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第104回 海外の競馬が身近に~そこから感じる調教師の本質~

2018.11.19
 早11月、2018年も残すところ、わずかとなりましたね。時の流れの速さが年々増していくように思えます。この背景には、年齢を重ねたこともありそうですが、それだけでなく日本で行われる毎週末の競馬に加え、海外馬券や、海外競馬を目にする機会が増えたことも、その要因の1つとなっているようにも思えます。
 その中でも毎年1番の注目となるのが、10月の凱旋門賞。今年はクリンチャーが参戦の中、牝馬エネイブルが連覇を達成しましたが、当日、私は自宅でテレビ観戦をしていました。デットリー騎手の手腕にもしびれましたが、何よりも印象的だったのが、合田直弘さんが現地から伝えたゴスデン調教師の観戦の様子。

 ゴスデン調教師は、合田さんがいらっしゃった放送席の近くで観戦されていたとのことで、レース中の立ち振る舞いについて、声を荒げるどころか、言葉を発することもなく、静かにレースを見、ゴール後は、小さく頷かれたとのこと。

 師は、今回の凱旋門賞の1戦において何よりも心配をしたのが、復帰2戦目にあたり、息や体力、精神面などが、最後の最後まで持つか?凌ぎきれるかどうか?という点と挙げており、まさにその言葉を彷彿とさせるゴール前の着差。

 また膝の状態が思うように回復せず、11か月振りに選んだAWのセプテンバーSの際も、1頭強い馬の存在に周囲から不安視する声も上がる中、終わってみれば、圧巻のレース振りと折り合いをつけての内容でしたが、これに対しても、勝ち方は想定の範囲内とした上で、2017年の凱旋門賞後からの長い道のりにおいて、「他の馬が調教を積んでいる姿を見て、彼女はイライラしているようでした。私たちも同じ気持ちでした」と振り返られていました。

 その発せられる言葉の1つ1つが、どれも深い眼差しと観点を持ち、馬自身の目線で見ていると感じられるコメントばかり。

 だからこそ、レースにおいては、勝ち負けの瞬間、瞬間に一喜一憂するのではなく、想像と現実の答え合わせをするかのように見つめ、そしてまたその先に考えられることを既に想像しているのではないかと感じられるのです。

 まるで、勝敗は単なる結果であるかのような...。

 そういった意味で言えば、同じ牝馬で2連覇を成し遂げた際のトレヴの女性調教師ヘッド氏も、ジャルネ騎手の騎乗に対する馬への負担度の大きさを1度目は指摘し、2度目においては、トレヴを1番理解している騎手が最高の騎乗をしたと称賛されていました。勝つことに結果の全てがあるのではなく、1つの走りが、その後の馬に与える影響度の違いを感じての発言。

 海外競馬がより身近になったことで、こういった調教師の姿や発言を知る度に、調教師という職種への憧れや、本質を感じさせられます。

 さて話は変わり、この秋競馬は外国人騎手の活躍が際立ちすぎていますね。

 特にルメール騎手は、アーモンドアイの3冠達成から、キャリア3戦の馬を菊花賞へと導き、そしてダービー馬を天皇賞馬へと導く、凄まじい活躍。レースを見ていると、折り合いのみならず、なぜあそこまで追い出しを我慢ができるのか?不思議。

 本人に伺ってみると、「フランスの競馬はラスト1ハロンのみのレースが多く、あの経験が生かされているのだと思う」と分析されていましたが、見ているこちら側が、ハラハラ・ドキドキしてしまうほどの内容は、まさに神技。

 しかしながらルメール騎手のみならず、来日するジョッキーたちは、世界各国の競馬を渡り歩いて来ている方々ばかり。

 その経験値の差も大きな要因となっていると感じます。そういった点で言えば、今年、若手の野中悠太郎騎手が単身でアイルランドへと渡り半年の経験を積んで帰国していますし、坂井瑠星騎手は現在オーストラリアで騎乗中。

 ルメール騎手の言葉にあるように、違う環境下に身を置き、調教やレースに参戦している、この経験が、将来に向けて非常に大切な時間となっている気がし、頼もしさを感じます。

 それでは皆さん、また来月お目にかかりましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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