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馬ミシュラン

小山内完友 馬ミシュラン

第61回『未知との遭遇』

 結論から言うと、面白いレースだった。久しぶりにそういう感覚を抱いた。

 確かに、例えば初期のジャパンカップのように「あのジョンヘンリーが来た!」とか「凱旋門賞馬が来た!」とか、そういった馬名を見ただけで胸躍るようなビッグネームの来日ではない。どちらかと言うと「未知との遭遇」と言った方が近いか。「いったい、どんな馬がやってくるのだろうか?」、「韓国馬のレベルは?」そんな感じ。

 先にソウル競馬場で行われた韓日交流「SBS ESPN杯」は大井のトーセンアーチャーが剛脚で制した。A1とはいえトーセンアーチャーはバリバリのトップではなく、続く今回の日韓交流「インタラクションカップ」は1200mに距離が短縮され、ミヤサンキューティやセントマーチなどより上位馬が出走する。トーセンアーチャーが勝てるのなら、負けるはずがないだろう。レース前からそういった緩い空気が支配的だった。

 大井競馬場に入厩した韓国馬を観に行ったが、ワッツビレッジ(USA)はストームキャット(USA)系らしい寸の詰まった馬体で、いかにも短距離向きといった印象。フライトップクイン(USA)も、先頃日本で供用される事が決まったストームキャット系のヘニーヒューズ産駒で、その父はリースで日本でも供用されたヘネシー(USA)。ヘネシーと言えば昨年2歳戦でブイブイ言わせていたヨハネスブルグ(USA)もその産駒。血統だけでなく、実際の馬を見ても、韓国馬は思っていたよりは「いい馬」だった。韓国産馬のフルムーンパーティ(KOR)にしても2006年に韓国に輸入され、済州島で供用されているWild Again(USA)直仔のVicar(USA)産駒である。

 馬柱を作るため韓国のレースは穴が開くほど観たが、レース振りは今ひとつ。それもそのはず、韓国の競馬はかつての地方競馬と同じで、格が上がれば距離も延びる番組。少なくとも今回のメンバーは1200mの方が向いている事は間違いなさそうだ。ワッツヴィレッジのウ・チャング調教師も「1200mはワッツヴィレッジに向いている」とコメントしていた。その事にもっと最初から気が回っていれば良かったのだけれど...。

 前日の大雨で、レース当日は不良馬場。大井は不良馬場になると追い込みが効かない先行有利。時計も重馬場より若干掛かるようになる。

 ゲートが開いて飛び出したのはブリーズフレイバーだったが、押してワッツヴィレッジとフライトップクイン、フルムーンパーティと韓国勢3頭が積極策。ワッツヴィレッジが先手を奪い、その逃げは暴走気味で、ラップは3ハロン33秒8~4ハロン46秒5~5ハロン58秒8のハイペース。隊列は縦長となった。

 中団の7~8番手を進む1番人気セントマーチの御神本騎手や、2番人気ミヤサンキューティの真島騎手は「前は潰れる」と思っていただろうし、日本馬同士、お互いをマークするようにレースをしていた。観ていた我々もそう思った。
 4コーナーを回ってもワッツヴィレッジの脚色は衰えず、セントマーチは外目に持ち出し追撃体勢。ミヤサンキューティは内のバラけたところを縫って、大外からはコウギョウダグラスが、それぞれ、逃げるワッツヴィレッジを追いかける。
 残り100mを切って、ワッツヴィレッジの脚色が鈍り鞍上のソ・スンウン騎手も必死に左鞭を入れる。ミヤサンとセントは馬体を併せて伸びてきて、競り落とすような格好でミヤサンキューティが伸びるも、惜しくもクビ差届かず、ワッツヴィレッジが逃げ切った。

 普通に振り返れば、先行有利の不良馬場。見た目に短距離向きの韓国勢。相手は日本馬と互いにマークするような格好でワッツヴィレッジを楽に行かせた人気の日本勢。何よりも韓国勢を「甘く見ていた」ことが最大の敗因だろう。これは我々にしても同じ。ミヤサン◎、ワッツ△と辛うじて裏で当たりではあったが。

 初の韓日、日韓交流は共に敵地で勝利する友好的な結果となった。敗れたとはいえ実際にはさらにその上に引退したラブミーチャンやナイキマドリードのようなグレード勝ち馬もいるし、韓国勢にもプサンに強い馬がいると聞く。レース前は柱の製作など面倒が多くて「第2回はやめろ!」と思っていたが、レースはひじょうに面白かった。
 今は第2回が楽しみで仕方ない。