馬ミシュラン
第149回 『ジェネレーションギャップ』
2021.05.26
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最近、オグリキャップやトウカイテイオー、スペシャルウィーク、ゴールドシップなどについて、ちょくちょく聞かれることがある。あるいは、日刊競馬ホームページ内の過去の名馬や名勝負を紹介したページのアクセス数が急に増えている。オグリやテイオーは学生時代(時効)のど真ん中を駆け抜けた名馬だし、スペシャルウィークやゴールドシップは記者になってから、ファンの時よりももっと近い位置で接した名馬である。
今頃何故?と思う方はもういらっしゃらないとは思う。いずれも今競馬界隈を席巻している「ウマ娘」の登場馬(キャラクター)である。
実のところ、筆者はそれほど「ウマ娘」に詳しい訳ではない。アニメが放送された当初、とりあえず録画はしてみたものの、最初で脱落してしまった。競馬に関わるものは何でも1度は観ることにしてはいるし、子供の頃は親に「アニメばっかり観ているとバカになるよ」と言われるほどアニメを観た。しかし、寄る年波には勝てない。頑張って観たが1話が限界だった。
代わりに子供たちが観ていて、ちょくちょくその馬の「ストーリー」を尋ねてくる。不思議に思っていたのだが、昨今のアニメに詳しい編集部の若手記者Y君によると、実馬の足跡を辿っているのだそうだ。前述のホームページのアクセスも、1993年の第38回有馬記念の馬柱に集中している。トウカイテイオーが1年の休養後復活を遂げたあのレースである。
画像があちらこちらに貼られているが、印は上から「△...▲......△」。SNSのコメントを読むと「この印で勝ったのか」とか、「記者センスねえ」とか書かれてある。結果を先に知っていれば、そう思うのかもしれない。
その年の菊花賞をレコードで勝った馬(ビワハヤヒデ)やジャパンカップを勝った馬(レガシーワールド)、その年のダービー馬(ウイニングチケット)が出走していて、かつトウカイテイオーは1年ぶりのレースだから、我々からすれば「そりゃ当然そういう印だろう」と思うのだが、当時の空気感は当時のファンでなければ分からないのも、仕方のないところか。
また、Y君によると、アニメのトウカイテイオーは独特なステップを踏んで歩くらしい。我々の世代でいうところの「テイオーステップ」という奴だ。繋ぎが柔らかく、独特の歩き方をデフォルメしたものらしい。
以前「100名馬」などの企画があったが、訴求力という観点では、「ウマ娘」の方が断然高いと言わざるを得ない。特に若い世代に対して高い。
今になって当時の馬柱が検索されているのも、実際のストーリーを辿っていることによって、過去の成績や出来事に興味を持つ若い人が増えているからだろう。かつての「ダビスタ」同様、「ウマ娘」をきっかけに実際の競馬へと足を踏み入れるファンが増えてくれれば、業界的にも悪い話ではないだろう。
プロジェクト自体の発表は2016年3月。アニメの放送は2018年の4~6月(第1期)、2021年1~3月(第2期)。そして満を持してスマホゲームの登場だ。今起こっている様々な出来事のきっかけは、まさにこれである。
スマホゲーム「ウマ娘プリティーダービー」がリリースされたのが2021年2月24日。あるゲームの調査会社によると、リリース後2か月で500万ダウンロード。売上は1日で推定約5億円、1か月で約130~140億円!という驚きの数字。1日5億円は岩手や佐賀の1日の売上に匹敵し、130~140億円は大井のひと開催の売上に匹敵する。調査方法にもよるが、歴代スマホゲームの中でもトップクラスの売上である。
さらに課金したユーザーの上位はなんと2,000万円以上。もはや本物の馬が買える金額である。
一連のプロジェクトを運営する会社は2018年よりその収益の一部を、ジャパン・スタッドブック・インターナショナル等に「馬の福祉ならびに馬事文化への貢献」のための寄付を行い、それが競馬ファンからも称賛されている。
我々的には、完全にこのブームに乗り遅れているのが現状だ。Y君のような人材がありながら、それをうまく生かせなかった事は失敗である。もっとも、Y君的には競馬は仕事で、アニメやゲームは趣味で、その線引きはきっちり分けているのかもしれない。今どきの若者らしい、とも言える。好きなことを仕事にしてしまったおっさんには、なかなか理解が難しいのだが。
今頃何故?と思う方はもういらっしゃらないとは思う。いずれも今競馬界隈を席巻している「ウマ娘」の登場馬(キャラクター)である。
実のところ、筆者はそれほど「ウマ娘」に詳しい訳ではない。アニメが放送された当初、とりあえず録画はしてみたものの、最初で脱落してしまった。競馬に関わるものは何でも1度は観ることにしてはいるし、子供の頃は親に「アニメばっかり観ているとバカになるよ」と言われるほどアニメを観た。しかし、寄る年波には勝てない。頑張って観たが1話が限界だった。
代わりに子供たちが観ていて、ちょくちょくその馬の「ストーリー」を尋ねてくる。不思議に思っていたのだが、昨今のアニメに詳しい編集部の若手記者Y君によると、実馬の足跡を辿っているのだそうだ。前述のホームページのアクセスも、1993年の第38回有馬記念の馬柱に集中している。トウカイテイオーが1年の休養後復活を遂げたあのレースである。
画像があちらこちらに貼られているが、印は上から「△...▲......△」。SNSのコメントを読むと「この印で勝ったのか」とか、「記者センスねえ」とか書かれてある。結果を先に知っていれば、そう思うのかもしれない。
その年の菊花賞をレコードで勝った馬(ビワハヤヒデ)やジャパンカップを勝った馬(レガシーワールド)、その年のダービー馬(ウイニングチケット)が出走していて、かつトウカイテイオーは1年ぶりのレースだから、我々からすれば「そりゃ当然そういう印だろう」と思うのだが、当時の空気感は当時のファンでなければ分からないのも、仕方のないところか。
また、Y君によると、アニメのトウカイテイオーは独特なステップを踏んで歩くらしい。我々の世代でいうところの「テイオーステップ」という奴だ。繋ぎが柔らかく、独特の歩き方をデフォルメしたものらしい。
以前「100名馬」などの企画があったが、訴求力という観点では、「ウマ娘」の方が断然高いと言わざるを得ない。特に若い世代に対して高い。
今になって当時の馬柱が検索されているのも、実際のストーリーを辿っていることによって、過去の成績や出来事に興味を持つ若い人が増えているからだろう。かつての「ダビスタ」同様、「ウマ娘」をきっかけに実際の競馬へと足を踏み入れるファンが増えてくれれば、業界的にも悪い話ではないだろう。
プロジェクト自体の発表は2016年3月。アニメの放送は2018年の4~6月(第1期)、2021年1~3月(第2期)。そして満を持してスマホゲームの登場だ。今起こっている様々な出来事のきっかけは、まさにこれである。
スマホゲーム「ウマ娘プリティーダービー」がリリースされたのが2021年2月24日。あるゲームの調査会社によると、リリース後2か月で500万ダウンロード。売上は1日で推定約5億円、1か月で約130~140億円!という驚きの数字。1日5億円は岩手や佐賀の1日の売上に匹敵し、130~140億円は大井のひと開催の売上に匹敵する。調査方法にもよるが、歴代スマホゲームの中でもトップクラスの売上である。
さらに課金したユーザーの上位はなんと2,000万円以上。もはや本物の馬が買える金額である。
一連のプロジェクトを運営する会社は2018年よりその収益の一部を、ジャパン・スタッドブック・インターナショナル等に「馬の福祉ならびに馬事文化への貢献」のための寄付を行い、それが競馬ファンからも称賛されている。
我々的には、完全にこのブームに乗り遅れているのが現状だ。Y君のような人材がありながら、それをうまく生かせなかった事は失敗である。もっとも、Y君的には競馬は仕事で、アニメやゲームは趣味で、その線引きはきっちり分けているのかもしれない。今どきの若者らしい、とも言える。好きなことを仕事にしてしまったおっさんには、なかなか理解が難しいのだが。