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第193回 『1cm』

2025.01.27

 12月1日から始まる大井開催より、本馬場の砂厚が10cmから9cmに、1cm薄くされた。競馬場によると「馬場の排水性の向上と馬の負担軽減」がその理由。


 現在の砂は2023年のJBC開催の前に入れ替えられたもので、オーストラリア・アルバニー産の硅砂(けいしゃ)。いわゆる「白い砂」として競馬ファンにはお馴染みだが、石英(二酸化ケイ素)を主成分とする砂である。


 これまで使われていた青森県六ケ所村の砂は資源の減少により採取が困難になり、その後に導入された青森県つがる市の砂や洗浄砂はシルト化(砂の粒子が細かくなり粘土質になること)しやすいため、砂の入れ替えが検討されていた。


 その際に従来の砂厚8cmから10cmに変更されていた。この白い砂は園田競馬場や船橋競馬場、門別競馬場にも導入されているが、実際に手に取ってみると透明に近い白色で、砂粒はしっかりしていて硬い。ほぼ石英の結晶だ。おそらく、従来の砂厚だとスピードが出すぎるのではないか。そのために10cmにしたものと思われる。(その辺聞いてみたが明確な答えは得られなかった)


 例えば大井競馬場なら開催日数も多く、調教にも使われるから、従来の青森県産の砂だった頃はシルト化がひどく、馬が通過すると砂埃が舞っていたのだが、「白い砂」に変わってからは砂埃が起こることはほぼ無くなった。それだけ摩耗耐性も強く、シルト化しづらい、つまり硬い砂であることは間違いない。


 ただ、砂と砂厚を同時に変えたものだから、なかなかタイムとの相関関係は判断が難しかった。
 「白い砂」に変わってから「2秒かかっている」とか「3秒かかっている」とか、様々言われたが、騎手やトラックマンと話した感じは、概ね時計ひとつぐらい(約1秒)という感じだ。平均タイムもほぼそれぐらいだろう。それが砂なのか、砂厚なのかという点は、変わらず不明である。


 ひとつ特徴としては、湿ると重くなるという点だ。口取り撮影の際に馬場に入って実際に踏んでみると、わかるくらい重い。普通は湿ると足抜きが良くなって軽くなるはずだが、水分を含みやすいのか、人の足でもわかるくらい重い。


 新砂の頃は湿った時の方がタイムも掛かる感じだったが、だいぶ馴染んできてからは、ほぼ同じか、やや速いくらいに落ち着いてきている。


 砂そのものについては、小島友美さんの著書の方が詳しいので、もっと詳しく知りたい方はそちらを御覧いただきたい。


 今年の11月に砂厚が9cmに変更され、12月1日の開催からその砂厚で行われた。印象としては時計半分、約0.5秒くらい速くなった。


 例えば大井2日目の10レース、ゼームス坂賞。B3四組の選抜馬による1200m戦。


 逃げるタケシの直後を、ティーズエナジーと並んで追走した2番人気のセントラルガバナーが、直線の入口で先頭に並びかけ、残り200mすぎに粘るタケシを交わし、2着に2馬身の差をつけ1着。2着に大外から伸びてきた4番人気のケンマキシム、というレース。


 2着のケンマキシムは今回1分13秒0、前走同距離で稍重1分13秒8で、前回比-0.8秒。3着のタケシは1分13秒0で、前走優駿スプリントが良馬場1分13秒8(-0.8秒)。4着ヴィクラントは1分13秒4で、2走前が1分14秒6(-1.2秒)。5着ニシノラーナは1分13秒8で、良馬場の2走前が1分14秒1(-0.3秒)。という結果で、やはり1秒弱時計が速くなっているという印象だ。


 3日めのメインレース・ビオラ賞(オープン)は、2番人気のイグザルトが好位から鋭い差し脚を繰り出し、2着ワンダーランドに3馬身の差を付けたが、勝ちタイムは1分11秒9。概ね「白い砂」になる以前の東京盃で地方競馬最先着馬と同等の時計である。


 条件クラスでも、6日目のメイン、スマイルシティ・品川賞(B1二組・B2二組)に勝ったルイスが1分12秒8。ここ2戦が13秒3、13秒9だったから、やはり0.5〜1.0秒速い。


 今開催は全日良馬場で行われたので、この1cm削ったことによって馬場が渋った時の変化を見ることは出来なかった。削る前はむしろ湿った時の方が時計がかかる傾向であった。船橋の馬場傾向からもそこは変わらないと予想しているが、今後も引き続き観察していくつもりだ。


 今回の馬場改修は砂を削っただけで、入れ替えはしていないとのこと。砂が馴染んでいないのか滑りやすく、スタート直後の落馬がいくつか見られた。馴染んでくれば傾向もはっきりしてくるのではないかと思っている。

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