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第9回 青森県産

2009.09.01
 本稿執筆時,夏の全国高校野球選手権が開催されている。県立の野球弱小高であるわが母校の出場は当然のことながら望むべくもなく,今年は青森山田高校が代表として出場している。

 郷愁ではないが,やはり毎年,青森県代表を応援している。一方,最近は埼玉のわが嫁の母校が強く,今年出場を決めた。「日程が合えば応援行くか」と,義理父と盛り上がっていたのだが,「2人とも関係ないじゃん」と突っ込まれた。いいじゃないか県民なんだし。結局日程が合わなかった。
 先日,青森に帰省した。毎年のように車で東北道を北上するのだが,今年は例の「休日1000円」でさぞかし混雑していることだろう,と警戒していたら,混んでいるのは首都圏近郊だけで,宇都宮をすぎれば道はガラガラ。いつもは沢山の観光バスと高速バトルを繰り広げるのだが,それも少ない。
 
 地元青年会議所メンバーの同級生に聞いたら,ねぶたのマス席,団体席が売れ残っていたらしい。確かに,例年なら子供の手を引いて歩けないほどの沿道が,空いていた。ホテルや旅館も「当日宿泊可」の札が目立った。それに加えヤマセが吹いて寒く,メロンやとうもろこしも遅かった。かなりヤバイと感じた。街にも活気がない。

 例年,帰省にテーマを設けている。昨年は「温泉」。最低1日1温泉。多ければ1日3温泉。さすがにだるくなった。今年は「馬」。なぜ今回,そのような企画を立てたか。このような仕事をしていると,当然出張が多い。最近はないが,以前はよく牧場にも取材に出かけた。競馬を何にも知らない嫁には,不思議に思った場所も多いに違いない。以前,私の前任の先輩が,ある地域に頻繁に出かけていた。その先輩の奥さんは,夫の行動を不審に思い,その地域の宿泊施設に電話攻撃を......。そのような悲劇?を防ぐため,嫁や子供相手に,たまにこういった「見学ツアー」を行っている。

 最初は盛岡競馬場。開催中だったが,朝イチだったこともあって,お客さんも少なく,誰か知り合いに会うかとも思ったが,誰にも会わず。馬券を買って早々に撤退。再び東北道で南郷ICに。八戸家畜市場の前を通る。以前はせりの日程が合えば,盛岡の競馬の翌日に何度か行ったものだ。子供に「馬のせり市だよ,ここで馬が売られていくの,下の芝生の広場は展示の場所だよ」と説明した。今年は平均価格は前年を下回ったものの,売却率,総売上額は前年を超えたようだ。最高価格は新ひだか町産だが,同じ青森県産として,県産馬には頑張って欲しい,と思いつつ八戸市街へ。

 八食センターで昼食後,三沢経由で十和田へ。途中テレトラック十和田で馬券を払い戻し機に突っ込んだら,的中していた。初めて行ったが,なかなかいい施設だった。車は4号を北上。七戸へ。八戸や五戸,六戸にも牧場はあるが,見た目わかりやすいのは七戸だろうか,と思って。七戸の道の駅へ。場内に馬の銅像があり,向いは七戸種馬場。見学申し込みはしていないので,そばソフトクリームを舐めながら,外から眺める。今思えば,カリズマティック(USA)とかキャプテンスティーヴ(USA)とか見せとけば良かったか。種馬の概念と説明は,小学生には少し難しい。「交配」という言葉はR15指定だろう。道の駅七戸には美術館が併設され,南部小絵馬などが展示されている。馬事文化として価値があるので,1度ご覧になって欲しい。

 盛田牧場で南部曲がり屋や厩舎を見せようかと思ったら,疲れたのか子供が寝てしまい断念。4号沿いに北上し,その盛田牧場や諏訪牧場あたりで,チラッと馬の姿が見える。嫁は日高同様,もっとサラブレッド銀座的に,道路沿いに牧場が連なっているかと思っていたようだが,南部藩営牧場制度「四門九戸(しもんくのへ)」の説明が書いてあるパンフレットがあったので,それを読ませてお茶を濁す。七戸自体ずいぶん久しぶりに訪れたが,新幹線の駅が出来ることもあり,道は整備され,ずいぶんときれいにはなった。ただ,かつてのような南部縦貫鉄道のレールバスが走る傍らで,馬が牧草を食むというような,牧歌的な景色はなくなったような気がする。

 大差とはいえ,都道府県別生産頭数2位の青森県。グリーングラス,タムロチェリーとまでは言わないが,エスプリシーズかマイネレーツェルぐらい活躍する馬が毎年出てくれれば。同じ青森県産としては嬉しいのだが。久々に故郷の馬産地を訪れ,何か郷愁めいたものが沸いてきた気がした。

JBBA NEWS 2009年9月号より転載
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