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第49回『外れ馬券は経費だ』

2013.01.07
 「外れ馬券を経費に認めて欲しい」。この願いは、我々馬券ファンの悲願である。かの井崎脩五郎さんは、我々が学生だった頃からそう主張しているが、未だ実現していない。そして今、画期的な裁判が行われている。
 11月30日、大阪に住む会社員の男性が競馬で得た所得を申告せず、所得税法違反の罪で在宅起訴されたニュース。記事によると、この男性は市販の競馬予想ソフトに独自の計算式を入力して、2004年頃からインターネット投票を利用し、中央競馬の新馬と障害を除く全場、全レースの馬券を購入。2007年から2009年までの3年間で28億7,000万円の馬券を購入し、30億1,000万円の払い戻しを得たという。

 これに対し大阪国税局は、配当額から的中馬券のみの購入金額を控除した約29億円を一時所得と認定し、無申告加算税を含め約6億9,000万円を追徴課税するとともに、所得税法違反容疑で大阪地検に告発。同地検は一昨年2月に在宅で起訴した。それに対して男性は課税処分を不服として、大阪国税不服審判所に審査請求している。

 所得税法違反に問われている件について、11月19日に大阪地裁で第1回の公判が行われ、男性は「外れ馬券も経費。そこまで所得を得ておらず、不当だ」と反論し、無罪を主張している。「画期的」と書いたのは、我々悲願の「外れ馬券を経費に」出来るかどうかが、裁判で争われている件。記事の中でも国税関係者が「競馬の必要経費が法廷で争われるのは例がない」と述べて、審理の成り行きに注目しているという。

 ここで整理すると、この男性は3年間で約28億7,000万円分の馬券を購入し、約30億1,000万円の払い戻しを得た。その利益は約1億4,000万円である。しかし、所得税法では、第三十七条において所得を算出する際に収入から差し引くことが出来る必要経費について「これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。」(抜粋)と規定している。男性は馬券購入を「営利を目的とする継続的行為」とし雑所得を主張。大阪国税局は「的中した馬券の購入部分だけを経費とみなし、外れ馬券は所得の形成に無関係」とし、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」つまり、一時所得を主張している。

 この事案に関して、男性の主任弁護人が主張を公表している。それによると、


◆ 大阪国税局の主張 ◆














































                  単位:円
      購入金額配当金額差額
平成17年600万1億 200万9,600万
平成18年1,800万5億2,000万5億 200万
平成19年3,200万7億6,700万7億3,500万
平成20年6,500万14億4,600万13億8,100万
平成21年3,100万7億9,500万7億6,400万

            合計 34億7,800万



◆ 男性の主張 ◆














































                  単位:円
      購入金額配当金額差額
平成17年9,900万1億 800万900万
平成18年5億3,800万5億4,400万600万
平成19年6億6,700万7億6,700万1億
平成20年14億2,000万14億4,600万2,600万
平成21年7億8,400万7億9,800万1,400万

            合計 1億5,500万




 男性の口座に30億円などあるはずもなく、実際多い時でも数千万円だったという。浮き沈みしながら購入を繰り返した結果が、3年で約1億4,000万円の「みせかけ上の利益」だったに過ぎない。同様の例として2009年に起きた「UPRO」の160億円脱税の件もそうだ。160億円はあくまでも「払戻し総額」であり、160億円の「利益」ではない。これらはクラシックな「一時の遊興」ではなく、PATと予想ソフトが可能にした「営利を目的とする継続的行為」と言える。同じく控除されているのに馬券が一時所得で、宝くじが非課税である件も含め、税制の方が時代に則していないと勝手に思う(決めるのは裁判所)。

 それにしても、稼いだ金額の約5倍もの税金を払えとは、無慈悲な話である。
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