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第43回『不思議の東京ダービー』

2012.07.13
 今年も東京ダービーが終わった。
 'ダービー'といえば、やはりJRAの『東京優駿』(日本ダービー)だ。歴史、賞金など全てにおいて日本最高峰なのが日本ダービーであることは、間違いないと思う。ただ東京ダービーにも、何かそこはかとない魅力を感じる。筆者が南関の記者だからとか、あっちは芝で、こっちはダートだからとか、そんな理由でもない。このレースは不思議なレースだからだ。

 1冠目となる5月9日に行われた羽田盃は、1コーナーで有力馬の一角4番人気のベルモントレーサー、6番人気のキタサンツバサの有力馬が大きな不利を受け、3コーナーではダイヤモンドダンスも不利を受ける荒れ模様の流れだった。ロンドンアイ、そしてゴールドキャヴィアが引っ張る流れは推定59秒3のハイペース。1番人気の京浜盃馬パンタレイは3番手追走も勝負どころで苦しくなり、9着に敗れ、道中9番手のアートサハラと、7番手のエミーズパラダイスにとって絶好の流れとなった。先に抜け出しを図るエミーズパラダイスをアートサハラが交わし栄冠に輝いていた。

 58回目を迎えた今年の東京ダービー。1万2375名のファンが集まり、場内は大変賑わっていた。DERBY WEEK2012の4戦目。曇り空ではあったが気温は過ごしやすく、まさに競馬日和の夜であった。

 例年羽田盃の成績が最重要視される東京ダービーだが、今年は前述の羽田盃で有力馬が不利を受けたこと、それからプーラヴィーダ、メビュースラブの2頭がJRAから転入し出走と、成績がアテにならないレースとなった。不利を受けたベルモントレーサーは終始後方でレースをしていなかったし、兵庫チャンピオンシップ(JpnⅢ)3着馬のプーラヴィーダは、JRAから転入してきた2010年の東京ダービー馬マカニビスティとは異なり、東京ダービーが転入初戦のレース。明らかに勝ちに来た。

 しかし、単勝の1番人気は羽田盃2着のエミーズパラダイス、2番人気は羽田盃馬アートサハラ。プーラヴィーダは3番人気。あれほど「アテにしちゃいけない」って言ったのに...。

 最低人気キョウエイロブストの逃げは61秒8のハイペース。向正面までは隊列に動きはなかったが、ほぼ一団のひと塊で進む。勝負どころから一気にレースが動き出した。「前走は全くレースしていない」と筆者が本命にしたベルモントレーサーと、武豊騎手が乗るゴールドキャヴィアが一気に動く。実際のところ羽田盃で負った外傷で5日休んだことと、テンから飛ばした追い切りは、左回りは動かない馬とはいえ不安があったし、パドックもやはり羽田盃で張り詰めていた馬体を維持するのは難しかったか、というのが当日の印象。案の定スタートで躓き、先団に取り付き見せ場を作った後は伸びを欠き、後方へと消えていった。残念。

 さて、直線勝負となったレースはキタサンツバサ、エミーズパラダイスとめまぐるしく先頭が変わり、残り200mを切ったあたりで、最後方にいたプレディオラスが大外から一気に先頭に立つ。内で粘るエミーズパラダイス、最内から伸びてきたプーラヴィーダを押さえて、第58代東京ダービー馬の栄冠に輝いた。2着はプーラヴィーダがクビ差交わしていた。

 勝ったプレティオラスと2着のプーラヴィーダは馬主、生産者、調教師、そして父フィガロ(USA)まで一緒。2頭での口取りは、過去の口取り写真を漁って見たが、東京ダービーでは初めてだろう。管理する森下淳平調教師は1980年2月1日生まれの32歳と、これまでの最年少制覇の記録を持つ池田孝調教師の40歳を8歳も更新する記録。しかも、池田師が勝った時の管理馬アンパサンドは、今回の1、2着馬と同馬主、同生産者、そして同じフィガロ産駒という不思議な偶然。さらに、プレディオラスはこの日(6月6日)が誕生日だという、記録と不思議な偶然ずくめの東京ダービーとなった。

 そしてもうひとつ恒例の。31度目の東京ダービーに臨んだ的場文男騎手は、4番人気のダイヤモンドダンスに騎乗し、外から伸びたが2馬身3/4とクビ差届かず4着に。'大井の七不思議'はまたも不思議のままとなった。

 ところでこの七不思議、他の6つは一体何なのだろうか?
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