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第171回 『2月といえば』

2023.03.27
 2月も半ばになると「花粉症」という言葉が聞かれるようになる。筆者自身は今のところ大丈夫そうだが、実父がひどい花粉症なので、体質的には時間の問題なのかもしれない。
 この冬、関東地方は雨も少なく乾燥しており、競馬場で仕事をしていると毎レースのように馬が通り過ぎたあと砂ぼこりにまみれる。そうすると鼻のむずむずやくしゃみなど、花粉症に似た症状に襲われることがある。

 かなり昔の話になるが、故清水成駿さんがある飲み会で「喫煙者は花粉症にならない」と真顔で仰っていた。曰く「花粉が入り込む穴をタールが塞ぐ」かららしい。もちろん飲み会の席の馬鹿話だが、清水さんに言われるとうっかり信じてしまいそうになる。これが「説得力」というやつなのだろう。

 2月19日、東京競馬場でフェブラリーステークスが行われた。今年最初のGⅠ競走にカナダからの外国馬シャールズスパイトShirl's Speight(USA)と、浦和から地方馬スピーディキックが参戦。

 シャールズスパイトはレース史上初となる外国馬の参戦、またスピーディキックには1999年のメイセイオペラ以来となる、地方馬の勝利が期待された。

 このレースは地方を中心に活躍している馬を中心に買うと、まれに好配当が得られることがある。3年前に最低人気のケイティブレイブを絡めて買ったらなんと2着に好走してくれて、好配当を手にしたことがある。この時は東京大賞典8着、川崎記念6着の後の最低人気だったから買えたが、こんなことは滅多にはない。

 今年は根岸ステークスに勝ったレモンポップ(USA)が人気になっていたが、そこを外すわけにもいかないから当然押さえて、全日本2歳優駿に勝ったドライスタウトを軸に、帝王賞馬メイショウハリオ、かしわ記念に勝ったショウナンナデシコ、さらに根岸ステークス15着で人気が落ちそうなヘリオスと一昨年のJBCスプリント馬レッドルゼル。このあたりを絡めた。

 浦和のスピーディキックは申し訳ないが応援馬券で単複。地方馬は最初の芝の部分で置かれるとだいたい厳しい結果になる。スピーディキック自体もレース前になるとピリピリしてくる馬なので、果たして大観衆の東京競馬場ではどうか。その点に不安があった。

 久々の予約無しで入場できるGⅠだけに現地で観戦したかったのだが、その日は地方競馬中継の解説があり、スタジオで観戦。

 JRAのレースに地方馬が出走した時は、番組中でレースの振り返りがあるから、初見はスピーディキックを中心に観戦し、その後勝ち馬などをリプレイで見直すのが通常。そうでない時は馬券を買っている馬を中心に見ている。

 ゲートが開いて注目のスタートはメイショウハリオに目が行ってしまった。飛び上がるように出た次の瞬間に躓き、浜中騎手がなんとか踏みとどまったが、これは大きな不利だった。その後腹をくくって後方追走し、直線で大外に出したあと上がり35秒8の脚で3着。さすが帝王賞馬だが、返す返すもスタートが惜しまれる。

 スピーディキックはまずまずのスタートを切り、芝の走りも悪くなくスルスルっと上がって行き、一瞬「これは!」と思ったのも束の間、ダートに入った途端行きっぷりがひと息で後方から。直線を向いてからも前が詰まり、挟まれで厳しい競馬になったが、最後クリアな外目に持ち出すと伸びて、勝ち馬から1.0秒差の6着だった。

 中継内の振り返りでは「スムーズなレースは出来なかったが、このレベルで通用の目処たったし、今後期待の持てるレースぶりで、結果に悲観する必要はない」と。今思うと「説得力」がありそうななさそうな、なんとも無難な感じ。

 4着ドライスタウトはレースぶりにスムーズさを欠いていたし、思えば前走もロスのある競馬だった。今回もキャリアの差が出たように思う。

 レッドルゼルはここでも自身のレースに徹して2着。スピーディキックに近い位置取りから、直線入り口でグイッと外に持ち出すと、上がり35秒7の末脚で大外を真一文字に伸びた。戦前、気持ち長いと思われたマイルだったが、これがベストの結果ではないだろうか。

 勝ったのはレモンポップ(USA)。好位4番手を進み、直線の坂でも手応え十分で抜け出し快勝。ソツのないレースぶり、速めの流れで先行し、終いもキッチリ伸びた。初GⅠ挑戦で初制覇だが、今後もっと我々を驚かせてくれる馬になりそう。

 馬券はお察しの通りです。
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