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第81回 『在宅投票時代の競馬新聞』

2015.09.16
 上半期を終えた今年の競馬。中央競馬の売上げは1~3月の累計ではほぼ前年並みの100.4%と伸びが鈍ったかに思われたが、4月以降は開催日によっては5%以上の伸びをみせ、春のGⅠシーズンも11レース中7レースが前年を上回るなど、活況を呈した。
 地方競馬もIPAT発売の効果は相変わらず絶大だ。昨年は約334億円を売上げ、全体の8%強を占めたが、SPAT4やオッズパーク、楽天競馬を含めた在宅投票全体でも昨年が一昨年比120.6%と伸びをみせていた。今年も1~6月で前年比127.4%。約235億円の上積みがあった。

 一方でファンの'本場離れ'はやや鈍化してはいるものの、再び戻って来る気配は薄い。中央競馬は1~6月の上半期で142日間施行したが、総売上は前年比(144日)101.7%の約1兆3,031億9,579万円と、2日少ないことを考慮すれば上々。本場の入場人員は同100.8%の324万3,461人だった。大レースを中心に参加する'ライトファン'が増えた一方で、土曜日や大レースのない日曜日が伸び悩んで、相殺された格好になったのではないかと推測する。実際、春の東京開催の土曜日は、施設が大きいだけにガラガラ感が目立った。

 地方競馬もその傾向は同じ。2000年代に入って大井競馬場の本場入場者数はほぼ半減しているが、入場者数の減少傾向は今も止まらず、2013年に65万2,399人、前年比103.9%と持ち直したかと思えば、2014年は61万1,319人、前年比93.7%と上向く気配がない。

 一方で総売上は2013年の961億5,954万5,100円から2014年は994億4,642万6,900円と、ここ2年間前年比3%の伸びをみせ、1,000億円台復活がみえてきた。在宅投票が大きく貢献しているのはこれまで何度も述べた通りで、2013年の構成比(総売上に占める在宅投票の割合)44.74%が、2014年には48.9%に伸びている。新聞の売上げにも、入場者数の減少と在宅投票の増加はハッキリと表れている。

 経済誌に大井競馬場の施設会社である東京都競馬の記事が掲載されていた。大井競馬のピークである1991年には東京ドームなどを抑え、一時は「日本一ビールを売る場所」であったという。

 競馬新聞業界のピークはビールよりもう少し遅い。91年当時はまだ南関東4場の相互発売は行われておらず、大井競馬の馬券を買えるのは大井競馬場本場とオフト後楽園だけであった。4競馬場の相互発売が完了したのが98年、そして96年以降全国の場間場外発売が徐々に始まり、そこから毎年のように場外が増え、部数も右肩上がりだったが、5年ほど前から遂に下降に転じている。

 競馬場・場外の入場減もそうだが、在宅投票への対応が難しかった。

 2000年代に入っても地方版の外販を行っている売店、コンビニはごく一部で、基本は本場、場外での販売。SPAT4が立ち上がり行われたコンビニ発売テストは好調だったが、重賞当日版だけが爆発的に売れる地方版は、発注側でのこまめな増減調整は難しい。また、在宅投票向けに絶大な人気を誇ったFAX新聞はダイヤルQ2とともに終了。並行して始まっていたインターネットでの新聞配信は、当時まだ技術的に途上で、画質や使い勝手の面で課題が多かった。また決済システムの構築やデータを保存するストレージ、そしてデータ転送料。ネット出版は安くなると思われがちだが、新たにネット新聞のシステムを構築するコストがかかり、輸送費や紙代、インク代が減ってもその分とほぼ相殺されてしまう。

 とは言っても、在宅投票ユーザーの確保は急務。新聞そのままのPDF版がスタートしたのが5年前、そして2年前にA4版をリリース。使い勝手の良さであっという間にPDF版を超えたが、ユーザーのほとんどはタブレットやPCではなく、印刷して使用している。これで全国をカバー出来たはずだが、ダウンロードに(精神的にも時間的にも)耐えうる光やADSLが対応していない地域も、地方にはまだ多い。そのあたりを踏まえて登場させたのが、コンビニプリントである。

 全国のコンビニのマルチコピー機でA4版をプリント出来る。ベンダー側からそういう話があると聞いて、間違いなく売れると思ったが、残念ながらメーカーの違いでコンビニ最大手では購入することが出来ないため、まだ空白地帯が広く、例えば日高だと富川まで行かなければならない。そこが今後の課題である。
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