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馬ミシュラン

小山内完友 馬ミシュラン

第29回 競馬の再開

 「3.11」から1ヵ月が過ぎた。中止されていた南関東は4月12日の川崎競馬から再開。1号スタンド1階2階だけ。ビジョンもパドックだけ,火曜日から金曜日まで1日9競走。開幕するはずだったナイター開催は断念し,12時30分第1競走発走の昼間開催。レースは30分毎発走で16時30分に最終競走という正味4時間の勝負。電力供給不足による節電体制ではあったが,初日は4,665名の競馬再開を待ち望んでいたファンで,場内はごった返していた。

 昼の段階で営業部には「凄い沢山客が入ってるぞ!」と連絡があったのだが,現場に行って見るとそれは単に場内のエリアが狭いからであって,5,000名弱は見積もり通りだった。

 川崎競馬場はほとんど被害はないと聞いていたが,実際に行ってみると,2号スタンド内外に外からみてわかる程度の修復痕あり。馬場もうねっている感じ。施設会社に聞いたら否定していたが,開催4日間での競走中止は6頭。鼻出血や心臓麻痺も含まれるが,毎日のように出るとさすがにファンからも疑いの声が聞こえた。

 結果的にこの開催は2日目5,711名,3日目4,953名,重賞のクラウンカップが行われた4日目は5,678名ものファンが来場。4日間合計で入場21,007名,売得1,918,351,800円。再開効果はあっただろうが,4日間の昼開催としては上々の成績だったと言える。何よりも,来場されたファンが,1ヵ月ぶりに首都圏に戻ってきた生の競馬を楽しんでいた姿が印象に残った。

 政府からの要請で大口需給者の電力を75%に制限されそうな流れだけに,目標値をクリアするテストも兼ねていたが,最終日は1号スタンド3階を開けたこともあり,一時75%を越えそうな局面があったそうだ。恐らくはナイターで使う電力も加味しての数字だと思われるが,自慢のキングビジョンを使用しない体制でそれでは,ナイター開催が出来るかどうか,ちょっと心配になる。

 節電だからといって,まさかサーバーの電源を落とすわけにはいかないし,結局照明や,空調,一部発券機など,目に見えてしまうところを落とさなくてはならない。実際のところ,川崎競馬も大井競馬も自家発電を備えているのだが,プロ野球と同様,煌々と照明を焚くのは憚られる雰囲気だ。大井競馬場では,休催中も様々な節電テストを行っていて,4月21日の競馬終了後,19時から,照明30%カットで能力,調教試験を行う。結果次第で5月9日からナイター競馬を行う事を検討している。

 ゴール前が約2000ルクス。仮に半分で約1000ルクス程度と仮定するなら,だいたい高知競馬場(1100ルクス)のゴール前と同じになる。見慣れた景色と比べれば,随分暗いと感じるだろうが,調教がだいたいそれぐらいかもっと暗い照明で行っているので,出来ないことはないと思う。

 照明だけでなく,今どきのガラス張りのスタンドも,夏場を快適に過ごすにはエアコンが不可欠。大井競馬場には高効率のコジェネレーション設備が備えられているが,かといってガンガンエアコンを効かせるのは,なんとなく世間体が悪い。5月~7月上旬ぐらいならまだいいが,夏場をどう乗り切るかがカギになる。今のところ開催場未定となっているが,仮に福島競馬の代替を中山競馬場で開催するとなると,同じことになりそうだ。さすがに指定席料金を取って,汗だくのサウナ状態の室内に放り込むようなこと
はしないだろうが,かといって電力消費の問題は避けられない。

 競馬場に限らず,ドーム球場など快適な観戦,安定した興行日程は得られたが,反面,こういった事態に直面すると,途端に身動き取れなくなってしまう。確かに今回は未曾有の災害がきっかけではあるが,家庭用太陽光発電にも電力が必要なのと同じで,省エネも実は張子の虎だったか。

 そういった意味では,筆者は万全の体制だ(笑)。現場では空調の効いた記者席ではなく,夏は砂埃と灼熱のゴール前で,汗だくになりながら。冬は凍えそうな寒さと,冷たい風に吹かれ,常にカメラのバッテリーの減りと闘っている。

 人間の活動時間に合わせたナイター競馬,人間の快適性を優先させたスタンド。しかし,自然の力はこれらをいとも簡単に無力化する。今さらながら自然の力の凄さと,人間の無力さを感じる。