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第14回 優秀馬選定にも時代の変化

2010.03.01
 NARグランプリ2009の各受賞馬が,地方競馬全国協会から発表された。不肖・小山内も全国公営競馬専門紙協会から推薦され,末席に名を連ねさせて頂いた。

 結果は既に発表された通り。至極妥当な結果だろう。今回のように頭を悩ますことなく,極々自然に馬の成績で決められたことは,幸せなことだと感じている。
 その一方,今回から各地区からの専門紙,日刊紙記者による推薦(投票)方式での優秀馬選定は廃止となった。元々,専門紙,日刊紙ともに選定委員会に委員として推薦された方々は,各地区,各協会で意見を集約して臨んでいただけに,どのみち結果には折り込み済みということもあるが,一番は'時代の変化'なのかもしれない。

 専門紙協会の意見集約の会合でも,各地区ごとの話が出る。その際,東海地区の記者から「今年の東海地区の優秀馬は,園田のベストタイザンですよ」という,半分冗談,半分真面目な意見があった。確かに梅見月杯,東海桜花賞,サマーカップ,白銀争覇と名古屋・笠松で重賞4勝。ダートグレードの名古屋大賞典でも地方馬最先着の4着である。東海の優秀馬として相応しい成績だった。

 そうしたら,兵庫の記者からも「それを言うなら,兵庫の優秀馬は笠松のマルヨフェニックスやろ」という声が。ダートグレードレースを除く,園田・姫路の最高賞金レース,オッズパークグランプリ2009(1着1,000万円)を制し,秋には姫山菊花賞も制している。アルドラゴンが2勝,チャンストウライも2勝なら,確かに格ではそういうことになる。

 岩手の芝の優秀馬は,大井のエイブルインレース(オパールカップ),川崎のコスモヴァシュラン(せきれい賞),北海道のコスモバルク(OROカップ),ボヘミアン(ジュニアグランプリ)が対象馬で,賞金からOROカップを制したコスモバルクが選ばれるだろう。

 南関東も笑えない。恐らく昨年の南関東の優秀2歳馬は北海道のナンテカということになるのではないか。もちろん全日本2歳優駿を制したラブミーチャンもいるが,それは全国区での活躍扱いであり,地区別なら鎌倉記念,平和賞の重賞2勝は,過去9年で初めてである。

 地方競馬間での交流競走は,出走要件の緩和,人馬の流動拡大を図るという目的で,平成20年度から22年度までに2~3割程度拡大するという,具体的な数値目標まで盛り込み,地方競馬全国協会が各主催者に対して理解を求めている。主催者によっては重賞競走だけでなく,特別競走にまでブロック交流を広げているところも多い。この方針が定められる以前の19年度との比較では,全国で重賞65競走だったものが,21年度には110競走に,特別14競走が,130競走にまで拡大されている。今年はさらに増えるだろう。

 このように,競走の番組自体が'馬資源の共有'に向かい,それに伴う人馬の交流が盛んになるに連れ,各地区の優秀馬という考え方自体'時代の変化'に取り残されたものになる。地方競馬内での人馬の流動化は,本来ダートグレードレースよりも先にやるべきことであり,'やっと始まったか'という思いもないではないが,これは高い評価をするべきだと思う。

 一方で,この流れにあまり乗り気でないような感じがするのは南関東。特に大井だ。地方競馬交流は19年度の2競走(黒潮盃・TCKディスタフ)から変わらず2競走のまま。22年度の番組要綱の転入条件の部分に旧『7・8歳のA1』→新『7・8歳のA級』という変更があった。弊社馬柱担当者が「ひゃあ~」だったか「ひょえー」だったか,活字にし辛い悲鳴を上げていたが,要は転入促進の方向性である。減額しつつも一定の賞金レベルを保っているし,自場にそれなりの能力を持った馬を集める,という思想は間違いではない。どちらが良いかとは言い切れないが,少なくとも今が時代の節目であることは確かだろう。

 時代の変化とは関係なく,「地元で頑張った人や馬を表彰してあげたい」という意見は少なくない。それはその通りで,岩手や兵庫は主催者が優秀馬を独自に表彰している。むしろ,地区別はその方が良い。ファンに投票してもらえば,選ばれた関係者もきっと嬉しいに違いない。


JBBA NEWS 2010年2月号より転載
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