JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第165回 『競馬場の天気』

2022.09.26
 競馬と天気、密接な関係にあることは説明の必要もないかもしれない。出入り業者として競馬に関わっていると、あらゆる面で天気が仕事に及ぼす影響は大きい。
 試しに天気がどう影響するのか各部署に聞いてみると、

 編集部=「予想をする上での馬場状態が気になる」と、これはわかる。

 トラックマン=「天気が崩れそうだと追い切りの予定が変わることがある」。雨が降る前に、馬場状態のいい時に追いたいという厩舎は多い。ただし、前日に変更ならいいが、午前2時に変更(地方競馬)とかは辛い。

 営業部=「天気が悪いとお客さんの出足が鈍る」。これも良くわかる。

 印刷部=「紙の湿度管理に気を使う」「紙の搬入の日に雨が降るのは嫌」と。湿気はシワの原因になるので、夏の工場はエアコンガンガンで本当に涼しいです。

 一方で冬は湿度を気にしなくていいが、静電気が起きやすい。巻き取りの紙は静電気除去されているが、乾燥した空気の中を高速で紙が走ると、静電気が起きる。対策はしているが起きる。いつの間にか帯電していて、何かに触るとバチン。

 制作部と総務部は天気の影響はないとのこと。

 お客さんにとっては、まずは雨だろう。雨が降ると入場が落ちる。たとえば今年のお盆開催。お盆開催と言えば書き入れ時だが、今年は天気に祟られた感がある。

 今年の8月11・12日の浦和開催と、14~16日の大井開催がちょうどお盆休みにあたるが、11日の山の日は好天に恵まれ、気温も33度と夏らしい1日となったが、12日は雨、開催のない13日も雨、14~16日は夜半に雨がぱらつく感じの曇り。豪雨による災害が起きた地域もあり、全国的には天候には恵まれなかった感がある。

 11日は本場3,585名と、前開催のプラチナカップ当日の2,144名に比べ+1,441名と、まずまずの出足。翌12日は曇り空もなんとかもって2,117名。祝日と土曜日に挟まれた平日にしてはまずまずといったところだろう。

 開催が変わって14日の大井競馬。レース中は時々雨がパラついたりもしたが、これからお客さんが出かけるという時間帯に大雨が降って、初日は6,028名。その後もぐずついた天気で、15日5,519名、16日4,324名という結果。

 コロナ下でお客さんの動きが変わったということもあるが、例えば2019年の大井競馬のお盆開催は、11日14,968名、12日13,572名、13日10,463名、14日12,845名、15日9,336名。入場1万人以上とか、もはや懐かしささえ感じるが、そこまでいかなくとも、という営業部の「気合の配置」は実らなかったようだ。

 馬場状態と天気は、予想の大きなファクターだ。ダートの場合は含水率で、良=9%以下、稍重=7~13%、重=11~16%、不良=14%以上、これに見た目の状態、例えば重馬場なら「表面に水は浮いていないが、踏みしめると水が染み出る状態」、不良馬場なら「表面や足跡に水が浮いている状態」のような判断基準で決められている。

 馬場が渋れば一変する馬とか、軽く脚抜きのいい馬場が良い馬、あるいは力の要る馬場が得意な馬、重馬場はからっきしダメな馬など、馬場状態で浮上する馬は結構いる。新聞の馬場状態の見込みは、特に天気が変わりやすい季節は、スタッフであーでもないこーでもないと、天気予報を見ながら決めるが、雨が降る見込みで重馬場にしたのに、印刷した後に予報がガラッと変わって晴れ予報になった時はがっくりする。同業者?として「3時間おきに予想を変えるのは反則だ」などとよく言っている。

 他にも風の影響や、気温が高くなりそうな時は予想に気を使うし、台風が近づいている時や、雪が降りそうな時は、新聞の交換などの準備や対応をしなければならないし、場合によっては対応の決断を迫られる時もある。

 不思議なもので、稼ぎ時の重賞当日に決まって雨が降ったり、ある特定の人物が競馬場にいると降らないはずの雨が降るときがある。雨の日の現場は辛い。合羽を着ていても濡れるし、晴れた日のようにメモも取れない。何よりも雨の日は気持ちが落ち込む。

 2022年4月時点の東京の年間降水日数は、Googleによると108日だそうだが、体感的にはそんなものかもしれない。いずれにせよ、ファンにとっても我々業者にとっても、天気が良いに越したことはない。
トップへ