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第129回 アーモンドアイのGⅠ・8勝と涙 ~騎手としても人としても魅力が増していくルメール騎手~

2020.12.16
 2020年は、本当に様々なことが起こりましたね。コロナ当初は、とにかく全身で恐怖を感じ、我慢を強いられての生活から始まりましたが、それが徐々に共存という形で対策をしながらの日々に。
 競馬も無観客競馬を中心に、様々な対策をしながらの開催となりましたが、そのような中で成し遂げられた牡馬・牝馬無敗の3冠馬誕生やアーモンドアイの8冠達成と、偉業の年に。それだけに、心に残るレースがいくつかあったことと思います。

 私は、史上初となる8冠を達成したアーモンドアイでのルメール騎手の涙を流しての勝利インタビューが特に印象深く、胸に刻まれました。

 と言うのも、来日当初からルメール騎手を見てきましたが、とにかく感情の起伏が少なく、いつも穏やかで大人なイメージ。

 だからこそ、(え?!ルメール騎手が泣くの?)と、当初は驚きを感じました。しかし時間が経つにつれ、ルメール騎手のこれまでの歩みを振り返ると、ほぼ同時期に短期騎手免許を取得したデムーロ騎手が、比較的早い時期に立て続けにGⅠ勝利を手にしていた一方で、ルメール騎手は2005年のハーツクライで有馬記念を制すと、次のGⅠタイトルは2008年のリトルアマポーラと、3年近く時間を要しており、常々、口にするのは、「なんでも徐々にでしょ。経験を積んでインプルーブ(向上する)していく」と、勝負師にしては珍しいほど冷静で、積み重ねを大事にされるタイプ。

 まさに1年毎に年輪を刻み、気づけば存在感と強さ溢れる大木のような歩みをされてきた印象を受けます。

 そんな日頃から時間と歩みを大切に生きているルメール騎手だからこそ、どの馬も成し得ることができなかった8冠という偉業の重みを全身で受け止めていたのでしょう。あの涙はその証に思えました。

 また、勝利騎手インタビューで付けていた、星8個の刺繍入りマスクは、愛妻バーバラの手作りで、ルメール騎手の傍で共に戦うバレットの方の分と、世界に2つしかないもの。

 全てにおいて時間を重ねれば重ねるほど、騎手としても人としても魅力が増していくルメール騎手。年は下ですが、見習うべき点が多すぎますし、ルメール騎手がJRA免許を取得できたことは、日本の騎乗レベルの向上だけでなく、人としての在り方など、日本競馬にとってもいろいろな意味でプラスと働いている気がします。

 さて話は変わり、この秋に感じたことの1つが、一流馬は本当に賢く、思わず「騙された~」と口走ってしまうことが数回ありました。中でも、アーモンドアイとグランアレグリアは格別で、ONとOFFのスイッチを自分で操作しているかのような雰囲気。

 特にグランアレグリアにおいては、騎手が跨り、気が入ると、体までパンプアップさせての変化を見せており、レースでの走りもさることながら、その変貌振りにレース前から恐れ入ったと感じるほどでした。

 人間でも馬でもそうですが、やはり一流と称される方々は、何かが違うのでしょうね。その変化を感じ取ったり、見たりするのが楽しいのですが、馬券的には騙される形に...。

 来年は、その点も踏まえて検討しなければと思っています。

 それでは皆さん、また来年、お目にかかりましょう。今年も1年、ご愛読、ありがとうございました。

 ホソジュンでしたぁ。
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