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第139回 2021凱旋門賞プレビュー ~ダーモット調教師の管理馬・タルナワ~

2021.10.19
 この原稿が掲載される頃には、秋競馬第1弾となるスプリンターズSと第100回目となる凱旋門賞の結果に、様々な感想を抱いていることでしょう。
 特に凱旋門賞においては、ディープボンドがフォワ賞を制し、クロノジェネシスにおいては持久力と瞬発力の両者を兼ね備えた女の仔。これまで参戦してきたタイプとは少し異なるだけに、その点もどう出るのか?興味を感じるところ。

 またディープインパクト産駒のスノーフォールが、2着となったヴェルメイユ賞から中2週の状況で、どこまで立て直してくるのか?

 はたまた切れ味という点では、同じエイダン厩舎のセントマークスバシリカも魅力で、当日、良い馬場ならばチャンスもあるのでは?と思っています。

 そして日本馬の応援と同じぐらい、個人的に勝利を願っているのがタルナワ。

 この馬を管理されるダーモット調教師には、過去2度インタビューをさせてもらっているのですが、アイルランドのカラ競馬場の近くに構える厩舎は、競走馬たちの理想ともいえる空間。というのも、馬たちは調教後にダーモット調教師と厩舎の間に作られた庭のような放牧地で、草を食べリラックスした時間を過ごすのです。そして1頭1頭に寄り添う担当者たちは、ただただ愛馬たちの傍に寄り添い、無心に草を頬張る馬たちのために、自分のケハイを消しているかのように温かく佇んでいるのです。

 誰一人として、リードを引き上げることや、時計を見る仕草などない状態で。

 そんな光景をウットリと眺めていると、「さっきまでは、こちらが馬に要求をしたんでしょ。今度は、馬の要求を僕たち人間が聞いてあげる番」と、先日、73歳を迎えた師は、優しい笑みを浮かべながら話され、その師の雰囲気に私も全身を温かな毛布で包まれたような感覚になったことを今でも鮮明に覚えています。

 また覚えていると言えば、ダーモット師だけでなく、「あなたは数年前に1度、来ているよね?」と、おはようございます程度の挨拶だけだったにもかかわらず、私が立っていた場所や服装などを記憶されていたベテラン厩務員さんたち。

 その観察力や記憶力を目の当たりにした瞬間、競馬発祥の地とも言えるアイルランドは、馬の歴史だけではなく、その馬たちと共に歩まれてきた人々のホースマンとしての血にも深い歴史も感じ、壁を感じました。

 しかしながら近年、日本の生産界は世界トップレベルにあり、また日本馬に騎乗予定の両騎手は、短期免許の来日で、日本馬のレベルを把握済み。

 と同時にそれは、牧場&厩舎スタッフとの関係性も構築されていることを示しており、個人的には何よりも、この点が今回、日本馬にとっての悲願達成に向けての大きなスパイスとなる気がしています。

 さぁ、果たしてどんな結果となっているのでしょうか?

 それでは皆さま、また来月お目にかかりましょう。ホソジュンでしたぁ。

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