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南関フリーウェイ

阿部典子 南関フリーウェイ

第35回 2歳シーズン到来に、若駒たちの気持ちを思う。

 2歳重賞の話題もホットになってきた南関東競馬。10月25日は船橋競馬場で平和賞(SIII)が、11月1日には大井競馬場でハイセイコー記念(SII)、11月8日には2歳牝馬によるローレル賞(SI)、そして12月13日には2歳ダート王決定戦・全日本2歳優駿(JpnI)がそれぞれ川崎競馬場で行われます。

 そんな2歳馬たちにとって、馬場入場時の「誘導馬」の存在はとても大切だそう。自然界では集団で生きている馬たち。競走馬になっても、やはり頼りになるリーダー的な存在は重要なのでしょうね。

 そういえば、以前、北海道でとても興味深い光景に出会ったことがありました。1歳牡馬たちの放牧地を眺めていた時のこと。どの馬も「疲れたからもう馬房に帰りたいよ」「お腹すいた」「迎えに来てくれたんでしょう?」という声が聞こえてきそうな表情で、柵越しに並んで存在アピール。"ワラワラ寄って来る"とはまさにあのことで、人間ならまだ小学校低学年くらいの男の仔たちが、好奇心や人懐っこさ、「こいつに負けてたまるか」という雰囲気で押し合いながら目の前に集合していました。

 が、その時。急にソワソワ、ソワソワ・・・と。そして、あちこちで甘えるような、切ないような"いななき"が、一斉に聞こえ始めたのです。それと同時に、背後の放牧地から、1頭の馬がドドドッドドドッと、まるで時代劇の殿様登場シーンのような、勇ましい蹄の音を響かせて現れました。

 勇ましいのも当然、音の主は、重賞ウイナーで、当時、芝のオープンクラスで活躍していたドリームパスポート(2003年生まれ 父フジキセキ)でした。

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 「どうしたんだい、君たち?」というように、キリリとした姿で柵の前に立ったドリームパスポート。そんな彼が柵沿いに移動すると、1歳牡馬たちは鼻を鳴らし、時々小さくいななきながら、小走りでくっついて行くのです。柵や通路があることがもどかしい、少しでもそばへ、近くへ、と押し合いながら。その時の1歳馬たちの表情と言えば、恋焦がれ、憧れの相手に出会った少年のようでした。

 安心できて頼りになる存在について行きたい・・・。そんな気持ちが伝わって来るような姿がとても微笑ましく、愛しく思えたのを、今でもよく覚えています。

 もうひとつ。牧場で出会った若駒たちの様子で印象的だったのは、良血・高額取引馬としても注目されたカーム(2000年生まれ 父サンデーサイレンス)のゲート練習のシーン。当時3歳。牧場スタッフが騎乗してゲートに入ると、小高い放牧地の柵の前に、デビュー前の2歳牡馬たちが一列に並んで、じっとその様子を見下ろしていました。他の馬の時にはいなかったのに。そして、カームの練習が終わると、みんなそれぞれ放牧地の奥へと去って行ってしまったのです。カームを取り巻く空気を、若い馬たちなりに感じ取っていたようにも思える興味深いシーンでした。

 若駒たちにとって頼もしい"先輩"、競走馬から誘導馬に転身したチャラオ(船橋)についてもお伝えしておきましょう。このコラムの4月の記事で、誘導馬業務をスタートさせた様子についてご紹介しましたが、あれから半年。5月には「朝の運動中に、スタッフの目を盗んで厩舎(岡林厩舎)に自力で帰っちゃった」というプチお里帰りな出来事もありました。

 「調教時間が終わって、厩舎にいたら馬が来たから『あれ?おい、チャラオか?』って。かわいいよなぁ、戻って来ちゃうんだもんなぁ。泣けるよなぁ」と、競走馬時代に管理していた岡林光浩調教師もしみじみと語っていました。ちなみにその日は、自力でプチお里帰りの後、かしわ記念(JpnI)の誘導をきっちりこなすという、ドラマチックな1日にもなりました。

 真面目で賢い、とスタッフからも太鼓判を押されているチャラオ。お仕事がひと段落した時に貰える黒砂糖を楽しみにしていて、「お砂糖ください」という表情で戻って来る姿も微笑ましいです。この姿は、場所によっては、ファンエリアからも見えることもあります。

 今年も残すところ、あと2ヵ月。来年のクラシックを占う2歳馬たちの成長からも目が離せないシーズンの到来です。ますますアツくなるダート戦線を楽しんでいきましょう。