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第172回 『番組賞金と格付ポイント』

2023.04.25
 WBCの日本代表の活躍は、1次リーグから大きな盛り上がりをみせました。プロ野球チームのホームスタジアムのすぐ近くに住んでいるのに日頃全く野球に興味を示さない我が家族も「大谷選手が観たい!」などと言う始末。チケットを購入しようと思ったら、大谷選手の参加が決まった途端秒で売り切れ。アメリカ行く前ならなんぼでも家の近所で観られたのに...。
 ちなみにこの原稿は準決勝のメキシコ戦前に執筆しているので、その後どうなったかは知らないのですが。(編集注:決勝戦でアメリカを下し優勝しました)

 サッカーやMLBなど海外スポーツのファンは深夜早朝の中継はもはや当たり前ですが、競馬ファンにとっても、ドバイワールドカップや凱旋門賞では深夜まで大盛り上がり。2月25日深夜(日本時間)に行われたサウジカップデーもグリーンチャンネルで中継され、馬券発売がないにもかかわらず多くの競馬ファンがテレビの前で声援を送ったものと思われます。

 当日は1351ターフスプリント(G3)をバスラットレオンが、レッドシーターフハンデキャップ(G3)をシルヴァーソニックがそれぞれ勝ち、メインのサウジカップ(G1)は2020年12月12日以来のダート2戦目となるパンサラッサが逃げ切ったわけですが、注目されたのはレースの1着賞金1,000万ドル。日本円に換算して約13億円という世界最高額賞金でした。

 サウジでは騎手の賞金配分が10%ということで、鞍上の吉田豊騎手は1分50秒80で約1億3,000万円を得たことになり、ネット界隈では「秒で億を稼ぐ男」などと言われていました。

 海外の賞金の加算はJRAが作成した「換算表」なるものを用います。年始にフランスギャロが更新するレートをベースにしているようで、今年は1ドル131.865円ということなので、サウジカップの賞金は13億1,685円ということになりそうです。

 ただこれはあくまで番組賞金の算出であって、実際貰う金額は主催者から1,000万ドルが振り込まれ、円に両替する時点だと思われますが、どうなのでしょうか。

 いずれにしても夢のある話です。

 我々がその存在を知ったのは2013年に行われた大井と韓国の交流競走で、その時に賞金額(番組賞金)の算出にJRAの「換算表」をベースに日韓交流のための「換算表」を大井競馬の競走課で作成、それを用いました。

 海外競馬に限らず「番組賞金」の算出はこの仕事の肝とも言え、格付けや出否にかかわります。

 サウジカップの5日前、2月20日に「南関東4競馬場における番組編成のための新たな格付け制度の導入(格付ポイント制)および2歳馬の先行導入に関わるお知らせ」という、長いタイトルのお知らせが発表されました。

 簡単に言ってしまえば南関東4競馬場で、統一した賞金基準で格付けする、というもので、それを今年の2歳戦から導入する(あまり長さが変わっていない)というお知らせです。

 例えば昨年の南関東地区の、2歳新馬戦の1着賞金額は実施順に、浦和290万円、船橋270万円、川崎270万円、大井240万円でした。最高額の浦和と最低額の大井で1着50万円の差があります。売り上げが低迷していた時期に賞金額も下がりましたが、近年賞金増額が続いています。賞金の増減は各競馬場によって事情が違うため、4競馬場で共通の格付基準表を用いている南関東4競馬場では、この差が後々響いてくることになります。そこを補正する目的です。1着290万円でも、240万円でも、新馬戦なら一律280ポイントとして扱います。社内でも難しく考えてなかなか理解出来ない人もいましたが、番組賞金の基準表がひとつ増えたと思えばよく、簡単に言えばみなしの番組賞金なのです。

 詳しい格付ポイント表や、転編入の算定、JRAで実施される競走で獲得した収得賞金などに触れると大作になるので、ここでは割愛させていただきますが、番組格付ポイント表を覚えてしまえばむしろ分かりやすいでしょう(多分覚えられない)。

 今年は3歳以上が番組賞金、2歳が格付ポイントと併用されることになるため、新聞も同様に3歳以上が番組賞金、2歳戦はポイントで表記されることになりますが、見た目も使用上も、特に変わりはないので心配する必要はなさそうです。

 秋には3歳以上の格付ポイントが発表されるとのことですが、漏れ伝わるところによると、そちらの方は若干複雑になりそうです。もちろん新聞ではしっかりフォローするつもりなので、その辺はご心配なく。
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