北海道馬産地ファイターズ
第7回 馬市ドットコム(Part1)
2009.07.01
ポスト
せり市で一際目を引く,濃いブルーの看板と同色のブース。元気なスタッフの挨拶と,見栄えのいい上場馬の姿に思わず足を止めたのなら,その看板には「馬市.com(ドットコム)」と書かれているはずだ。
馬市ドットコムは競り市場情報サイトの運営と,サラブレッドに関する情報管理をホームページ上で発信。また,せり市の前にはホームページや小冊子などで提供牧場の上場馬を紹介しているだけでなく,このようなブースを設置して,上場馬のとりまとめも行っている。
提携牧場は全部で7牧場(チェスナットファーム,エバグリーンセールスコンサインメント,ハッピーネモファーム,平野牧場,前田宗将牧場,大作ステーブル,山口ステーブル)。それぞれの牧場が生産牧場やコンサイナー,そして育成牧場やピンフッカーとしても優れた実績を残している。
今年の春,この馬市ドットコムの提携牧場からG㈵馬が誕生した。NHKマイルCの優勝馬であるジョーカプチーノは,ハッピーネモファームの生産馬であり,中期育成までは同牧場で過ごし,その後,育成調教は山口ステーブルで施されている。見方を変えるなら馬市ドットコムが送り出したG1馬とも言えるが,運営者である齊藤宗信さんは,「馬市ドットコムの誰もが,NHKマイルC優勝をチームとしての通過点と見ているのではないのでしょうか」と,この快挙を冷静に見つめる。
齊藤さんは大学を卒業後に医薬情報担当者の仕事を経た後,日高の生産牧場へ転職。その後,日高軽種馬農業協同組合(HBA)へと入るのだが,その頃に馬市ドットコムの原型となるホームページを設立した。「HBAにいた頃からせり市をなんとかしようという思いはありました。それを行動に移さなければと思ったのは,研修でキーンランドやファシグティプトンのせりを見に行った時,改めてコンサイナーの重要性を知ってからになります」(齊藤さん)
その後,HBAを退職した齊藤さんに,ハッピーネモファームの代表である根本明彦さんから,「せりで配布するパンフレットを作ってくれないか?」との依頼を受ける。齊藤さんはA4サイズのパンフレットを作っただけでなく,馬市ドットコムのホームページでも写真と血統といった情報を公開。この行動に刺激を受けたチェスナットファーム,エバグリーンセールスコンサインメントといった,コンサイナーからの同じ依頼を受けるようになっていく。
「声をかけてくださった皆さんが,自分で何かを始めようという当事者意識を強く持っていたこと。そして馬市ドットコムというチームを大事に思ってくれていたからこそ,自分もできる範囲で皆さんに協力しなければと思うようになりました」(齊藤さん)
それにしても馬市ドットコムにおける齊藤さんの立場は実に興味深い。設立者ではあるが決して主催者ではなく,他の7牧場とは違って牧場の経営者でもないのだから,野球でいうところのプレイングマネージャーとも違う。フロント,監督,コーチ...果たして齊藤さんのチームにおけるポジションがどこなのかを聞いてみると,明快にこんな答えを返してくれた。
「馬市ドットコムという船の舵取りをしていると思います。ただ,実際にはそこに座りながらちょっとだけ舵を切り直すぐらいで,実際に船を動かしているのは他の7牧場の皆さんでしょうね」
しかし,この「ちょっとだけの舵」が,馬市ドットコムの7牧場に与えている影響は限りなく大きい。例えばせりの小冊子に載せる写真。齊藤さんは締切りのぎりぎりまで駄目出しを行っており,それは提供牧場のスタッフからも「締め切りの前は胃が痛む」と言われているほどだ。
「チームの皆さんがいい馬を育てているわけですから,それならいいものを出さなくてはいけませんから」と齊藤さんは飽くなき向上心を口にする。この向上心こそが,馬市ドットコムというチームを更に成長させていくことになった。
(次号に続く)
JBBA NEWS 2009年7月号より転載
馬市ドットコムは競り市場情報サイトの運営と,サラブレッドに関する情報管理をホームページ上で発信。また,せり市の前にはホームページや小冊子などで提供牧場の上場馬を紹介しているだけでなく,このようなブースを設置して,上場馬のとりまとめも行っている。
提携牧場は全部で7牧場(チェスナットファーム,エバグリーンセールスコンサインメント,ハッピーネモファーム,平野牧場,前田宗将牧場,大作ステーブル,山口ステーブル)。それぞれの牧場が生産牧場やコンサイナー,そして育成牧場やピンフッカーとしても優れた実績を残している。
今年の春,この馬市ドットコムの提携牧場からG㈵馬が誕生した。NHKマイルCの優勝馬であるジョーカプチーノは,ハッピーネモファームの生産馬であり,中期育成までは同牧場で過ごし,その後,育成調教は山口ステーブルで施されている。見方を変えるなら馬市ドットコムが送り出したG1馬とも言えるが,運営者である齊藤宗信さんは,「馬市ドットコムの誰もが,NHKマイルC優勝をチームとしての通過点と見ているのではないのでしょうか」と,この快挙を冷静に見つめる。
齊藤さんは大学を卒業後に医薬情報担当者の仕事を経た後,日高の生産牧場へ転職。その後,日高軽種馬農業協同組合(HBA)へと入るのだが,その頃に馬市ドットコムの原型となるホームページを設立した。「HBAにいた頃からせり市をなんとかしようという思いはありました。それを行動に移さなければと思ったのは,研修でキーンランドやファシグティプトンのせりを見に行った時,改めてコンサイナーの重要性を知ってからになります」(齊藤さん)
その後,HBAを退職した齊藤さんに,ハッピーネモファームの代表である根本明彦さんから,「せりで配布するパンフレットを作ってくれないか?」との依頼を受ける。齊藤さんはA4サイズのパンフレットを作っただけでなく,馬市ドットコムのホームページでも写真と血統といった情報を公開。この行動に刺激を受けたチェスナットファーム,エバグリーンセールスコンサインメントといった,コンサイナーからの同じ依頼を受けるようになっていく。
「声をかけてくださった皆さんが,自分で何かを始めようという当事者意識を強く持っていたこと。そして馬市ドットコムというチームを大事に思ってくれていたからこそ,自分もできる範囲で皆さんに協力しなければと思うようになりました」(齊藤さん)
それにしても馬市ドットコムにおける齊藤さんの立場は実に興味深い。設立者ではあるが決して主催者ではなく,他の7牧場とは違って牧場の経営者でもないのだから,野球でいうところのプレイングマネージャーとも違う。フロント,監督,コーチ...果たして齊藤さんのチームにおけるポジションがどこなのかを聞いてみると,明快にこんな答えを返してくれた。
「馬市ドットコムという船の舵取りをしていると思います。ただ,実際にはそこに座りながらちょっとだけ舵を切り直すぐらいで,実際に船を動かしているのは他の7牧場の皆さんでしょうね」
しかし,この「ちょっとだけの舵」が,馬市ドットコムの7牧場に与えている影響は限りなく大きい。例えばせりの小冊子に載せる写真。齊藤さんは締切りのぎりぎりまで駄目出しを行っており,それは提供牧場のスタッフからも「締め切りの前は胃が痛む」と言われているほどだ。
「チームの皆さんがいい馬を育てているわけですから,それならいいものを出さなくてはいけませんから」と齊藤さんは飽くなき向上心を口にする。この向上心こそが,馬市ドットコムというチームを更に成長させていくことになった。
(次号に続く)
JBBA NEWS 2009年7月号より転載