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第42回『法案』

2012.06.11
 日刊紙等で既報の通り、6月9日より伊勢崎、川口、飯塚の各オートレースの払戻率がこれまでの75%から70%に引き下げられる。恐らくこれが第1グループで、いずれ船橋、浜松、山陽も引き下げられるものと思われる。
 現在開催中の第180回通常国会に「自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案」が提出、可決され、払戻率の引き下げの他にも、①特定交付金還付制度(施行者が行った競輪等事業の活性化のための投資に要した費用について、施行者が納付した1号・2号交付金の3分の1を上限として交付金を還付する制度)の廃止。②交付金率の引き下げ(オートレースと競輪を統括する財団法人JKAへの各施行者が負う交付金。オートレースは実質約2.4%→2.2%へと引き下げられる)。③赤字施行者が1号・2号交付金を実質的に負担しない制度の導入(これまでも5年間の猶予特例はあった)、等施行者の負担が軽減される内容となっている。

 その他にも、年間開催回数の下限規制の廃止、開催の日取り調整に関する経済産業大臣の指示権限の廃止等、施行者の事業運営の自由度を高める内容となっている。

 その結果どうなるのか、2008年8月まで弊社で「日刊オート」を発行していた川口オートを例にとると、2011年度の場合、売り上げは214億円、このうちの75%の160億円が払戻金となり、残り54億円のうち3.5%の1億9,000万円がJKAへの交付金、6,000万円を地方公共団体金融機構への公営競技納付金、残りの51億円がレースの賞金、開催運営費となる。さらにその内の約4億円ほどが、施行する川口市への小型自動車競走事業の歳入となる。

 本年度が仮に前年度並の7%減とすると、約200億円。うち払戻金が70%の140億円で残り60億円。交付金2.2%で1億3,000万円、金融機構への納付金を6,000万円と仮定すると、残りは前年比プラス7億円の58億円となるはず。

 さてさて、目論見通りになるのか、はたまた、捕らぬ狸の皮算用となるのか、注目している。

 オートレースについてざっくりと書いてきたが、大方の関心はやはり競馬だろう。
 今国会に提出された「競馬法の一部を改正する法律案」は3月27日に衆議院で可決され、現在参議院で委員会に付託できない状態で、店晒しとなっている。国土交通大臣、防衛大臣の問責決議案が可決されて1ヵ月、両大臣の辞任を求める野党が審議に応じないためだ。ある新聞には「20年間で売り上げが7割落ちている地方競馬場の活性化対策。成立が遅れれば地方競馬への交付金が出ず、衰退が進みかねない」と書いてあった。その件はひとまず置いて、次へ進む。

 この法律案については払戻率ばかり大きく取り上げられているが「地方競馬活性化事業」の5年延長、「競走馬生産振興事業」の再実施、「地方競馬主催者からの交付金還付措置」の5年延長、等が盛り込まれている。その内容はこれまで行われてきた地方競馬活性化施策の延長や復活である。確かに1997年度から2005年度までの売り上げの落ち込みに比べれば、2005年度以降の落ち込みは、比較的緩やかになってきたと言え、一定の効果はあった。しかし、2009年度~2011年度にかけて約半数の地方競馬主催者が赤字となるなど、依然として地方競馬を取り巻く環境は厳しく、支援だけでは乗り切れそうもない状況だ。

 原資となるJRAも厳しい状況で、2011年は東日本大震災の震災対応費用があったとはいえ、54年振りの赤字決算となったのはご存知だろう。

 一定の効果があった支援策を進めつつ、危機的経営環境の地方競馬を振興する施策のひとつが「払戻率の引き下げ」だとしたら、これはファン離れを招く愚策としか言いようがないが、よく法律案を読めば、引き上げも可能であるし、式別ごとの設定も可能なようになっている。

 例えば3連単は高配当が期待できる反面、ひとりあたりの購買額を下げているフシがある。しかし、JRAでの式別毎シェアは35%以上と最も売れている。常識的な手段ではあるが、高配当馬券の払戻率を下げ、単複だけでなく枠連、ワイド等の払戻率を上げるなど、式別ごとに対応する。

 法案作成者は、恐らくそんなことを考えているのではないだろうか。まずは可決を待ちたい。
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