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第30回 競馬再開後1ヵ月が経ちました

2011.06.10
 まず初めに,この場をお借りして。3月11日,荒尾競馬を発売していた岩手県のテレトラック釜石にて,新聞売店の売り子さんが1名亡くなられた。店を仕舞い,高台に避難する途中,津波に襲われたそうだ。ご冥福をお祈りいたします。
 未曾有の大震災から1ヵ月経ち,南関東の地方競馬,そして中央競馬が再開されたことは,先月号でも触れた通り。5月14日には岩手競馬もなんとか再開に漕ぎ着けた。再開したとはいえ依然予断を許さぬ状況で,万が一中間に赤字が見え出したら,どうなるか全く読めない。

 開催計画も大幅に縮小し,日数は前年の124日から90日とマイナス34日の減。水沢競馬場が甚大な被害を受けたため,5月14日から12月5日まで,全て盛岡競馬場で行われることになった。そして年間の発売収入計画を当初計画の48.8%減となる97億4,400万円と見込んだ。

 年間の収入が100億円を下回る規模になると言うことは,道営(約112億円),笠松(約110億円),佐賀(約104億円)よりも下,ほぼ金沢並(約93億円)ということになる。これらの地区に比べ岩手は,水沢から盛岡への馬輸送,そして地方競馬としては大型の場外を抱え,それらのいくつかは採算面で危うい。こういった岩手特有の'高コスト体質'でどう乗り切るのか?再開したとはいえ,明らかに前途は多難だ。

 これだけ厳しいことが分かり切っていると,ある意味開き直れるかもしれないが,昨年の盛岡開催が48日で77億円だったことを考えると,単純な見込みで144億円。大きく被災した水沢,宮古,釜石(廃止),三本木などのマイナス分と,被災による景気後退の減収を合わせて約3割減としているのは,妥当と言えるかもしれない。

 繰上げ充当(予算の先食い)を埋めるはずだった3月の特別開催は無くなったが,その分は日本中央競馬会がポンと出した5,000万円でどうやら埋まったようだ。

 さて,我等が南関東はどうかというと,前年の4月12日~5月14日と,今年の4月12日~5月13日(前年比マイナス1日)の比較では,前年が総売得20,669,923,800円,本場入場143,989名に対し,今年は総売得18,825,412,200円,本場入場139,950名。総計で売得91.0%,入場97.1%。1日分を補整すると売得94.8%,入場101.2%となる。

 新聞の売り上げは売得よりも入場に比例する傾向にあるのだが,実際のところ不謹慎ながらもなんとなく「売れてる」という手応えはあった。中央競馬も同様で,皐月賞当日の現場売りは,ある新聞が売り切れを出し,その後小紙にも殺到し,あわや売り切れかという事態になっていた。皐月賞自体の売得は前年比79.9%,東京競馬2日目が85.5%であったが,東京競馬場の入場は80,940名で,前年比119.0%であった。

 中央,地方ともに現場分はそこそこ元気あるのだが,主力である中央の駅売店,コンビニとなると今後の集計待ちとなる。震災後,即売会社も非常に慎重で,ある即売は徹底した1部配置で,我々版元を悩ませている。

 1部配置とはその名の通り,売れているコンビニ,売れていないコンビニに関わらず,どの店舗も1部だけ配置するという消極策。確かに売り切ってしまえば回収の手間も省けるのだが,我々からすれば「ちょっと待ってくれよ~」と言いたくなる。このところ売り切れ報告も多く,明らかに売り逃している。即売も厳しいのは分かるのだが,こういう時だからこそ,もうちょっと攻めて欲しい気もするのだが,こればっかりは...。

 また,地方のある地区では現地即売の配送ミスで,市内ほぼ全域のコンビニに日刊競馬が届かないという事件も起きた。単純な仕分けミスなのだが,「なんでないんだ!」と激しく怒るお客様,助けを求めて電話してきたコンビニ店主。こちらのミスではないし,遠隔地,しかも夜では打つ手なし。とりあえず即売の本社の連絡先を伝え,対応をお願いした次第だ。どこも落ち着かない。

 この震災で新聞発行が出来ない中,PDF新聞のみだとか関西版の発行など,イレギュラーな事態に対応してきた。しかし,依然として東北,北関東方面の新聞流通は回復しておらず,落ち着くのは当分先の話になりそうだ。
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