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第1回 ITと競馬と私

2009.01.01
 はじめまして。日刊競馬の小山内です。南関東版の編集部で,主に新聞の編集と,レースの写真撮影等を担当しております。以前,グリーンチャンネルの全国競馬便りという番組で解説をさせて頂いておりました。「アイツか!」という方もいらっしゃるかもしれませんが,引き続きお付き合いのほど,よろしくお願いいたします。
 さて,今回はわれわれの業界の話。「失われた10年」という言葉がある。いわゆる平成不況のことだが,われわれ競馬,特に地方競馬の世界は平成3年をピークに,そこから17年間失われっぱなしといっても過言ではない。

 平成13年に中津競馬廃止。それ以降,次々と競馬場が廃止されたのはご存知の事かと思う。また,同年3月にはケイシュウの中央版が休刊,時を隔て昨年,ホースニュース馬が休刊となった。実はその前後にもグリグリ◎や,競馬サイエンス等も休刊に追い込まれている。

 皮肉なことに,上記の平成不況は,平成14年頃のITバブルをもって終了したことになっている。このIT時代の到来は「第3次産業革命(情報通信革命)」の仕上げとも言われ,われわれ印刷出版業を葬り去ろうとしている。

 「皆さんは馬券を買う時,何を見て,どこでどういう手段で買っていますか?」

 弊社新規採用の会社説明会で,毎年われわれの方から問う質問である。採用に携わって今年で5年になるが,環境が急速に変化していることを感じざるを得ない。

 4年前だから平成17年。競馬法改正により成人していれば学生も馬券が買えるようになった年。競馬場や場外で,専門紙,日刊紙,夕刊紙を使っていると答えた方が多かった。既卒者は仕事中にPAT,SPAT4などを,というのが大半。

 3年前の平成18年。新卒を中心に携帯電話でPAT,SPAT4などを利用する方が増えた。日刊紙,夕刊紙の割り合いが増え,専門紙は減った。この年は地方の志望者が多く,その殆どは競馬場に行くと答えてくれた。

 2年前の平成19年。なぜか競馬場,場外が増えた。ただし,予想はレーシングプログラムや,JRA,NARのホームページをプリントして,という答えも見られるようになった。紙媒体とネット媒体の割り合いが逆転した年でもあった。

 そして平成20年。競馬場,場外が多い。ディープインパクトが引退してからも競馬場に通っているのか。予想は携帯サイトで,という答えが増殖した。手ぶらで競馬場へ行くらしい。さらに驚くのは,場内に居ながら携帯で買うという。

 理由を聞くと,まず金銭的な面が1番,次に予想だけあれば良いという答え。同様に,ホームページの馬柱と,携帯サイトの予想という組合せが多く見られた。それでよく専門紙記者を目指すなあ,と思うが,さすがに突っ込んでも,先方はただ返答に困っているだけだ。

 余談だが,「麻雀する?」と聞いたら,パソコンではやるが,卓を囲んだことは1度もない,と答えた青年がいた。同僚とともに思わず仰 け反ったが,競馬にしろ,麻雀にしろ,遂にそういう世代が現れたか,と思う。ただ,競馬場,場外には1度も行ったことがない,という人はさすがにいなかった。正直ホッとした。

 今やネットでG1のコメントぐらいはタダで読めるし,柱もタダ。酷い場合には新聞の記事を丸写ししてまとめているサイトもある。しかも便利だ。「われわれはトレセン,競馬場に記者を出している。誰かが現場で取材しなければならないし,一次情報を持っていることは,大きな力になる」と,会社説明会では必ず言う。が,新聞以外にその力を活用できていないもの事実。ネット企業から「情報提供」の話があっても,出し惜しみ(売り渋り?)しているのが実情だ。

 アメリカの新聞では,過去記事検索までフリーにし,広告で賄うビジネスモデルに転換したところも出てきた。われわれにも近い将来,その考えを改めなければならない日がきっと来るだろう。


JBBA NEWS 2009年1月号より転載
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