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第135回 『ミシェル狂想曲』

2020.03.26
 「ミカエル・ミシェル騎手が南関東で短期免許を取得するらしいよ」という噂を聞いたのが、記憶が定かならば昨年末。媒体に掲載されたのが12月31日の日刊スポーツネット版。
 ミカエル・ミシェル騎手と言えば、2019年のワールドオールスタージョッキーズに出場し、第3戦でスワーヴアラミスに騎乗し、勝利を挙げたこと。シリーズ3位タイの成績を挙げたことぐらいは知っていたし、11月頃に翌年JRAの騎手免許試験の受験を希望している、という記事が出ていたことぐらいは知っていたが、地方の短期免許を取得すると聞いて正直「へぇ~」ぐらいの感想しかなかった。

 実際、各国、各地域のリーディング上位を求めているJRAの基準ほど厳しくはないが、地方競馬での短期免許取得条件も
 (1)通算250勝以上
 (2)重賞やJRAで実績があること
となかなか厳しい(取得条件は昨年時点)。
 
 成績を調べてみると、主にフランス等で通算1,473戦115勝、2018年のシーズンにフランスで72勝を挙げリーディング12位となり、フランス歴代女性騎手の年間最多勝記録を更新、とある。

 札幌での騎乗を見ても、決して「イロモノ」ではないことは分かるが、しかし基準が...、と思ったら、どうやら基準を変えたらしい。いつどのように改正したかは定かではないが、1月24日、地方競馬全国協会から地方競馬の短期免許交付が発表された。川崎の山崎裕也厩舎に所属、期間は1月27日から3月31日まで。

 短期騎乗初日の1月27日。常駐している我々「年パス組」の他に22社40人の取材陣と、3,416人のファンが川崎競馬場に来場し、ミシェル騎手のそれこそ一挙一動に視線が注がれた。

 「デビュー戦」となった5Rは単勝6番人気のヨイチビームに騎乗。スタートで出遅れ、集団外目後方を追走も見せ場なく11着。この日は5鞍に騎乗し、8Rではハナを切って見せ場十分の2着に来るなど、0勝、2着1回、3着2回、着外2回の成績。スタートはそれほど上手ではないが、ガッチリハミを掛けて、外目をまくって行って、バテても最後までしっかり追う姿が印象に残った。

 「割とファイタータイプだなぁ~」なんて思って成績を調べてみると、2014年3月にサンガルミエ競馬場でデビューし、初勝利は9月にヴズール競馬場で。その後2年間0勝だったのは、落馬による負傷で、1年半の休養があったからと。

 2017年にシャンティイに拠点を移し、元騎手のフレデリック・スパニュ氏がエージェントになると、それまで3年で47鞍だった騎乗数が、17~18年のシーズンには718鞍に増え、また、女性騎手の減量特典も後押しし17年17勝、18年72勝。2018年のカーニュシュルメール競馬場の冬開催ではスミヨン、ブドー、ギュイヨンといったフランスを代表する騎手を抑え、女性騎手、見習い騎手として初の開催リーディングとなった。

 騎乗後に裏の方でスパニュ氏と騎乗についてガンガン意見を戦わせているし、気が強いというか、本当の彼女は、やはりファイターだ。

 南関東初勝利は1月29日、川崎記念当日の5Rで、1番人気のベルロビンに騎乗し、逃げ馬の2番手集団から早めに抜け出し快勝。囲みの取材でも、とても嬉しそうにしていた。

 その模様は一般のニュース番組でも取り上げられていたが、競馬に関する質問部分はカットで「相撲や野球も観戦してみたいし、色々な日本食も食べてみたい」というような競馬以外の方が多く報道されていて、関係者もちょっとイライラモードだったり、「初納豆に挑戦」の動画再生回数が2万回を超えたり、騎乗させた馬主さんが、レース後一緒に写真を撮ってSNSにアップするのが流行ったり、お祭り騒ぎは当分収まりそうもない。

 一方で、初勝利を挙げた川崎記念当日は入場1万433人、売上26億5,400万2,640円(SPAT4LOTO含む)のレコード。開催全体でも75億447万6,520円(SPAT4LOTO含む)を売り上げた。2月11日の船橋開催では、場内の新聞が売り切れる(何年振りだろう、しかも2月に)など、日程など複合的な要素があるにせよ、我々もその恩恵に預かっている事は否定できない。

 本稿執筆時点で13勝。大井開催は苦戦したが、船橋、浦和は積極的な騎乗スタイルが合うのか、それぞれ5勝を挙げている。

 この騒ぎ、終わらないで欲しいと思う今日この頃なのである。

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