「ターフの魔術師」と表現される方がいらっしゃいましたが、高橋さんをはじめ、小説家と言われる方々は、まさに言葉を扱う「言葉の魔術師」。視点の在り方や物事を捉える角度が一般的なものとは何か違い、ハッと感じさせる手法に心揺さぶられます。
またこれは音楽も一緒で、やはり時代を超えて愛される曲の歌詞は、歌が1つの詩であり、作詞家は詩人。言葉の組み合わせや綴り方が脳裏に刻み込まれます。
そして詩人と言えば、一昔前の関西テレビでの競馬中継においては、詩人である志摩直人さんの詩が、発走直前や番組の冒頭で詠われ、その日のレースの深みと風情が増していました。よってあの中継は、ふとした瞬間に思い起こされ、時折、映像がよみがえるのです。
時代は昭和から平成、そして令和となりましたが、今、若者の間では昭和歌謡が注目を集めている様子。もともと競馬は、脈々と受け継がれた血の歴史上に行われているもの。そういった観点からも、あの志摩先生のようなスパイスが注がれた中で繰り広げられる競馬中継の復活もステキなのではないかな…と、この年末・年始、様々な本を読む中で、ふと感じました。
皆さんは、どう思われますか?
それでは皆さん、また来月お目にかかりましょう。
ホソジュンでしたぁ。