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第200回 『珍事』

2025.08.26

【珍事】1.珍しいこと 2.思いがけぬ出来事、重大事(広辞苑第二版より)
 

 7月1日の夕方、ミーティングを終えて編集部へ戻ってきたら、「小山内さん、大変なことが起きました」と編集部S氏が言う。


 「何が起きたの?」と聞くと、ゲートが引き込めずに黄旗が振られたという。レース中に黄旗が振られたということは不成立になるだろうなあ、と思いつつ競馬場の放送を待っていると、やはり不成立の旨お知らせがあった。


 これは珍事である。


 ざっくり概要をお伝えすると、7月1日、5回大井競馬2日の第6競走において、発走と同時に2枠2番オールエクシードが枠内で立ち上がり、後ろ向きに転倒。後ろ扉が開けられ馬をゲートから出そうと試みたがゲート内で引っ掛かっていたようで外に出すことが出来ず。


 ゲートを引き込むことができないままレースは進み、先頭が内回りコースの3コーナー付近に到達した頃、走路付近にいた係員が黄旗を振りレース中の騎手に知らせると、各馬スピードを落として回避。落馬や激突などがなかったのは不幸中の幸いだった。


 同様の案件でのレース不成立は1998年10月18日の高崎競馬6R以来27年ぶり。また、大井競馬場でのレース不成立は1990年4月8日6R以来35年ぶりとのこと。


 真っ先に思い浮かべたのは、2000年の皐月賞。1枠1番のラガーレグルスがゲートが開くと同時に立ち上がり、そのまま枠内で転倒。


 たまたま競馬場でレースを観ていたのだが、その時は後ろ扉を開けたらポンという感じでラガーレグルスが外に出てきてゲートを引き込むことが出来た。もし、今回と同じように枠内で身動きが取れなくなっていたら、レースがレースだけに、おそらく珍事というよりは、いろんな意味で大惨事になっていたかもしれない。


 そして翌週の川崎競馬。4回川崎競馬4日の第8競走、バカラ賞で2着が3頭同着という、これまた珍事が発生した。


 レースは1番人気のピッツァナポリがスタートからダッシュよく飛び出し、突きに来たアステローペを振り切りそのまま逃げ切り勝ち。注目の2着争いは勝ち馬の通った道を伸びてきた10番クレテイユ、勝負どころで外に持ち出した11番ブレーヴジャーニー、そして大外を伸びた5番エーステンペストが並んでゴール。最内で粘ったフィラメントも並んでいたが、これはアタマ差で5着だった。


 写真判定が長かった。18:30発走だったが、19:05発走予定の9R発売締切2分前の表示が出たぐらいにようやく確定したから、おおよそ30分くらいを要した。


 払戻金の画面も壮観だった。複勝4通り、枠複・普通馬複・枠単・馬単・三連複各3通り、ワイドと三連単は6通り。しかも三連複の1-10-11、1-5-10の組み合わせと、三連単が万馬券という結果。それもさることながら、2着3頭同着などのケースに対応できる払戻金画面がちゃんと仕込まれていたことに対して賞賛の声があったり、妙な雰囲気に包まれていた。


 実は筆者も払戻金画面がどこまで対応しているのか、ちょっと興味がありいくつかあたってみたが、本稿締切までに答えはたどり着けなかった。


 馬券対象が3頭同着になったケースは、地方競馬では2004年7月4日の高崎競馬6レースで1着3頭同着があり、川崎競馬でも1986年8月20日の6レース・新涼特別で1着3頭同着がある。


 中央競馬でも2020年11月23日、阪神競馬12レースで3着3頭同着。また、2012年10月20日、京都競馬11レースの室町ステークスで当時57年ぶりとなる3着3頭同着がある。この室町ステークスの3頭同着は、中央競馬で馬券の対象となった着順では史上初である。


 ちなみに、記録の裏が取れなかったため参考ではあるが、1933年4月28日の三芳競馬場(愛媛県)で行われた10頭立てのレースで1着4頭同着、半馬身差で5着3頭同着、さらに半馬身差で8着3頭同着というのがあったらしい。昭和8年だからチャートカメラもないし、おそらく目測によるものと思われる。


 時間がある時にでも地元の図書館へ行って、当時の地元紙を調べればおそらくは記事が見つかるのではないかと思う。勝馬投票券という言葉は既にあって、おそらく単勝のみ、あっても複勝まで。払戻金がいくらだったのかひじょうに気になるところだ。

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