馬ミシュラン
第191回 『思惑』
「これだけのメンバーが揃ったんだから、3万人入らないかな」。弊社営業部某氏が言った。
10月2日、大井競馬場で行われた第26回ジャパンダートクラシック(JpnⅠ)は今年からスタートした新ダート三冠路線の締めに相応しい、錚々たる顔ぶれが揃い、我々新聞屋もいやが応でも期待が高まる。
東京ダービー馬ラムジェット、同2着馬サトノエピック、レパードSを制したミッキーファイト、不来方賞の1・2着サンライズジパングとカシマエスパーダ。京浜盃、戸塚記念に勝ったサントノーレ、東京ダービーで地方馬最先着の4着した高知のシンメデージー、岩手の期待フジユージーン、そして国内無敗にして、サウジダービー、UAEダービーに勝ち、ケンタッキーダービー3着のフォーエバーヤングが参戦。
これだけでも営業部のボルテージは最高潮に達し、期待で胸が破裂しそうなばかりの勢いだった。特にフォーエバーヤングは今後国内で観ることができないかもしれないし、「これは本場に来るしかないだろう」と言って憚らない。
他社は3万人の予測をするところもあったが、そこは入場予想には定評のある営業部。入場予測のファイナルアンサーは2万人と、意外にシビアなものだった。
弊社社員がX(旧Twitter)で行ったアンケートでは20,000人以上が40.9%、15,000人〜20,000人未満が28.4%、10,000〜15,000人未満が23.6%という結果。結果は16,792人だったから概ね営業部の勝利だ。
筆者の予想は13,000人。雨の羽田盃が5,947人、晴れの東京ダービーが13,937人と低調だった原因には、いくつかの要素が考えられる。
まず1つめは交通。大井町駅の無料バスが廃止されてから、正門側が寂しくなった。大井競馬場は東京モノレール大井競馬場前駅、京急立会川駅が利用でき、目黒駅東口から品川駅経由で都バスが運行されている。しかし、全体的に池袋・新宿・渋谷方面からのアクセスが良くないと感じる。元からそこにあるのだから今更立地のことを言っても仕方ないのだが、それを補完する手段が欲しい。
2つ目は競走条件。羽田盃=大井1800m、東京ダービー=大井2000m、ジャパンダートクラシック=大井2000m。いずれも馬齢(定量)戦である。
今回は三冠最終戦にフォーエバーヤングの参戦はあったが、それ以外の変化に乏しく、訴求力に乏しかった。これは東京大賞典が2000mに距離短縮された時にも思ったが、同じような番組ばかりだと飽きてくる。
今年、羽田盃、東京ダービーがレースレコードの売上を記録したが、新三冠という「変化」や中央だけでなく地方の目玉が(珍しく)参戦したということもあるのかもしれない。
ただ、ジャパンダートダービーとして行われた昨年比100.4%という数字は入場者112.6%との比較からも、「観に来たファン」が多く、馬券購入の魅力が薄かったのではないかと思われる。
南関東の三冠は羽田盃、東京ダービー、東京王冠賞で、順番が変わったり、距離が変わったり、ジャパンダートダービーが加わったり、東京王冠賞がなくなったりと、それなりに変遷してきているのだが、一貫して大井競馬場で行われてきた。今年変わるタイミングで、開催場所や条件を大幅に変えるならいい機会ではあったのだが、実質何も変わらなかった。
選定馬の発表、中間発表とメンバーの発表に関しては迅速でこちらも広告が打ちやすかったのだが、すでにその時点で分かりやすかったとも言える。実際1着フォーエバーヤング(1番人気)、2着ミッキーファイト(3番人気)、3着サンライズジパング(4番人気)、4着ラムジェット(2番人気)と平穏。
しかし、フォーエバーヤングの矢作芳人調教師が「正直8分程度」「ひやひやした」とレース後コメントしたように、平穏と言うのもあくまで結果論にすぎないとは思っている。
以上、思うところをつらつら述べたが、ダート三冠競走はまだ実施初年度でもあり、今後改良の余地は十分ある。一方で伝統的なものでもあるし、競馬場としても売上が期待できるコンテンツでもあるから、そうそう簡単には手放せないし、動かせないだろう。
あとはファンがどう思うかだ。収益事業なのだし、購買欲をそそる魅力ある番組に育つかどうか、その点が試されるのではないか。