馬ミシュラン
第160回 『馬七人三』
2022.04.25
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「馬七人三」。昔から言われている有名な競馬の金言だ。競馬の結果を左右するのは、馬の能力が7割、人(騎手)が3割というもの。人によっては「馬八人二」と言うし、逆に「馬六人四」と言う人もいる。
そこまでいくと「競馬の結果を左右する」というよりも、単に個人の予想の比重ではないかとも思うが、例えば昨年の地方競馬最多騎乗数の森泰斗騎手は年間1,493回騎乗し、勝率24.3%、連対率42.3%だったが、昨年363勝中、1番人気が238勝で、勝ち星の65.5%が1番人気。5番人気までだと356勝で、98%だった。
「な~んだ、人気でしか勝てないじゃない」と思うかもしれないが、1年間ゲラを見て予想していると体感として感じるが、近走成績不振の馬でも勝っている。森騎手が乗ると人気になるから、数字としてはそういうイメージになるのだ。
当たり前の事だが、リーディング下位から上位への乗り替わりは馬券戦略の鉄則で、そういう意味では「馬六人四」も間違いではないが、やはりそれは予想の上での話だろう。とはいえ、騎手が変わって馬が動いたレースも沢山見てきているから、比率はともかく、競馬の結果を左右する要素であることは確かだろう。
3月に「これはジョッキーの腕だな」と思ったレースが2つあった。ひとつは3月16日の高知競馬4R「黒船賞」。
注文通り一昨年の勝ち馬ラプタスが逃げ、2番手ヘリオス、続いてサクセスエナジーとイグナイター。人気上位が前々で競馬。最初の200mは24秒と、重、不良だった昨年、一昨年の22秒台に比べれば緩いペースだが、勝ちタイムが1分30秒3だったことを考えれば、平均と言える。
今年の冬の高知競馬は中継の解説をしていても、雨が少なく、良馬場で行われる日が多かった。その影響もあってか、砂が深く時計がかかる馬場で、全般的に逃げ、先行での決着が多かった。
イグナイターはまずまずのスタートだったが、無理に行かずイン3番手グループ。勝負所でやや早めに仕掛けて先頭に立つと、外に持ち出した。
JRA勢が例年よりも深い馬場に苦しむ中、39.0の上りで2着ヘリオスに1馬身の差を付ける完勝だったのは、最後外に持ち出した点。
「前走の勝利で自信がついたので、勝負に行った。道中の手応えも抜群で抜け出すのが早かったが、我慢していればもっと楽に勝てたかも」と田中学騎手。前哨戦の黒潮スプリンターズカップを使い、1度馬場を経験させていたのも大きかった。
昨年のJBCクラシックに勝ったミューチャリーも、前哨戦の白山大賞典を使いに行くなど入念な準備が結果に繋がったと言えるが、ジョッキーが自信を持って勝利に導いた。
もうひとつは3月17日浦和11Rの桜花賞。
来年から1500mに距離短縮されるため、1600mで行われる最後の桜花賞。浦和1600mと言えば圧倒的な外枠不利が有名で、エーデルワイス賞、東京2歳優駿牝馬に勝ったスピーディキックの大外11番枠が発表され、正直頭を悩ませた。
大外枠の勝利は、資料のある昭和40年以降で1978年のエースライン(10番人気)、1979年のシヤドウ(6番人気)、2010年のショウリダバンザイ(3番人気)の3頭。また、大外枠の1番人気は1968年のエキスプレスが7着、1996年のハヤテシラーズが2着と、勝ち馬がいない。まさに「鬼門」である。あるとすればスタートで目一杯行ってハナを奪うか...。
注目のスタート。スピーディキックは半馬身弱遅れ気味で、最初の4コーナーは最後方の外。そこから1頭抜いて9番手、さらに競走を中止した馬を抜き、向正面でジワジワ位置取りを上げていくと、今度は3コーナー手前からインコースに入り、先頭集団の直後5番手まで迫る。3~4コーナーの勝負所で今度は外に持ち出し、前4頭がごちゃついたところをすり抜けて一気に抜け出し、2着に2馬身の差を付けて勝利した。
「外枠でプランが決まらず、スタートも良くなくて、腹をくくってあの位置取りになった。」と御神本騎手。
実績からも馬が強いのは間違いないのだが、パサパサに乾いて開催初日から逃げ、先行有利が明らかな馬場で、外→内→外と自在なコース取りは、これはもうジョッキーの腕としか言いようがないだろう。
結論として人馬の比率なんてさっぱりわからないのだが、綺麗にまとめるとしたら、馬の力=10をどれだけ引き出せるかが騎手、なんだと思う。
そこまでいくと「競馬の結果を左右する」というよりも、単に個人の予想の比重ではないかとも思うが、例えば昨年の地方競馬最多騎乗数の森泰斗騎手は年間1,493回騎乗し、勝率24.3%、連対率42.3%だったが、昨年363勝中、1番人気が238勝で、勝ち星の65.5%が1番人気。5番人気までだと356勝で、98%だった。
「な~んだ、人気でしか勝てないじゃない」と思うかもしれないが、1年間ゲラを見て予想していると体感として感じるが、近走成績不振の馬でも勝っている。森騎手が乗ると人気になるから、数字としてはそういうイメージになるのだ。
当たり前の事だが、リーディング下位から上位への乗り替わりは馬券戦略の鉄則で、そういう意味では「馬六人四」も間違いではないが、やはりそれは予想の上での話だろう。とはいえ、騎手が変わって馬が動いたレースも沢山見てきているから、比率はともかく、競馬の結果を左右する要素であることは確かだろう。
3月に「これはジョッキーの腕だな」と思ったレースが2つあった。ひとつは3月16日の高知競馬4R「黒船賞」。
注文通り一昨年の勝ち馬ラプタスが逃げ、2番手ヘリオス、続いてサクセスエナジーとイグナイター。人気上位が前々で競馬。最初の200mは24秒と、重、不良だった昨年、一昨年の22秒台に比べれば緩いペースだが、勝ちタイムが1分30秒3だったことを考えれば、平均と言える。
今年の冬の高知競馬は中継の解説をしていても、雨が少なく、良馬場で行われる日が多かった。その影響もあってか、砂が深く時計がかかる馬場で、全般的に逃げ、先行での決着が多かった。
イグナイターはまずまずのスタートだったが、無理に行かずイン3番手グループ。勝負所でやや早めに仕掛けて先頭に立つと、外に持ち出した。
JRA勢が例年よりも深い馬場に苦しむ中、39.0の上りで2着ヘリオスに1馬身の差を付ける完勝だったのは、最後外に持ち出した点。
「前走の勝利で自信がついたので、勝負に行った。道中の手応えも抜群で抜け出すのが早かったが、我慢していればもっと楽に勝てたかも」と田中学騎手。前哨戦の黒潮スプリンターズカップを使い、1度馬場を経験させていたのも大きかった。
昨年のJBCクラシックに勝ったミューチャリーも、前哨戦の白山大賞典を使いに行くなど入念な準備が結果に繋がったと言えるが、ジョッキーが自信を持って勝利に導いた。
もうひとつは3月17日浦和11Rの桜花賞。
来年から1500mに距離短縮されるため、1600mで行われる最後の桜花賞。浦和1600mと言えば圧倒的な外枠不利が有名で、エーデルワイス賞、東京2歳優駿牝馬に勝ったスピーディキックの大外11番枠が発表され、正直頭を悩ませた。
大外枠の勝利は、資料のある昭和40年以降で1978年のエースライン(10番人気)、1979年のシヤドウ(6番人気)、2010年のショウリダバンザイ(3番人気)の3頭。また、大外枠の1番人気は1968年のエキスプレスが7着、1996年のハヤテシラーズが2着と、勝ち馬がいない。まさに「鬼門」である。あるとすればスタートで目一杯行ってハナを奪うか...。
注目のスタート。スピーディキックは半馬身弱遅れ気味で、最初の4コーナーは最後方の外。そこから1頭抜いて9番手、さらに競走を中止した馬を抜き、向正面でジワジワ位置取りを上げていくと、今度は3コーナー手前からインコースに入り、先頭集団の直後5番手まで迫る。3~4コーナーの勝負所で今度は外に持ち出し、前4頭がごちゃついたところをすり抜けて一気に抜け出し、2着に2馬身の差を付けて勝利した。
「外枠でプランが決まらず、スタートも良くなくて、腹をくくってあの位置取りになった。」と御神本騎手。
実績からも馬が強いのは間違いないのだが、パサパサに乾いて開催初日から逃げ、先行有利が明らかな馬場で、外→内→外と自在なコース取りは、これはもうジョッキーの腕としか言いようがないだろう。
結論として人馬の比率なんてさっぱりわからないのだが、綺麗にまとめるとしたら、馬の力=10をどれだけ引き出せるかが騎手、なんだと思う。