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第91回 『いろいろ波乱の東京ダービー』

2016.07.22
 6月8日(水)、大井競馬場で東京ダービーが行われた。今年はグリーンチャンネル地方競馬中継の解説だったので、大井競馬場ではなく、都内のスタジオでの観戦となった。
 さらに個人的なことを言うと、東京ダービーは1989年(勝ち馬ロジータ)から欠かさず大井競馬場で観戦してきたが、ついに連続観戦記録が途絶えた。この仕事をしていると、逆に競馬場に行けない事も多い。

 さて今年の東京ダービー。結果から言えばJRAから転入初戦のバルダッサーレが勝った。逃げたディーズプリモをウワサノモンジロウがつっつき、5ハロン61秒0のハイペースに。人気の羽田盃馬タービランスは3番手追走と万全に見えたが、あまりにも速すぎて先行2頭が早々に後退し、まさかの3角先頭。さらに早めにスパートした(レース後のインタビューでハミが掛かって持っていかれたと吉原騎手)バルダッサーレに外からまくられる最悪の展開に。

 直線はバルダッサーレの独走で、2着に7馬身差の快勝となった。その2着は14番人気のプレイザゲームが、後方追走から、直線ポッカリ空いた内を抜けてきた。

 なにしろスタジオでモニター越しに観ていたので現場の空気は感じられなかったが、空気感というか「こんな感じだろうなあ~」という雰囲気は容易に想像できた。三連単70万5,810円の波乱で、昨年も66万9,140円だったから、2年連続で「波乱の東京ダービー」。

 放送終了後、現場にいた記者に様子を尋ねたら、やはり転入初戦でのダービー制覇に苦言を呈する方がいたとか。競馬場の職員にも別件で電話したついでに聞いたら、やはり同様の事を言う方がいたとか。かれこれ20年以上東京ダービーの紙面を作っているが、「何を今更」という感じがしないでもない。

 以前の大井は転入後1走しないと重賞には申し込み出来なかったが、それが1994年から一部(ハイセイコー記念や京浜盃、黒潮盃、ハンデ戦のサンタアニタトロフィー等、現在は緩和)を除き緩和された。実はつい最近の話ではないのだ。

 南関東のクラシックでは、2011年の羽田盃にルーズベルト(9着)がJRAから転入初戦で出走した。東京ダービーでは2012年の2着馬プーラヴィーダと、11着のメビュースラブが転入初戦で出走している。JRAに再転入出来るようになったことが大きい。

 今回、バルダッサーレがJRAから転入初戦で東京ダービーを制したが、ならばマカニビスティーのように2戦叩けばいいのか。そういう問題でもないだろう。

 昨年、ラッキープリンスが浦和所属馬としては25年ぶり、浦和デビュー馬としては31年ぶりに東京ダービーに勝ったことが話題となった。川崎、船橋所属デビュー馬は数年に1度は出ているが、実は大井デビューの大井所属馬は1996年のセントリック以来、実に20年勝っていない。ようやく新馬入厩促進策を始めたが、すぐ効果が出るものでもないだろう。

 昨年は16頭中、大井(小林含む)所属馬は5頭で、生え抜きは3頭。今年は16頭中大井所属馬が6頭いて、生え抜きは2頭。90年代に入って北海道からの転入馬が主流となり、アウトランセイコー以降、北海道デビュー馬は南関東クラシックの中心で、近年はJRAからの転入も増え、今年は16頭中10頭が転入馬、昨年は8頭が転入馬である。また、最近10年で北海道からの転入馬から5頭のダービー馬が生まれ、JRAデビュー馬も10年で2頭。

 南関東生え抜き馬は、昨年のラッキープリンスが9番人気、サイレントスタメンが8番人気、ドリームスカイ10番人気と、いずれも人気薄での勝利。それが近年の実態なのである。

 密着取材のインタビューで的場文男騎手がこんなことを言っていたという。

 「今年は勝ち馬が2分6秒9でしょう。ダービーは速い時は5秒台で圧勝されていたんですから。恥ずかしいですが、今年はレベルが低かったと言わざるを得ません。そういう意味で言うと、去年今年と南関東のレベルが低くなっているなという気がしました」

 奇しくも中継の最後で同じような事を言ったのだが、まあそういうことなのだと思う。
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