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第173回 『マンダリンヒーローの快挙』

2023.05.25
 正直に言うとあんまり期待はしていなかった。デビュー5戦4勝、2着1回、ハイセイコー記念ではのちにニューイヤーカップ、クラウンカップを制するポリゴンウェイヴに勝ち、話題の素質馬リベイクフルシティをまくり気味に交わして行った。雲取賞では先を行くヒーローコールをとらえられなかったが、間違いなく南関東クラシックで有力候補となる1頭である。
 しかしながら、さすがに北米のダート、ましてや有力馬が出走するサンタアニタダービーでは厳しいだろうと。

 その週は大阪出張があったりして、なんだかんだで休みなく、9日が1週間ぶりの休みだったので、前夜は風呂に入って早めに就寝。一応、6時45分に目覚ましをセットした。

 6時45分、起床するもレースはスマホで観られるのでベッドの中。「1番人気は5番のプラクティカルムーブでオッズは1-1かあ」、「マンダリンヒーローは8番かあ」とか、ほぼ寝ぼけながらただ画面の情報をなぞる。

 スタートまずまず。後方かなあぐらいに思っていたら、「ある程度前に行った方がいい」という木村和士騎手の判断で中団5番手に。テンの200mは手計測で14秒2ぐらい。これぐらいならある程度前行けるかだろうが、1/4マイル(400m)のハロン棒(金色の玉が乗っている)が22秒30!(レースラップ)これは速い。3馬身差ぐらいの5番手インだから、23秒ぐらいだが、雲取賞では25秒9(レースラップ)だから、「これは直線伸びないだろうなあ」ぐらいの感想。

 半マイル46秒30(雲取賞51秒9)、3/4マイル1分11秒25(雲取賞1分16秒8)と速く、ムチも入っていたしやっぱり無理だろうと思っていたら、4コーナーでプラクティカルムーブがスッと外から内に進路を変えると、内にいたマンダリンヒーローは外に切り替える。

 内プラクティカルムーブ、外スキナーと3頭併せに近い状態になると、下がるどころかスキナーを振り切り、プラクティカルムーブに迫るではないか。このころには目も覚めて、ベッドから起き上がっていた。

 残り200mは「おお、おお、あぁぁぁぁ」という言葉にならない感じ。

 リプレイの後に出る「PHOTO FOR WIN」のスローモーションはハナ差の2着。後で確認したEQUIBASEの成績も「Nose」。地方競馬のデビュー馬が北米の、しかもダートのレースでハナ差の接戦は快挙である。と同時に、大きなハナ差となった。

 大井競馬場とサンタアニタ競馬場が友好交流協定を結んだのが、1995年。それぞれTOKYO CITY CUP(GⅢ)とサンタアニタトロフィーを開催し、プレゼンターとしてサンタアニタ競馬場の運営会社の役員や、駐日米国大使館の農務代表や、時には駐日米国大使が来場したり、お祭り的な雰囲気ととらえていた。

 交流面では主にジョッキー交流が中心で、馬の交流はないと思っていたのだが、2011年にレッドアラートデイがサンタアニタトロフィーに出走、2014年にはソイフェットが東京大賞典に出走。

 2018年にTCKステーブルを開設。小林牧場に検疫厩舎も完成し、体制が整い、今回の快挙に繋がることになる。

 2019年に大井所属馬に対しサンタアニタダービーの出走枠が与えられた。藤田輝信調教師は、出走枠が与えられた時から「出走させるチャンスをうかがっていた」そうだ。サンタアニタダービー出走には「サンタアニタダービーポイント」で200ポイント獲得が必要で、2018年にラプラスでチャンスを得たが、共有馬主の同意を得られず断念。今回も新井オーナーを説得し、執念で出走に漕ぎつけた。

 「目標は2着以内で優勝を狙っている」と出国前に語っていたが、フライト、48時間の検疫、初の馬場と初の左回りなど、ほぼ全てが初モノの中、エージェントのサポートや木村騎手の起用など、事前の準備がこの結果につながったのだろう。

 次走の目標は5月6日のケンタッキーダービーだが、ケンタッキーダービーポイント40ポイントで、現在出走順位24位。例年なら繰り上がれる順位だが、状況はかなり厳しく、結果大きなハナ差となった。

 マンダリンヒーローは現在TCKステーブルで調整を続け、4月末にチャーチルダウンズへ向かう予定とのこと。もし出走が叶わなかった場合は、5月20日のプリークネスステークスへの出走も考えているそうだ。吉報を期待したい。
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