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第204回 『ザ・ロイヤルファミリー』

2025.12.25

 10月12日から「ザ・ロイヤルファミリー」の放送が始まった。本稿執筆時点で7話まで放送されているが、日本中央競馬会の全面協力のもと、多くの競馬関係者、競馬関係団体、企業を巻き込み、ある種“祭り”のようになっていた。放送が始まり今はひと段落して落ち着いた感じだ。


 原作は早見和真さんが書かれた小説で、2019年度のJRA賞馬事文化賞と第33回山本周五郎賞を受賞している。


 馬事文化賞を受賞した時に原作を読んでしまったので、話の筋はネタバレしないようにしているが、ドラマが始まってからは毎週楽しく観ている。


 といっても、筆者の場合日曜日の21時~はだいたい競馬場か会社かグリーンチャンネル終わりに一杯飲んで帰ってくる感じなので、なかなか放送時間までには戻れず、その日の帰宅後か、翌朝の通勤時に配信で観ることがほとんどだ。


 エンドロールにある通り、弊紙も美術協力としていっちょ噛んでいて、新潟版や東京版、中山版を提供した。弊紙がドラマやバラエティ、配信などに協力することは度々あるが、基本は営業部が担当し、新聞は買い取りでお願いしている。


 ただなぜか日曜劇場だけは専任の担当者がいて、他とは別に対応している。以前「ブラックペアン2」にも協力していて、田中みな実さんに差し出されるシーンに使っていただいた。


 今回はそこまでの露出ではないが、競馬場の景色としてお役に立てたのではないだろうか。


 協力する際は基本的な決め、というよりお願いをしている。「破らない」とか「尻に敷かない」等のようなものだが、演出上必要であればその限りではないみたいに、ある程度幅を持たせている。


 新聞が露出したからと言って売り上げが上がるようなことは、経験上ほとんどないのだが、今回は以前から付き合いのある日曜劇場で、しかも業界総出のお祭りのようなものでもあるから、担当者もふたつ返事で美術協力を受けたようだ。


 なんだかんだで、放送が始まってからは弊紙が映ってないか探してしまうし、広報担当者も大喜びでアピールする。それはどこの企業でも一緒のようだ。


 視聴率的には10%台だが、サンプルで10人に1人と思えばかなり観てもらえているのではないだろうか。競馬の部分だけでなく、本筋であるドラマの部分も登場人物の描写が素晴らしい。


 面白いなと思ったのは競馬関係者、競馬ファンの反応だ。出てきた馬の名前、レースシーンのもとになるレースなど、SNSを観ていると即座に特定されている。よくレースを観ているなあと思う。


 また馬主さん達は「勝ったらすぐ口取りに降りろ」とか、ドラマの演出の部分と、実際の動きの違いなどが興味深い。あくまでそこはドラマだ。自らが関わっている業界の話は、演出やフィクションが気になるのは仕方ない。刑事ドラマなど特にそうで、剣道仲間の警察官も「所轄の捜査官が被疑者を、特殊車両を以って追跡し、ショットガンで応戦するのはありえない」と笑って言う。あくまでそこはフィクション含みである。


 日曜劇場は内容によって本物が出演することも度々ある。たとえば2019年に放送された「ノーサイド・ゲーム」では元ラグビー選手が出演している。代表経験もある本物だ。「ザ・ロイヤルファミリー」でも本物が多数出演している。おそらくJBBA会員の方も出演されている方がいるのではないかと思うし、筆者の知人、友人も出演している。それがまた楽しい反面、人探しのようになって、話の内容が頭に入ってこないときもある。


 ドラマはドラマとして楽しまなければならないのだが、たとえば岩手の騎手が中央に移籍するとなると「こりゃ大変だぞ」とか思ってしまう。結局、自分たちのいる業界の世界観からなかなか離れられない。


 医療従事者のうちの奥さんは、入院している愛人の方のシーンを観て「CV入れてるね。あんまり長くないかもね」とか言う。「それなに?」と聞くと、「抗がん剤じゃない?」とか言う。「へ~」という感想しか出なかったが、逆に言うとおそらく競馬に興味がない視聴者は、そういう感じなのだろう。


 小説はそのあたりの取材をきちっとされているようで、我々の知っている世界観が再現されているのだが、ドラマは映像を使った感情表現や没入感が大事なので、いい意味でのデフォルメは必要なのだろうと思う。


 ドラマはいよいよ物語の主題である「継承」の段階に入った。まだまだこの後も「ドラマ」があるので、続きが楽しみだ。

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