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第157回 『左回り』

2022.01.25
 11月19日(金)、令和3年度第13回大井競馬5日目第12競走「Make New Way賞」が大井競馬初の左回り1650m、12頭のフルゲートで行われた。
 メインレースが終わりファンも競馬場関係者も、そして我々報道関係者もぞろぞろ4コーナー側に移動。撮影用のポジションを確認していると、右回り用のゲートが去ってゆき、左回り用のゲートが姿を現す。発走位置につくとレリーズ用のコードを繋ぎ、扉を閉めて開放テスト。毎レース行われている事なのに、初の左回りだと思うと、不思議なものでなんだか緊張してくる。

 1番人気は左回り5戦4勝2着1回のバーブル。左回りマイルはベストで、開催登録メンバーが出た時点で「ほぼこの馬が勝つだろう」と思われていた。2番人気はモンサンラファータ。左回りダートはJRA在籍時に東京競馬場の1400mで9着(2.3秒差)のみだが、状態の良さを買われた。3番人気はサンドストーム。JRA在籍時に東京競馬場で3着、また川崎の未勝利交流で2着の経験がある馬。

 集合の合図がかかり、各馬ゲート裏で輪乗り。懐かしいファンファーレが響き渡り、枠入り、そして発走。

 最内サトノレガリアが先手を奪うと予想していたが、スタートひと息。左回り1650mはスタートから最初のコーナーまで約250mと短いため、12頭に制限されているとはいえ、各馬が殺到し挟まれて手綱を引くシーンもあった。最初の600mは推定38.2だがゲートを出て3.9-11.3と速く、コーナー進入時に13.0は各馬手綱を控えたからだろう。

 マテーラフレイバーが逃げ、2コーナー(右回りの3コーナー)から最終コーナー(右回りの1コーナー)までは13.3-12.7-12.5-12.7と徐々にペースが上がるも、右回りのゴール板通過付近は13.3となぜかペースが落ちる。実況も「ゴール板前をすぎて残り200m」という聞いたこともないフレーズ。逃げるマテーラフレイバーを先に仕掛けたモンサンラファータが交わし、さらに外から人気のバーブルが並びかけ、クビ差バーブルが接戦を制した。

 タイムは1分45秒5。これが今後の基準タイムとなるが、様子見なのか、全体的にペースがスローだっただけに、今後更新されるのは間違いないだろう。模擬レースの1回目は1分53秒1、2回目が1分49秒1。右回り1600mのレコードが1分37秒2だから、B級なら大体1分43秒台程度にはなるのではないだろうか。

 とりあえず事故もなく無事に第1回を終えられてよかったが、最初の発表が2年前で、その後しばらく音沙汰なく、今年に入り左回り用のゲートを買ったとか、4号スタンドに決勝審判用のカメラの設置場所を作ったとか、左回りのゴール板を設置したとか段階的に話があり、左回り用の最初の模擬レースが10月8日、正式な発表が10月26日。11月19日にレースを行うと聞いて2か月程度しかなく、システム化は間に合わず。

 南関版の場所別は中央版のように右から「当該場・右ダ・右芝・左芝・左ダ」というような配列ではなく「大・川・船・浦」というような場所固定になっていて、これを右大井と左大井に分けるのは、ひとつ競馬場が増えるような対応になるため、これは時間がかかる。とりあえず距離設定とコース図を組み、あとは手作業でしのいだ。

 当面はひと開催にひとレース行うとのことだが、「いずれは重賞レースも視野に」と考えているようだ。現場は現場で、左回り本馬場の調教時間が午前2時から開始など、見直してもらいたい点は多々ある。それは追々ということになりそうだ。

 今回「そもそも、なぜ大井競馬場は右回りだったのか」と思い、地方競馬史、大井競馬のあゆみ、東京都競馬の周年誌などを調べてみたが、施設が都ではなく会社になったいきさつだとか興味深い話はあったものの、いずれもコース設計の理由についての記述はなく、何事もなく図面と「右回り1周1600m」としか書かれていない。前身の八王子競馬場は左回りで、戦前に隆盛を誇った右回りの羽田競馬場に倣ったというのが濃厚ではあるが、あくまで想像の域を出ない。

 ちなみに東京都トレーナー倶楽部50年史には「馬場一周マラソン大会があった」というのが開場当初の思い出として挙がっていた。

 「Make New Way賞」が終わり、ファンも我々も再びぞろぞろと右回りのゴール板方面へ移動。なんだか花火大会が終わった後の帰り道のような、そんな感覚だった。
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