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馬ミシュラン

小山内完友 馬ミシュラン

第64回『払戻率』

 公営競技には「テラ銭(寺銭)」という言葉がある。元は博徒が経営する賭博場で掛金に応じて胴元に払われる手数料のこと。語源は諸説あるが、江戸時代、寺社の境内で賭博を行い、儲けの幾らかを寺社に寄進していたことが由来であると。関西では「カスリ」とも呼ばれるそうだ。転じて今日、公営競技で主催者に控除される部分をそう呼ぶようになった。

 日本は刑法第百八十五条から第百八十七条で賭博、富くじの販売が禁止されているが、競馬法や自転車競技法等の特別法で例外的に実施されている。それゆえ、その収益(テラ銭)で畜産振興や、財政や、社会福祉等に寄与しなければならない。例えば日本中央競馬会法の第一条にも

 「この法律は、競馬の健全な発展を図つて馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するため、競馬法 (昭和二十三年法律第百五十八号)により競馬を行う団体として設立される日本中央競馬会の組織及び運営について定めるものとする。」
 と唱っている。

 競馬は1950年の現競馬法施行時より「25%」と言われているが、実際は26.2%に近い。宝くじは約54%、サッカーくじは50%である。売り上げから、いわゆる「テラ銭」をひいた金額が払戻しになるのだが、その占める率が払戻率である。

 払戻率の弾力化などを目的として、競馬法の一部が改正されたのが2012年6月27日。そこで払戻率を「勝馬投票法の種類ごとに区分した金額について、付録に定める第一号算式によつて算出した金額から付録に定める第二号算式によつて算出した金額を控除した残額に付録に定める第三号算式によつて算出した金額を加えた金額」から

 「百分の七十以上農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率を乗じて得た額に相当する金額(重勝式勝馬投票法において次条第一項又は第三項の加算金がある場合にあつては、これに当該加算金を加えた金額。以下「払戻対象総額」という。)」(以上抜粋)

 に改められた。「農林水産大臣が定める率」は百分の八十と定められたから、テラ銭(控除率)は20%~30%の範囲内となった。4月1日より施行され、地方競馬は同日から、中央競馬は6月7日から、払戻率が変更される。それに伴い、3月に入り承認を受けた各地方競馬の主催者やJRAから払戻率が発表されている。

 各主催者の各払戻率は割愛するが、単勝と複勝は全主催者80%となった。JRAは特別給付金の廃止以降5%引き上げられていたが、地方競馬の場合は約5%アップ。また、77.5%に設定された枠連・馬連・ワイドの馬券は、これまでより3%ほどアップとなった。一方で多くの地方競馬の主催者が約1%アップとなる75%に止めたあたりに、経営の厳しさが感じられる。同様に3連複もJRAが75%なのに対し、多くの地方競馬では3連単同様72.5%と約1.5%下げられた。

 JRAのWIN5は70%となったが、キャリーオーバー時の払戻が最大6億円に増やされた。
 組み合わせ数の少ない「当り易い馬券」は払戻率を上げ、「当たりにくい馬券」の払戻率を下げているが、各主催者とも「的中しやすい馬券で楽しんでもらいたい」と述べている。さて、それは競馬の売り上げにどう影響するのだろうか。

 2012年に全式別の払戻率を75%から70%に下げたオートレースは、これがダイレクトに売り上げ減少につながり、1年で前年比83.5%となったが、5%分の増収や、入場料無料化による入場門周りの経費削減でそれほど収益は悪くなかった。初年度に船橋と飯塚が大きく数字を落としたが、競馬と違いビッグレースの配分で調整出来る。ただし、配当の魅力が薄くなった事は、将来的に大きく響いてくるのではないかと思う。

 競馬の場合は式別ごとに設定され、しかも3連単など一部を除き、実際は払戻率が若干上がっているから、オートレースとは単純な比較は出来ない。あとはどうやってファンを「的中しやすい馬券」に導くかだろう。

 確かに主力の3連単は下げられたが、結局は「テラ銭」が高くなろうが安くなろうが、当たらなければ実は全く関係ない話なのである。
 我々もまずは「的中」の部分を、これまで以上に鍛えなければならないとは思っているが。