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第133回 森喜朗氏発言によって ~問われるジェンダーイコーリティー~

2021.04.19
 森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の女性蔑視発言がメディアで取り沙汰され、結果として辞任に...。ジェンダー的なことで言えば、私自身には騎手となった時から付きまとっていた事象。
 デビュー当時は、「初の女性騎手」「紅一点」と言われ、インタビューでは、「男性に負けないようにする為の努力は?」「男性と女性の違いをどう受け止めていますか?」と聞かれ、ミスをすれば、「やっぱり女性は体力がないしね...」「女性には厳しい」「女性だからしかたがない」と、囁かれてきました。

 当時は、なぜ世の中というのは女性・男性という括りオンリーで人を見るのか?と疑問を抱き、人は性別ではなく個々として見るべきと内心思っていました。

 しかしながら、時が経つにつれ、確かに男性と女性では、生まれ持っての個体差があるのは事実で、そもそも体の作りが違うのだから、その点までを否定するのはナンセンスだとも感じるようになりました。

 また、男性社会で仕事をしてきたからこそ、女性と男性の思考的な違いは、おおまかに存在するようにも思えるのです。

 よって今回、森さんの発言にあった、「女性がたくさんいると理事会は時間がかかる。1人が発言すると女性は、みんな次から次へと発言する」といったことをおっしゃいましたが、このことに関して私自身は、さほど否定的な感情は生まれないのです。もちろん100%正しいとも思えませんが...。

 というのも、男性社会で働いた際に感じたことの1つに、(なぜ男性は自分の思いを、きちんと言葉にして相手に伝えようとしないのか?)(思ったことを直ぐに口にできないのか?しないのか?)と感じることが多かったから。
 言ってみれば、今回の森さんの意見とは真逆の思い。

 特に競馬の世界において人と人との間にあるものは、言葉で自分の感情を口にできない馬。

 よって馬の代弁者となる為にも、立場・役職に関係なく個々の意見を述べることができたらいいのにと思うケースに多々直面し、その疑問を投げかけると、ある方からは、「そんなことをいちいち発言していたら、上との関係性が悪くなるだろ。最終的に自分の考えは通らないわけだし、従っているのが1番」との声も上がれば、「言い方は悪いけど、調教師を騙すのも調教の1つ」と、一昔前の敏腕調教助手さんは笑いながら口にし、馬のゼッケン後ろにバーコードがつけられ坂路タイムが計測されていた頃は、あえてそこに鞭が被さるようにベルトに挟み計測不可能とし、追い切りタイムを誤魔化していたかも(笑)。

 よくよく考えてみれば海外とは違い、日本は能力による飛び級制度もなく、また女性の社会進出の歴史も浅いゆえ、まだまだ根深く残っている男尊女卑の社会。

 よって歴史的な環境を考えれば、森さんのような、ご年配の方々に、その意識が強いのは当然であるようにも思えるのです。

 しかしながらその一方で、以前ではここまで取り上げられなかったと思う1つの発言に、こうして論議がなされたのは、日本でも働く女性が増え、また国際社会になってきた証とも取れるものであり、非常に喜ばしいことにも思えました。

 今年の3月、競馬界にまた新たな2人の女性騎手がデビュー。96年にデビューした私たちから数えると9人の女性騎手が誕生。わずかな数ではありますが、少しでも増えることが大切であり、その状況がジェンダーによる違和感を軽減する要因になると個人的には感じています。

 皆さんは、どうお考えになられますか?

 それではまた、来月お目にかかりましょう。

 ホソジュンでしたぁ。
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