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第122回 新型コロナウイルスへの危機感 ~中止となったドバイの舞台裏では~

2020.05.21
 新型コロナウイルスは終息するどころか、猛威をふるっている様子...。

 諸外国での死者数は増え続け、入国規制や国境封鎖、外出禁止令の措置をとる国や地域もでてきている状況。

 また競馬もヨーロッパ、中東、ニュージーランド、オーストラリアの一部やシンガポールと続々と中止となる中、日本は競馬が行われている状況ですが、このコラムが掲載される頃にはどうなっているのでしょうか...?

 それ以上に、国そのものがどうなっているのか?

 とにかく不安です。

 特に4月上旬、IPS細胞の山中伸弥教授が、「同じウイルスなんですよ。日本だけに優しいということはない。このままでは大変な事態になります」と警告されましたが、この背景には、現状を見かねての配信に踏み切った様子が伺え、改めて危機的状況下を個人的には感じました。

 よって私自身は現在、日曜に中継の為に競馬場に足を運んではいますが、内心は不安を感じているところも...。

 しかも競馬が行われている舞台裏では、とにかく騎手をはじめとする関係者に感染者を出さないように努める状況ゆえ、現場では日に日にピリピリとした空気が流れており、当初の、(なんとしてでも開催を皆で続けていきましょう)といった一丸で乗り切ろうとする思いを通り越し、区別や状況によっては差別的と思えることも...。

 なんだか戦争と一緒で、人の命が奪われることはもちろんですが、人の心の在り方が残念な方向へと向かっていくことも怖さの1つなのだと感じました。

 週を追う毎に、見えない敵はコロナウイルスだけでなくなってきているような心境に...。

 そんな中、苦境だからこそ皆が一丸となって、乗り越えた素晴らしい出来事もあり、心が温かくなりました。

 それは中止となったドバイでの担当者の方々の歩み。

 帰りの貨物便の乗車人数のこともあり、現地に残れる担当者の数が6人となった際、誰もが自分の担当馬を置いて帰ることはできなかったと。

 話し合いの末、天に委ねることに決め、関西はジャンケンで、関東はアミダくじで居残り組を、それぞれ3人ずつ決めていたのです。

 と同時に、残ったものは、どの馬も平等に扱うことを肝に銘じるとともに、皆でグループラインを作り、帰国組との連絡を密に取り合いながらの調整。

 とはいえ、レースに出走できなかったことで、競走馬たちの体はスコブル元気、気持ちは研ぎ澄まされた状態、しかも自分の馬以外は手探りの状況下。

 そのような中で、ガス抜きをさせることは相当な危険や知恵、連携が必要だったはず。

 現地に残ったクリソベリル担当の濱田助手は、「とにかく残った組はそこを1番に考えた。これからの輸送を考えると危険だから。まずエサで栄養価を下げ、朝は曳き運動。午後からは、馬房から出した後は、馬の気持ちに寄り添うように、リラックスさせるように努めた。さすがに、乗る調教から曳き運動に切り替えての3日目あたりは、どの馬も元気良すぎてヤバカッタ。でも、本当に無事に帰ってくることができたし、何よりも皆が一丸となった」と。

 特にサウジアラビアからドバイ入りをし、レースに向けて入念な調整をしてきた馬たちが全馬ケガやトラブルなく無事に帰ってくることができたことが個人的には奇跡に思え、レースこそ失いましたが、逆に得たものも大きかったように思え、この功績は大きいと感じます。

 それでは皆さん、基本的なことですが、お互いに、手洗い・うがいなど、清潔を保ちながら、また来月お目にかかりましょう。

 ホソジュンでしたぁ。

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