馬ミシュラン
第195回 『季節外れの採用活動』
以前にも書いたが、筆者は株式会社日刊競馬新聞社の人事を兼任している。人事と言ってもほとんどワーキングローテーションのない弊社だけに、主に採用が中心である。
採用に関わっている期間は長い。はじまりは入社3年目だから27年ほど前にさかのぼる。当時採用を担当していた上司の応募書類整理係に任命?されてからだ。
その上司は個人情報保護が叫ばれる昨今ではありえないぐらい管理が杜撰で、提出していただいた応募書類をポイっと机の上に積みっぱなし。紛失したわけではなく、会社の机の上のどこかに積まれてあるのだが、ゲラや書籍等々でうず高く積みあがったその「地層」から探し出すのは至難の業だった。当然必要な時にすぐ出てこないから、その都度コピーする。最悪である。
さらに缶コーヒーなんかもこぼしちゃったりして、ペリペリになった紙類とともに積まれていた。それで管理するよう頼まれたのが最初である。在籍中の社員で言うと、美浦の久保木TMの世代からである。
管理といっても提出された応募書類や筆記試験等の原本をファイルして保管し、必要な時に渡すだけなのだが、たまに所見を聞かされたり、逆にたずねられたりするので、その頃から「やり方」は教わっていたような感じではあった。
その上司が退職された際、大量の残置物があったので整理していると、自分たちの次の世代からの採用関連書類が大量に発掘された。予想はしていたがやはりそこにあった。その時在籍していた社員本人には返還し、採用に至らなかった方や、退職した方の書類は適切に処理した。
その後、次の担当者の時は一時離れ、さらにその次にあたる前の担当者の時はサブに。そしてその担当者の退職以降、筆者が担当している。またコロナ以降、弊社の印刷部門である三平印刷所の採用も代行するようになった。
この業界、記者の採用に関しては、人を集めて選ぶこと自体そう難しい事ではない。「競馬記者」になりたい人は沢山いるので、応募者の中からある程度は選び放題ではある。
難しいのは制作、印刷、営業(販売)などの業務系である。競馬専門紙は記者だけで成り立っているわけではなく、制作部門や印刷部門がなければ新聞制作は出来ないし、営業部門がなければ伝票発行や配送、売上の集金もできないから、この会社自体を支えている存在である。
「日刊競馬新聞社 社員募集!」と求人を出せば、100人中ほぼ100人が「記者やりたいです、中央競馬担当したいです、美浦行きたいです」という応募者ばかりである。編集・記者職については筆記試験があり、そこで大差がつくから選ぶこと自体はそれほど難しくはない。
制作部門もDTPなら選び放題だし、営業部門も比較的集まりやすい。毎度苦戦するのは印刷部門である。これは本来筆者の担当ではないのだが、前任者がいなくなってから代行している。
これまで4人ほど採用しているが、振り返ればいずれも「偶然の出会い」のようなもので、採用活動中は苦しい戦いである。印刷オペレーターの転職エージェントもあり、1度依頼してみたのだが、集められなかったようで担当者が逃亡(驚)。
印刷の分野はパッケージや、最近ではプラスチック、シール等盛況なのだが、どうも新聞印刷は人気がない。経験者優遇も、扱っている機械の違いでスキルも様々だ。さらに定着率を上げることや、年齢や経験のバランスを整える必要があるなど、専門外なだけに難しいことばかりである。
現在記者と印刷オペレーターの中途採用活動中だ。あるトラックマン経験者の一本釣りに失敗し、未経験者中心もそちらはあっという間に応募者が集まり早々に求人をクローズ、選考に入っているが、印刷部門はいつも通り苦戦している。
時季的にも暮れのボーナスを貰って転職したばかりの人が多く動きが悪い。またどこの会社も新卒採用に注力していて、正直時季が悪い。そうこうしているうちに昨年の定期採用で採用した新入社員が入社してきて初期研修が始まり、26年卒対象の定期採用もスタート。
かつて応募書類整理係をやっていた頃と異なり、常に何かしらの採用活動を行っているような気がする。採用のコンサルさんにも言われたが、それだけ人材の流動性が高いのだろう。
この後、筆者も含め活字から電算に移行した時期に大量採用した世代、そして団塊ジュニア世代が定年に達する。延長もあるが、当分採用活動が続きそうな予感がして怖い。