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馬ミシュラン

小山内完友 馬ミシュラン

第7回 予感的中,予想不的中

 今年もダービーが終わった。ダービーは競馬ファンや競馬に関わる仕事をしている人間にとって大晦日のようなものだ。これが終わると気分的に「新年」を迎える。私の会社でも,ある者は北海道出張へと旅立ち,またある者は来年のダービーを目指しドラフトに勤しむ。われわれ,南関東の競馬に関わっている者にとって,東京ダービーもまた,大晦日だ。日本ダービーとは,いわば正月と旧正月のようなもの。厳密にはもう1冠,ジャパンダートダービー(Jpn1)を残してはいるが,なんとなく「ダービー」と言えば「東京ダービー」なのである。東京ダービーの風物詩,的場文男騎手は,今年も勝つことができなかった。お手馬ガイアボルトは羽田盃の後,成長を促すため放牧に。巡り巡ってディアテクノバトルに騎乗することになり,結果は最下位の16着だった。

 今年の東京ダービーは波乱の結末だった。勝ったのは8番人気のサイレントスタメン,2着は5番人気のブルーヒーロー。川崎・足立勝久厩舎のワン・ツー決着。人気の船橋・川島正行厩舎勢はナイキハイグレードが3着,ネフェルメモリーは4着に敗れた。

 さきほど「波乱」と書いた。結果的には確かに「波乱」ではあったが,われわれ新聞屋も「波乱」の演出にひと役買ってしまった気もしないではない。1,2着馬は羽田盃以外の路線からきた,別路線組。勝ったサイレントスタメンは2走前の京浜盃でナイキハイグレードと対戦し,1秒7差の7着に敗れている。単に展開が向かなかっただけなのだが,たったその1戦で「勝負付け」を済ませてしまった。この「決め付け」が後々予想に響く。

 ナイキハイグレードには嫌な「予感」もあった。ナイキハイグレードの母,ダイアモンドコアは2歳9月にデビューし,新馬戦2着し,2戦目に初勝利。その後東京3歳優駿牝馬を含む5連勝で浦和の桜花賞を制した。続く関東オークスは3着,東京プリンセス賞は6着に敗れ,夏場は休養に充てた。結果的にその後勝利することはなかったのだが,3歳暮れのロジータ記念3着,5歳春にマリーンカップで3着している。23戦5勝,うち重賞2勝で引退,繁殖入り。南関東の名牝である。

 初仔のナムラエルゲルージ(父ダンスインザダーク)と2番目のアドマイヤジョー(父アドマイヤベガ)は中央でデビュー。いずれも3歳デビューと遅く,クラシックとは無縁だった。

 3番目のテイクドリーム(父ジャングルポケット)は2歳の12月に川崎でデビューし,2戦目,3戦目を連勝。4戦目となる5月のエメラルドフラワー賞で3着と敗れ,クラシック路線には間に合わなかった。その後18か月の休みの後,C2クラスで2着している。その2つ下,06年に生まれたのがナイキハイグレードである。

 ナイキハイグレード自身は07年のセレクションセールで日本中央競馬会に購買され,日高育成牧場で育成。翌08年の千葉サラブレッド・セールに上場,購買され,船橋の川島正行厩舎に入厩している。初戦は準備運動中の故障で除外となり,1か月後の新馬戦でデビューし3着。その後の活躍はご存知の通りである。

 今の南関東クラシック路線になってからは,1600→1700→1800と,羽田盃まで100刻みに距離が延びるため,レース振りや終いの脚色をみれば,大体次走の見当が付く。距離適性にはさほど注意を払わないのだが,京浜盃がアタマ差,羽田盃がクビ差と最後詰められたのが気に掛かった。それで,兄のテイクドリームと母のダイアモンドコアの成績を眺めてみたら,どうもこの系統は1600前後に距離の壁がありそうな,あるいは,暖かくなるとダメそうな。何となくそんな気がしたのだ。「勘」ってやつですね。念のためアドマイヤジョーも調べたら,良績は寒い時季に集中している。7月に1勝しているが,C級17組なら度外視。ほぼ確信したのだが......。

 そこまで気付いていながら,結局◎はナイキハイグレード。ここ2戦追い詰めたシャレーストーンの回避で,予想が日和ってしまった。ナイキ・シャレーの後ろは,京浜盃4馬身,羽田盃5馬身。クラウンカップに勝ったサイレントスタメンは,京浜盃で1秒7差,怖いのはネフェルメモリーとモエレエターナルの牝馬2頭

 そして「予感」的中,「予想」不的中。私の東京ダービーは,静かに幕を閉じたのでした。

JBBA NEWS 2009年7月号より転載