馬ミシュラン
第194回 『優秀馬選定委員会』
1月9日、地方競馬全国協会において、NAR GRANDPRIX2024優秀馬選定委員会が行われた。
昨年の優秀馬選定委員会の翌日に引っ越しした地方競馬全国協会本部に2度目の入館。最近建てられたオフィスビルはどこもそうだが、入館するのが面倒だ。JRA本部も近くに来たからちょっと新聞協会の事務局に寄って行こうと思っても、事前に申請しておかなければ入れない。地方競馬全国協会もそうなってしまった。
とはいえ、本当に大事な用事があって訪れるのはせいぜい年に1〜2回で、ほとんどは電話かメールで済んでしまうから、実はそんなには困らないとも言える。
さて、今年も選定委員の末席に加えていただいたので、印象に残った部門を中心に振り返っていきたい。
まず今年の結果であるが、ダートグレード競走勝ち馬がいる部門は、全てその勝ち馬で決している。その中で3歳最優秀牡馬部門については、投票結果がサントノーレとシンメデージーがそれぞれ7票と割れ、規定により委員長裁定でサントノーレに決した。
サントノーレについてはJpnⅡの京浜盃に勝ち、羽田盃、東京ダービーは故障により出走できず。9月の戸塚記念で復帰し勝利。ジャパンダートクラシックは7着という結果に。
一方のシンメデージーはダートグレード競走勝ちこそなかったが、東京ダービー、ジャパンダートクラシックでいずれも地方競馬所属馬最先着となる4、5着と健闘し印象に残る成績を残した。
筆者は原理主義者なので、ダートグレード競走勝ち馬がいればその馬を選ぶのが筋と考えるが、シンメデージーはそれを上回るインパクトを与えたと考えるのは、新ダート三冠競走を観戦したものならば当然そう考えても不思議ではない。
実は会議の前日に「選定要件等」の文書を何度も読み直したが、そこには「指定した競走の1着馬等〜」と書かれてあり、必ずしも勝利はマストではないのである。
議論自体は侃侃諤諤、というわけでもなくそれぞれの推挙する理由を述べ、挙手による採決を取ったら同数となり一同「お〜」という感じだった。何年かに1度委員長裁定の場面が訪れるが、今年のような展開になると、委員長もかなり緊張されたのではないかと思う。
牝馬部門については2歳、3歳、4歳以上いずれもダートグレード競走の勝ち馬がいなかった。
2歳最優秀牝馬部門は、年末段階でエーデルワイス賞2着のエイシンマジョリカか、門別で重賞3勝のゼロアワーあたりで、大晦日の東京2歳優駿牝馬での直接対決次第だろうと予想していたが、そのレースを制したのがプラウドフレール。直接対決の結果、受賞となった。
3歳最優秀牝馬部門は更に決め手を欠いた。関東オークス2着のミスカッレーラは年間未勝利。桜花賞馬プリンセスアリー、東京プリンセス賞馬フェルディナンド、そしてそれらが一同に会したロジータ記念の勝ち馬ローリエフレイバー。
筆者が口火役に指名されてしまったので、北海道のポルラノーチェも含め前述の候補馬の直接対決を比較した結果、年間を通して安定して走り、決定戦となったロジータ記念の結果からローリエフレイバーが相応しいであろうと推薦した。
プリンセスアリーも年間を通して活躍したし、グラインドアウトもロジータ記念大敗がなければ選ばれても不思議ではなかった。
4歳以上最優秀牝馬部門のキャリックアリードは9月の秋桜賞1勝のみだが、昨年のスピーディキック同様、ダートグレード競走に挑み続けた結果で、スパーキングレディーC2着など優秀な成績を残したと言える。これは文句なしだろう。
短距離部門はダートグレード競走勝ち馬に加え、ドバイゴールデンシャヒーン5着、さきたま杯2着のイグナイターを加え議論となったが、決め手は同斤だったJBCスプリントの直接対決の結果が評価され、アラジンバローズが選ばれた。
今年はすんなり決まった部門が多かった反面、決め手を欠く、あるいは甲乙つけ難い部門もあり難航したが、前述の通りダートグレード競走勝ち馬が存在する部門は、その馬が選定されている。
一方でシンメデージーやイグナイター、キャリックアリードのようにダートグレード競走の勝ち鞍はないが、高いレベルで常に健闘した馬が選定されたり、有力な候補に挙げられたことは、総じて昨年の地方所属馬のレベルアップを感じる。
最後に、受賞馬の関係者の皆様、受賞おめでとうございます。更なるご活躍を祈念しております。