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第126回 『ぶっつけ本番』

2019.06.27
 4月24日、大井競馬場で南関東牡馬クラシック第1冠の第64回羽田盃が行われた。

 レースは1枠1番12番人気のトーセンボルガが枠を主張しハナへ、連れて2番のカジノフォンテン、3番のサクセッサーと、スタートしてから1コーナーまでの距離が短い大井1800mらしい出だし。

 1~2コーナーを回って向正面に入ると、ウィンターフェル、ステッペンウルフら人気馬が先行勢の直後で圧力を強め、前半5ハロンは62秒0のハイペースとなる。

 1番人気のミューチャリーは中団やや後ろ目の10番手前後に控えている。

 しかし隊列の並び自体は3コーナーまで大きくは動かず通過。ここで逃げるトーセンボルガにサクセッサーが並び4コーナー。外からカジノフォンテンとウィンターフェル、この4頭が後続に2~3馬身の差を付け直線へ。

 サクセッサーが先頭に立つも、カジノフォンテンが交わし、さらに外からウィンターフェルが交わし先頭に立つが、ミューチャリーが4コーナーのバラけた馬群の間を最短距離で抜けて、いつの間にかウィンターフェルの直後に迫っていた。

 残り100の標識で交わすと、上り36秒9。1頭だけ次元の違う末脚(ちなみに上がり第2位は5着ヤマショウブラックの38秒5)で羽田盃を制した。

 「直線に向けば脚を使うので、進路だけを考えていたが、こんなに差を付けているとは思わなかったです」と御神本騎手。

 「以前羽田盃を勝った2頭はダービーを勝てなかったから、今度こそ」と矢野義幸調教師。矢野調教師は2015年ストゥディウム、2018年ヤマノファイトで羽田盃を2勝しているが、東京ダービーではいずれも7着に敗れている。

 ミューチャリーの前走は今年新設された第1回雲取賞。2月7日以来、中75日の間隔があった。最近10年の羽田盃勝ち馬の前走は、京浜盃が8頭と圧倒的(5頭が勝ち馬、2着2頭、11着1頭)で、それ以外の前走は4月17日のチューリップ特別から臨んだ2012年のアートサハラと、2月19日のヒヤシンスステークスから転入初戦で臨んだ2017年のキャプテンキングの2頭。キャプテンキングは中49日だから、これを大きく更新した。

 間隔をあけたからと言って特に中間不安があったわけではなく、羽田盃の談話は「初コースで距離も対応できたので、京浜盃は飛ばして羽田盃に直行を決めた」と、予定通りの「ぶっつけ本番」であった。

 おりしも、今年の天皇賞(春)では、1月20日のアメリカジョッキークラブカップ以来のフィエールマンが勝ち、2着も1月13日の日経新春杯以来となるグローリーヴェイズといわゆる「ぶっつけ」組で決着。皐月賞もサートゥルナーリアが12月28日のホープフルステークス以来、中106日の3歳初戦で制した。過去3歳初戦が皐月賞だった馬は8頭いて、2017年5着のレイデオロ(ホープフルステークス以来)が最高。使う側の進化に、観る側の「常識」が付いていけてない感じがする。

 もちろん出走をかなえたい陣営にとって前哨戦は大事なレースであり。商業的にも購買意欲を高めるためには大事だ。

 南関東のクラシックでは前哨戦は重要だ。羽田盃の出走枠は16頭だが、そのうち優先出走権による出走枠が京浜盃の上位3頭、クラウンカップの上位2頭、雲取賞の上位2頭、クラシックトライアル競走の上位2頭、計9頭で、番組賞金順での出走枠は7頭しかない。おそらく前哨戦を盛り上げるため、出走を促す目的でそうしているのだろう。

 東京ダービーも同じく優先出走枠が9頭設けられているが、さらに今年から「東京ダービー賞金」が創設。「転入初戦で東京ダービー」を防ぐためJRAの賞金は東京ダービー出走の際番組賞金から除くというもの。

 今年は、もちの木賞2着のダンサーバローズが挑み、クラウンカップ8着、東京ダービートライアル3着で、惜しくも東京ダービー出走はかなわなかった。

 近年は調整技術の進歩により、有力馬ほど年間のレース数を使わない傾向にある。その昔あるリーディング上位調教師に「馬は使わない方が走る」と言われたことがある。謎かけのような話だが、現実そうなっている感もある。

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