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第197回 『七戸種馬場の種牡馬展示会 PART Ⅱ』

2025.05.19

 今年の3月1日に七戸種馬場で開催された種牡馬展示会。この時期この場所では16年ぶりの開催となったのだが、展示会が開始される1時間も前から、会場には多くの来場者が詰めかけていた。


 その来場者のお目当てとなっていたのが、現役時からの人気の高さに加えて、昨年の12月に「ウマ娘プリティーダービー」に実装されてから、更に注目を集めることとなったウインバリアシオンである。
 

 今回の種牡馬展示会に際しては、事前に一般来場者も入場可能との周知がされていた。


 そこに開催日が土曜日となっただけでなく、東北新幹線の七戸十和田駅からも徒歩圏内にある、七戸種馬場のアクセスの良さも手伝う形で、多くの来場者を呼び寄せる形となったのだろう。


 来場者の数はどんどん増えていき、最終的には100名を超えるまでになっていた。その中には兵庫県から来たという熱心なファンの姿もあったが、思った以上に青森県内の競馬ファンもこの展示会に足を運んでいた。


 八戸から車で来たというファンは、「ウインバリアシオンが目当てでしたが、種馬場に入れたのも嬉しかったです」と笑顔を見せていた。他にも数名のファンと話す機会があったが、ウインバリアシオンが青森で繋養されていたのは知っていても、七戸種馬場がこの場所にあったことや、2頭の種牡馬が導入されたことに関しても、この展示会で初めて知ったとの声も聞かれた。


 展示に先駆けて、日本軽種馬協会の上野儀治副会長や、東北軽種馬協会の山内正孝会長、そして、スプリングファームの佐々木拓也代表が挨拶に立つ。


 その後、この地に筆者を呼び寄せた小木曽なつ美さんの進行により、アニマルキングダム(USA)、オールブラッシュ、サブノジュニア、ウインバリアシオンの順番で展示が行われていった。


 ほとんどの来場者がウインバリアシオン目当てかと思いきや、アニマルキングダム(USA)の展示からカメラのシャッター音が鳴り響き、それはオールブラッシュ、サブノジュニアの時も変わらなかった。


 種牡馬展示会や種牡馬の姿は見慣れている筆者ではあるが、競走馬の姿が印象に残っているファンからすると、その逞しい姿や堂々たる立ち振る舞いは、かなりのインパクトがあったのだろう。


 JBBAの種牡馬2頭の展示に際しては、七戸種馬場の野田龍介場長が説明を行っていたのだが、ファンの中には事前に配布されていたスタリオンブックを開きながら、改めて目の前を歩く種牡馬との比較を行っていた。


 この展示会の大トリを務めたのがウインバリアシオン。佐々木代表から、「実はリンゴが嫌い」といったエピソードが伝えられると、ファンからは笑いも起こっていた。


 こんな展示会は他にないだろうなと思いながら、周回を重ねるウインバリアシオンの姿を見ていた。展示会の最後にはJBBA七戸種馬場の関係者や、佐々木代表などの計らいもあり、厩舎の馬房内に留まる形で、ウインバリアシオンとオールブラッシュの展示が行われた。


 ちょうど、その日はウインバリアシオン産駒のハヤテノフクノスケが、阪神競馬場リニューアルOP記念に優勝。その瞬間には馬房の前にいたファンが一斉に歓声をあげていた。


 この日の展示会には岩手競馬を中心に、様々な競馬場に出向いては、写真撮影や執筆活動(時にはテレビ出演)を行っている、横川典視さんも取材に来ていた。


 その横川さんは4月2日のFacebookの中で、「大手スタリオンの華々しく宣伝される種牡馬たちに比べれば、東北の種牡馬は“よほどのマニアでないと知らない、知られない”存在でしょうから、『東北にこういう種馬がいる』と広くアピールできる機会があることは大事だと自分は思います」 「生産者や馬主さんに『この父はファンにこんなに注目されているんだ』と伝わるのは、種付頭数や購買頭数に即直結はしないでしょうけども、決して悪い事ではないとも思います」と書かれていた。まさにその通りだと思う。


 この日の来場者のほとんどが、ウインバリアシオンが目当てだったはずだ。それでも目の前で見たアニマルキングダム(USA)や、サブノジュニアの姿は印象に残ったはずであり、今後は産駒にも注目してもらえるに違いない。


 横川さんはFacebookの中で、「来年もまた、ではないでしょうが、次回は16年後といわず、何らかの機会にあわせてこういう展示会があってほしいなと感じた今回でした」とも書かれていた。ウインバリアシオンの人気や、ハヤテノフクノスケの活躍で青森の馬産への注目が集まっている今、自分としても何らかの形で種牡馬のお披露目をしてもらいたいと切に願う。

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