馬ミシュラン
第180回 『JBC当日』
2023年のJBCは我らがホーム・大井競馬場(JBC2歳優駿は門別競馬場)で開催された。
大井競馬場では2020年以来3年ぶりで、今回が9回目。さすがに9回目ともなると競馬場も、我々出入り業者も慣れた手付きでテキパキと準備を進める。
戦前の注目は開催前に入れ替えられた「白い砂」だ。2010年代の終わりから、六ヶ所産海砂の枯渇が言われてきた。大井競馬場でも東通村産海砂、つがる市産海砂、つがる市・六ヶ所村産海砂(洗浄砂)と東通村産海砂(新砂)の混合砂と入れ替えられてきた。
大井競馬場は開催数が多く、厩舎も併設しており日々の調教にも馬場を使用しているため、砂の減りがどうしても早い。減った砂はシルトとなり、沈殿し、固まって馬場悪化の原因になる。今回導入したオーストラリア・アルバニーの白い砂は、シリカを多く含んでおり、硬度が高い。
先に導入している船橋競馬場でじっくり見てきたが、ほぼガラス(石英)だ。今回大井競馬場では、アルバニーの砂導入に併せ、砂厚を8センチから10センチに変更した。おそらく硬度の高さ故に、これまでと同様の砂厚だとタイムが速くなってしまうからだと思われる。
注目の走破タイムは、初日のC1クラスで1200m(やや重)15秒台、2日目のB1B2混合の1200m(良馬場)13秒台だから、前開催に比べだいたい1秒から1秒半時計がかかるぐらい。春先の一番速かった頃に比べると2〜3秒かかるぐらいといったところか。
当日のネットなどの予想コラムなどでは「白い砂」に注目するものが多く見られた。結果的にはJBCレディスクラシックに勝ったアイコンテーラーや、JBCクラシックに勝ったキングズソードのような地方競馬初出走組が勝っているし、JBCスプリントに勝ったイグナイターにしても、同じ砂だが深い船橋よりも、時計が出やすい盛岡で好走しているように、軽めの作りとでも言ったらいいか、そういった味付けの馬場ではないかと思う。
新聞を作っている段階でも、編集部内であーでもない、こーでもないと言いながら皆で馬場の傾向を探っていて、ほぼ正解に辿り着いていたのだが、JBCはいずれも人気上位の決着で当たっているんだけれど儲からない感じで終わった。
JBC当日はひとつミーティングを抱えていたので早めに会社を出て大井へ。そのミーティング自体は流れたのだが、別の揉め事を聞かされ。いずれも競馬場とは全く関係ない話なので安心していただきたいのだが、やはりJBCともなると様々な人の思惑が絡み合う。
各所に挨拶回りしてから定位置のゴール前に着くと、JBCレディスクラシックに出走するライオットガールに騎乗する予定だった岩田望来騎手が、前検量に間に合わず乗り替わりとの報が。新幹線自体も遅れておりタッチの差だったようで、JBCスプリントのダンシングプリンスには騎乗可能。ただそのダンシングプリンスもスタートで躓き、競走中止に。
砂を入れ替えたばかりで馴染んでいなかったことと、元々大井の1200m、2000mの15、16番枠あたりは使われる頻度が少ないので滑りやすいと言われている。1979年にスティーヴ・コーゼン騎手が大井競馬場で騎乗した最初のレースでスタート直後に落馬している。外枠ではなかったが当時滑りやすい馬場で、確か赤間清松元調教師だったと思うが、落馬を予言していたという話を思い出した。
JBCレディスクラシックは道中2番手から早め先頭に立ち押し切ったアイコンテーラーが勝利。当日の馬場を鑑みるに、これがベストのレースで、2着グランブリッジは位置取りが後ろだった。
JBCスプリントも2番手外を進んだイグナイターが粘った。2着リメイクは前が壁になり直線大外に持ち出し37秒0の脚で伸びたが、届かなかった。
JBCクラシックは2番手外のテーオーケインズが◎で、3〜4コーナーでは「もらった!」と思ったら直線に入ってもたれて伸びを欠き、外3番手を進んだキングズソードが勝利。位置取り、レース運びはさすがモレイラ騎手。
JBC2歳優駿はフォーエバーヤング。新馬戦も強かったが、この日も強さを見せつけられた。
大井本場入場は2万4,506人。主催者目標には届かなかったが、それなりに賑わっていた。売上は大井1日で78億7,555万3,780円。3連休初日、金曜日開催と好条件と言えない中では大健闘と言えそうだ。