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第147回 転機を迎えた藤田菜七子騎手 ~環境を変え現状打破に挑む姿勢~

2022.06.17
 2022年も半分を迎えようとしていますが、最近、周囲から、「今、たくさんの女性ジョッキーが頑張っているね」と。たくさんとは言っても、現役騎手148名中4名ではあるのですが、一昔前に比べると数もさることながら、1人1人の活躍も目覚ましく、その印象も強いのでしょう。
 しかも現在、関東唯一所属の女性騎手・藤田菜七子ちゃんも栗東に在住。話を聞けば、年数とともに乗り鞍の減少もあり、何か行動を変えなければ現状は変わらないとの思いから栗東へ。

 そして、乗馬の達人揃いの藤原厩舎で、一から馬乗りを学び直しており、角馬場では鐙をあげて騎乗も。「根本的な考え方が覆されることもあり、とにかく毎朝必死で乗っています」と。16年振りの女性騎手としてたった1人でデビューをし、その歩みにより現在の女性騎手たちは4キロ減でのスタート。

 まさに彼女の功績あっての恩恵といえ、その頑張りだけでも凄いことなのに、後輩騎手が続々とデビューをし、年数による壁を迎えた今、再度初心に戻り、環境を変え挑戦し続ける彼女の姿が本当に美しく映りました。

 人は、苦しい時期にこそ、何を考え、どう行動するかが大切で、そのアプローチによって、その後の人生が大きく変わる気がしますし、究極は、環境を変えるというのが、1番、可能性として変化を得られるように思います。

 私自身も、騎手として煮詰まった際、シンガポールに渡り、1か月間、騎乗した経験があるのですが、周囲が誰も私のことを知らないので、私に対しての評価やイメージがなく、その地でゼロからのスタートが切れたように思えます。

 と同時に、かれこれ20年の交流を持つベテラン記者の方が、何かの話の流れの中で、「俺が唯一ホソエの凄いと思う点は、1人で海外に乗りにいったこと。なかなか、ああいった勇気は持てない」と不意におっしゃってくださり、その言葉が今でも私の心を温かくしてくれています。

 また考え方という点においては、騎手引退後、武豊騎手の助言と応援があったとは言え、実績のなかった私が競馬を伝えることは100%不可能に近いのが現状。

 騎手時代同様、競馬に貢献できず短い形で終わってしまうことを避ける為にはどうしたらいいのか?考えた結果が、20年前の競馬解説者の多くは、データや血統を用いた理論が多く、その点に敷居の高さを感じていた私は、もう少し馬を身近なものと感じてもらえたら競馬の裾野が広がると考え、馬は皆さんが飼っている犬や猫などのペットと同じで、感情やそれぞれに個性を持った生き物であることに着目しました。

 よって当時、主流だった調教師や騎手のコメント中心というよりは、馬と1番時間を長く共にする担当者の方々を中心に取材。すると、体の面はもちろんのこと、心の面で見えてくるものが多く、競走馬にとって1番重要なことは心身のバランスであるという視点も見え、私自身、どんどん興味が沸き、伝える楽しさも感じた気がします。

 やっぱり何事も選択肢を常に考えながら、アクションを起こしての経験が1番なのかもしれませんね。

 それでは皆さん、また来月お目にかかりましょう。

 ホソジュンでしたぁ。
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