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第197回 『コンテンツの行方』

2025.05.27

 近年あらゆるものがサブスクリプション(以下サブスク)で提供されている。筆者も主に音楽やパソコンのアプリケーションで利用しているし、この原稿を執筆しているワープロソフトもサブスクである。また逆の立場では、筆者が所属する日刊競馬で「日刊競馬アプリ」内のコンテンツをサブスクで提供している。


 サブスクのメリットは、利用者側では初期費用が安く、決済など手軽に始められて、必要がなくなったら手軽に解約できる点だろう。まれに解約が困難なもの(画像処理などで有名なところ)もあるが、概ねすんなりと解約できるのが特徴だ。


 提供側としては継続的な収入が得られる、継続型課金ビジネスである点だ。サブスクという言葉が世間一般に認知される前でも定期購読のような形態はあったが、スマホやパソコンが一般的になり、かつクレジットカードなどの決済方法と紐付けされて、ボタンひとつで入会、退会が手軽にできるようになり、一気に普及してきた。


 一方で、デジタルコンテンツに対する所有感に不安を覚えるユーザーも多いだろう。実はつい最近、筆者もある出来事に遭遇した。


 サブスクが一般的になる前は、コンテンツのダウンロード販売が主流だった。音楽や映画のデジタル販売をしているサイトで、あるグループのアルバムを購入した。10年ほど前の話だ。そして今年に入り、そのグループのサブスクが開始された。しかし、探してみたが筆者がかつて購入したアルバムが見つからない。サブスクの対象になっていなかったのだろう。


 久々に聴いてみたくなり、再ダウンロードしようと思ったのだが、探しても見つからないのである。ダウンロード販売のコンテンツは、1度購入すれば何度でもダウンロード出来るはずなのだが、サブスク開始と同時に消されたようだ。理由は分からないが、たまにそういう事がある。


 別の音楽グループの曲をダウンロードで購入したが、そのグループのメンバーが不祥事で逮捕され、一時期そのグループのコンテンツが購入、再ダウンロード出来なくなったことがあった。


 今は復活しているが、この時購入されたデジタルコンテンツは果たして所有と言えるのかどうか、少し疑問に思った。


 本やレコード、新聞なら捨てない限り現物が手元にあるのだが、デジタルコンテンツの場合デバイスの中にあり、たとえば容量の関係で消したり落としたりしたい場合、前述のように発売側でコントロールされてしまうのは不便である。


 一応購入した楽曲は再ダウンロード出来ると規約にあるが、サブスクの開始のような状況の変化や、あるいは不祥事などにより、提供の形態変更や一時的なものも含め販売中止になった場合、その権利は保護されるとは言い切れないようだ。


 ちなみに弊社で発売しているデジタルコンテンツは、サブスクのスマホアプリのデータは消費型で、予想情報などコンテンツは保持されない。またダウンロードタイプのネット版については、再ダウンロード可能で、調べてみたら発売当初からのものが今でも再ダウンロード可能であった。


 ただし、コピー防止の仕組みが将来的に変更された場合どうなるのかは、今のところ定かではないし、コピー防止のカギを発行するサーバーがなくなった場合は、おそらく代替のサーバーでも立てない限りは難しいかもしれない。


 また、新聞コンテンツのフォーマットはPDFで提供されているが、現在の主流のPDFがいつまで広く利用されているかはわからない。新しい形式のドキュメントフォーマットが将来必ず登場するだろう。その時どう対応するかは、その時になってみないとわからない。


 引っ越し作業中の友人から、つい最近、古い競馬のビデオを大量にもらった。しかし我が家には再生するビデオデッキはなく、会社のビデオデッキは、保存していた2台中、1台は久しぶりに電源を入れたら動かなかった。


 ふと我が家を見回したら、ビデオだけでなく、CDプレイヤーもなかった。それなのにCDは結構ある。かろうじてDVDやブルーレイディスクは再生可能であったが、子どもが小さかった頃撮影したDVテープはもはや再生できない。


 デジタルコンテンツばかり気にしていたが、実はそれ以前のコンテンツもいつの間にか再生することが出来なくなっていた。


 これまで新聞や書籍も、引っ越しする度に処分してきた。今思えば惜しい資料もあったが、かといって置く場所もないから困る。その点デジタルデータは便利ではあるのだが…。

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